- 2026/10/16 06:30 掲載
【海外勢と比較】三井住友・三菱UFJ・みずほ…AIで「仕事・人事・評価」どう変わる?
YKBridgeを設立し、海外テクノロジー企業の日本市場参入や、日本企業のグローバル戦略、オープンイノベーション、サステナビリティ金融領域を支援。フィンテック協会では常務理事を経て、現在はグローバルアドバイザーを務める。
英スターリング銀行の“雇用不安”だけではない問題
英国のデジタル銀行スターリング銀行では、AIを使った業務自動化の進め方に、現・元社員から懸念の声が出ている。欧州のスタートアップ専門メディア「シフテッド」は2026年8月、金融犯罪対策部門の人手不足や、専門業務の自動化を急ぐことへの懐疑を報じた。
同行は2024年、マネーロンダリング対策や制裁対象者の確認体制の不備で、英国金融当局から約2,900万ポンドの制裁金を科されている。社員らが懸念するのは、こうした経緯がある中で、自動化を進めながら十分な管理・確認体制を維持できるのかという点だ。一方、同行は、AIの活用によって社内業務を効率化し、アプリの新機能開発も進めていると説明する。社員の定着率も業界内で高いとしている。
この報道だけでAI導入の成否は判断できない。社員の懸念を「仕事を失いたくない」というFOBOだけで説明するのも不適切だ。「自分の専門性は不要になるのか」と「組織から専門性が失われても大丈夫なのか」は、別の問題である。
ここから経営側への問いが生まれる。AIに仕事を任せた後、組織には何の能力を残し、どこに人を配置するのか。以下では、海外勢の取り組みを3つの判断軸で見ていきたい。
ゴールドマン・サックスとDBS銀行「仕事と人」の再配置
第1の判断軸は、AIによって仕事と人材をどう組み替えるかだ。ゴールドマン・サックスは、2025年に打ち出した「ワン・ゴールドマン・サックス3.0」で、顧客受け入れ・顧客確認、融資、規制報告など6つの領域を見直す方針を示した。システムの更新にとどまらず、業務の入口から出口まで、人の配置や意思決定のあり方を再検討するという。
シンガポールのDBS銀行も、AIと人間が協働する業務への組み替え、職務に応じた再教育、組織構造の変更を、1つの改革として位置付ける。2025年の年次報告書では、AIの影響が大きい職務の従業員1万1000人超を重点的な能力開発の対象として特定し、96%が学習計画に着手したと公表した。
実務では何が変わるのか。同行が紹介する法人融資の例では、AIが財務資料などを分析して融資承認に向けた文書の下書きを作り、人間が評価して最終判断を行う。その分、顧客担当者は既存顧客との面談や新規顧客の開拓に時間を使えるようになると説明している。また、顧客対応職から、同部門の生成AIチームを率いる役割へ移った社員の例も紹介している。
DBS銀行の取り組みは、仕事の見直しと人材育成がつながっている。どの業務が変わり、担当する社員には今後どの能力が求められるのか。その見通しに沿って学習計画を用意し、新たな役割につなげる。単にAIの使い方を教えるのではなく、AI導入後の仕事を担える人材を育てる発想だ。
仮に資料作成が速くなっても、担当者の評価が作成件数だけで決まるなら、顧客との対話へ時間を移す動機は弱い。業務の変更を成果につなげるには、社員に何を期待し、どう評価するかまで合わせて見直すことになる。
金融業界グローバル動向のおすすめコンテンツ
金融業界グローバル動向の関連コンテンツ
PR
PR
PR