- 2026/05/15 掲載
なぜAIは金融業界の「第2のコンピュータ革命」? エヌビディアが語るその構造とは
FINOLABコラム
FINOLAB設立とともに所長に就任。東大経済学部卒、東京銀行入行、池袋支店、オックスフォード大学留学(開発経済学修士取得)、経理部、名古屋支店、企画部を経て1998年より一貫して金融IT関連調査に従事。2018年三菱UFJ銀行からMUFGのイノベーション推進を担うJDDに移り、オックスフォード大学の客員研究員として渡英。日本のフィンテックコミュニティ育成に黎明期より関与、FINOVATORS創設にも参加。
「進化ではなく革命」1961年以来の転換点とは
エヌビディア(NVIDIA)でバンキング戦略をグローバルに統括するエーサー・ブランコ氏は、20年以上を金融業界で過ごした後にテクノロジーの世界に移った人物だ。世界中の銀行と対話を重ねる同氏は明確に断言した。「これは単なる進化ではない。真の革命だ」(ブランコ氏)
バンキング戦略 グローバル統括
エーサー・ブランコ氏
この年、バークレイズ銀行が英国で初めてメインフレームを導入し、銀行は「紙を動かす産業」から「データを扱う産業」へ生まれ変わった。
「1960年の銀行では、従業員の半分はただ紙を動かしていた。それが当時の産業の姿だった」(ブランコ氏)
しかし銀行の“心臓部”は、実はそれ以降ほとんど変わっていないという。
「オンラインバンキングは、物理的な支店をデジタルな支店に置き換えただけだ。銀行の心臓部は依然として同じ。データセットがあり、それを経営陣に見せて、人間が判断を下す。この構造自体は1961年から何も変わっていない」(ブランコ氏)
そして2025年、複数の大手銀行がAI専用の大規模コンピューティング基盤である「AIファクトリー」を初めて導入し始めた。
「1961年、バークレイズが最初のメインフレームを買った。2025年、大手銀行がAIファクトリーを買い始めた。我々はこの旅の始まりにいる」(ブランコ氏)
「未来の銀行はデータを見て動くのではない。インテリジェンスと対話し、そのインテリジェンスを使ってより良い意思決定を行うようになる」(ブランコ氏)
IT予算の70%を食い尽くすレガシーの壁
変革の前にはレガシーシステムという巨大な壁がある。IT予算の7割が旧システム維持に費やされ、データは複数のシステムに散在し「サイロ化」している。「銀行が情報漏洩や不正を見逃したというニュースが出るたび、人々は『なぜ全部の情報を持っていたのに気づかなかったのか』と疑問に思う。実際には情報はあった。ただ、複数の異なるシステムに分散していて、誰もそれらを常時つなげていなかっただけだ」(ブランコ氏)
AIがレガシー脱却を加速すれば、予算がイノベーションに再配分できる。ブランコ氏は、AI導入により業界全体で2,000億~3,000億ドル、収益性にして20~30%の押上げが可能とみる。新規事業ではなく既存プロセスの改善で実現できる点がポイントだ。不正行為による銀行の損失は年間5,000億ドル超。検知精度をわずかに改善するだけで効果は数千億ドルに及ぶ。
「不正検知の改善だけで、先ほど述べた追加利益のすべてを獲得できるかもしれない」(ブランコ氏) 【次ページ】「巨大モデル」は幻想──銀行に必要なのは専門家チーム
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