- 2026/10/29 07:00 掲載
三菱UFJ・静岡銀はなぜ「止める決断」? PHP欠陥が突きつけた銀行の“思わぬ弱点”
「止まらない銀行」が安全? PHP危機で見えた盲点
発端は、Webサービスなどに使われるプログラミング言語「PHP」の重大な脆弱性2件だ。開発元は10月21日、「CVE-2026-109618」と「CVE-2026-109619」を修正した更新版を公開。組み合わせて「PHP2shell」と呼ばれ、悪用されれば第三者が遠隔から不正なプログラムを実行する恐れがあった。
静岡銀行はホームページと「しずぎんアプリ」を予防的に停止し、22日13時30分に再開。三菱UFJ銀行もネットバンキングの一部取引を一時停止した。一方、全国銀行協会は、銀行間決済への影響は確認されていないと説明した。
こうした金融機関の対応について、片山さつき金融担当相は10月23日の会見で、多くの金融機関が予防的にシステムを停止し、パッチ適用などの対応が「比較的円滑」に進んだとの認識を示した。
その後、事態の深刻さを裏付ける動きもあった。情報処理推進機構(IPA)は10月27日、PHPの脆弱性に関する注意喚起を更新し、米サイバーセキュリティ・インフラストラクチャセキュリティ庁(CISA)が、問題の脆弱性を「KEV(Known Exploited Vulnerabilities)」に登録したと伝えた。
KEVは、実際の悪用を裏付ける証拠に基づいて脆弱性が登録されるリストで、危険性が高いというだけでは掲載されない。今回の問題は単なる潜在的な危険ではなく、現実に攻撃に使われていたことが確認されたのだ。
auじぶん銀行で浮き彫りになった「委託先問題」
銀行のサービスが一部停止しても、すべての金融機能が止まるわけではない。一般に銀行システムは、顧客が操作するWebサイトやアプリ、口座開設などの周辺サービス、預金残高や入出金を処理する勘定系、金融機関同士の振込をつなぐ決済基盤など、複数の役割を持つ。アプリが利用できないことと、銀行間の資金決済が停止することは別の問題である。全国銀行データ通信システム(全銀システム)を運営する全銀ネット によると、同システムは2025年実績で1営業日平均約941万件、約17.9兆円の内国為替取引を処理している。国内の銀行間資金移動を支える重要インフラだ。
もう1つ、今回浮かび上がったのが委託先との関係だ。auじぶん銀行は23日0時20分に自社のPHP対応を完了した一方、委託先のメンテナンスに伴って問い合わせサービスの一部が利用できない状態が続いた。
27日12時ごろに大半を再開したが、相続手続き、15歳未満の口座開設、外貨建て送金受付など計4つのフォームは再開時期が未定だった。なお、同行は主要なネットバンキングやアプリについて、通常どおり利用できると案内している。
この事実は、自社の修正作業が完了しても、外部サービスの停止が顧客接点に残り得ることを示す。
焦点となるのは、各サービスの依存先と停止時の影響を銀行自身が把握できているかどうかである。銀行に求められるのは単に攻撃を防ぐ技術だけではなく、一部を停止しても重要な業務を維持できる体制だ。 【次ページ】パッチだけでは足りない…金融庁要請「9項目」は機能したか
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