• 2026/11/09 07:00 掲載

もし振込先を間違えたら? ドコモSMTB・あいち銀に見る銀行AIの「最後の一線」(2/2)

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銀行のAI競争は「アプリの外」へ…変わる顧客接点

 会話型AIの導入で変わるのは、利用者の操作方法だけではない。銀行の顧客対応にも大きな変化をもたらす可能性がある。

 たとえば、これまで電話やチャットで人間の担当者が対応していた問い合わせの一部をAIが担えば、担当者は複雑な相談や個別の判断が必要な業務に集中しやすくなる。さらに、問い合わせ内容を分析することで、顧客がどのような手続きで困っているのかを把握し、サービスの改善につなげることも考えられる。

 つまり、銀行にとってのAI導入は、単なる顧客の利便性向上にとどまらず、顧客対応の効率化やサービス品質の向上にもつながる取り組みなのだ。

 日本銀行が2026年8月に公表した150金融機関を対象とする調査では、9割強が生成AIを利用または試行していた。その一方、生成AIの回答を顧客に直接提示する例はまだ少数だったという。文書作成や社内照会などの効率化から、顧客が実際に使う金融サービスへの転換には、まだ余地が大きい。

 ドコモSMTBネット銀行は、顧客との接点をアプリの外にも広げている。10月28日には、電話とチャットで共通の情報を使う顧客応対AI基盤が9月に本番稼働したと発表した。問い合わせの意図を捉えて手続きを案内し、個別確認や高度な判断が必要な場合は担当者へ引き継ぐ設計という。アプリ内の操作だけでなく、問い合わせから解決までの経路を短くする試みだ。

 顧客が何を求めているかを早く把握できれば、必要なサービスを適切な時点で案内しやすくなり収益面にも資するだろう。ただ、AIの利用回数が増えたからといって、取引や融資が増えるとは限らない。評価すべきは、顧客の手続き完了率、途中離脱、問い合わせ削減などの具体的な成果だ。

 地域金融機関にも選択肢が広がる。NTTデータは7月、請求書受領から銀行振込までを連携する「TetraBRiDGE for Bank」を提供開始した。これは会話型AIではないものの、銀行を企業の経理業務につなぐ動きであり、AIとの組み合わせによる発展も考えられる。


 もっとも、銀行アプリそのものの重要性は変わらない。本人認証や取引履歴、各種確認画面は引き続き必要だろう。変わるのは利用者が目的の機能にたどり着くまでの過程だ。

AIの誤りを誰が見抜く? 銀行が直面する“ある責任”

 銀行取引に生成AIを活用するうえで、注意すべきなのが誤った情報をもっともらしく示してしまうリスクだ。たとえば、AIが請求書の振込先や金額を読み違えても、利用者には正しい情報のように表示される可能性がある。そのまま手続きを進めれば、誤送金につながりかねない。こうした問題を防ぐため、AIにどこまで操作を任せ、どの段階で人間が確認するのかが重要になる。

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銀行側に「記録・検証」「異常検知」「停止・引き継ぎ」の仕組みが求められる

 ドコモSMTBのベータ版では、AIが振込手続きを支援しても、最終的な取引操作は利用者自身が行う。同社はAIの回答について正確性や完全性を保証しないとし、取引前に内容を確認するよう求めている。

 一方、NTTデータ東海によると、あいち銀行の実証でAIが行うのは、口座残高や入出金明細を調べて表示することまでだ。振込や送金など、実際にお金を動かす操作はできない。また、利用者が関係のない質問をしても、AIが自由に回答を作るのではなく、あらかじめ決められたエラーメッセージを返す仕組みにしている。つまり、AIに任せる業務と回答内容をあえて制限することで、想定外の動作や誤った回答を防ごうという設計だ。

 振込の最終確認を利用者に任せるだけでは、十分な安全対策とは言えない。利用者がAIの誤りを必ず見抜けるとは限らないためだ。そのため銀行側にも、AIがどのような情報を基に回答したのかを記録し、不自然な回答があれば検知する仕組みが求められている。

 AIによる操作の便利さよりも、AIが間違えたときに、いかにその誤りを発見し被害を防げるかが問われている。この仕組みを整えることが、AI時代の銀行の競争力を左右することになりそうだ。

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