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  • 2026/05/29 掲載

円安は新NISAのせい? 円と同じ波形をたどる「もう1人の敗者」の正体

【連載】エコノミスト藤代宏一の「金融政策徹底解剖」

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2026年5月7日に6万3,091円に達した日経平均は、その後上下を挟みながらも、約3週間に渡って6万円台を維持したが、円相場は株高と足並みが揃わず、依然として円安基調が続いている。円安は株相場を押し上げる要因である一方で、他の主要通貨が対ドルで一定の底堅さを見せる中、円ばかりが取り残されているという悲観的な見方も強い。しかし、日本円は本当に「1人負け」なのだろうか。本稿では、日本円と韓国ウォンの米ドル間金利差の波形から「敗者の型」を解説し、円安の裏に潜む新NISAの影響について、第一ライフ資産運用研究所 主席エコノミスト 藤代氏が語る。
執筆:第一ライフ資産運用経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 藤代 宏一

第一ライフ資産運用経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 藤代 宏一

2005年、第一生命保険入社。2008年、みずほ証券出向。2010年、第一生命経済研究所出向を経て、内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間「経済財政白書」の執筆、「月例経済報告」の作成を担当する。2012年に帰任し、その後第一生命保険より転籍。2015年4月より現職。2018年、参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当領域は、金融市場全般。

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「半導体」と並んで株高を支える「円安」。その実態と先行きをエコノミスト藤代氏が解説する
(Photo:Danawan Purbanggoro /Shutterstock.com)

日本株の高値圏維持に影響する「2つの追い風」

 前回の記事では株高を押し上げているAI関連銘柄の予想PER(株価収益率)が昨年末に23倍を超えたことを念頭に、「AIバブルの崩壊」について解説した。先行きが不透明なイラン情勢を踏まえつつも、原油高の中で進む株高は、AI半導体の爆発的需要で説明できることに言及している。

 イラン情勢は大きく見れば、緊張が緩和してきたとはいえ、WTI原油価格は95~100ドルをコアレンジとして高止まりしており、2月末比で30ドル程度も高い水準にあった。それにもかかわらず、株価は天井を突き破る勢いで上昇していたことから、その間の株高に違和感を覚える声が多くあがっていた。

 AI半導体の需要増加が、どういった経路で日本株全体の業績見通しを押し上げたかといえば、それは半導体製造装置、部材、化学品、電子部品といった広義半導体を手掛ける銘柄に恩恵が及ぶためだ。

 日本企業は、半導体の製造を直接手掛ける企業は多くないものの、半導体に関連する事業を手掛けている企業は多く、AI半導体の需要拡大が広範な銘柄に恩恵となる。そうした半導体関連銘柄の業績見通しは、原油高に襲われた3月以降も順調に拡大してきた。

 ここで日米主要株価指数の予想EPS(1株当たり純利益)に目を向けると、TOPIX(東証株価指数)と比較して、半導体関連銘柄を多く含む日経平均株価の強さが際立っており、予想EPSは垂直的な拡大基調にあることが分かる。

 このEPS拡大に特に貢献したのは、日経平均株価に採用されている半導体関連銘柄のうち、ウェイト上位5社(指数全体の3割程度のウェイトを占める)である。さすがに4~5月の株価上昇を受けてPER(株価収益率)で見た割高感は薄れたが、いずれにせよ株高は「半導体」で説明可能である。この間、為替が円安水準を維持したことも日本企業の業績見通し改善に寄与した。

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【画像付き記事全文はこちら】TOPIXと比較し、半導体銘柄を多く含む日経平均の予想EPSの伸びが顕著だ

 そこで、今回の記事では為替を巡る事実関係を整理していく。過去数年の円安を巡っては、日銀の政策金利が低く、実質政策金利が深いマイナスであることが原因であるとの見方が多い。またバラマキ色の強い財政拡張策が、円の信認を毀損(きそん)しているとの声も多く聞かれる。

 自然利子率(≒中立金利)の格差を踏まえると、日米金利差は大幅な縮小が期待しにくい。また原油を中心とする輸入物価の高止まりを政府の補助によって和らげようとする政策態度が、貿易赤字を助長する面もある。それらが円売りの動機になっていることは否定しがたい事実であろう。 【次ページ】「1人負け」日本円と同じ波形をたどる「もう1人の敗者」
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