- 2026/07/06 掲載
量子活用の分岐点とは? “触って終わる企業”と“稼ぐ企業”を分けるもの
司法試験合格後、2011年に日本銀行入行。システム部署での契約法務やリスク管理業務のほか、金融機関への考査・モニタリング業務などに従事。2023年より現職。 FinTech、Web3をはじめとする企業法務・スタートアップ法務を取り扱う。量子技術分野で文部科学省「光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)」助成ビジネスコンテスト受賞、NEDO challenge(2025)スクリーニング審査通過。INSEAD MBA修了。
前編はこちら(この記事は後編です)
量子インスパイアード技術は「橋渡し」か「独立した価値」か
まず前提として、企業は量子コンピューターの実機を使った取り組みを進めるべきなのか、それとも、現時点で実用性という点で分のある量子インスパイアード技術(量子現象を扱う理論を取り入れた計算アルゴリズムで、古典コンピューター上で動くもの)を使えば良いのか。この問いを考えるには、量子インスパイアード技術は、量子コンピューターが完成するまでの“橋渡し”に過ぎないのか、それとも将来も生き残る技術なのかを明らかにする必要があるだろう。手塚氏は量子インスパイアード技術それ自体の価値を強調する。
「量子インスパイアード技術は、独立した価値を持つ技術だと考えています。特に現状のゲート型量子コンピューターはリアルタイム性がないといった弱点があり、そうした点が重視される領域であれば量子インスパイアード技術を使う、という発想になるはずです」(手塚氏)
つまり、ゲート型量子コンピューターが完成しても量子インスパイアード技術が不要になるわけではない、ということだ。たとえばリアルタイムでの応答が求められる生産ラインや日々のオペレーションの最適化といった領域では、量子インスパイアード技術が引き続き主役となる可能性が高い。
馬場氏は、量子インスパイアード技術が主役となり得る最適化領域における重要な取り組みとして、「サプライチェーンをまたいだ最適化」を挙げる。
「これまで量子インスパイアード技術の利用価値として考えられてきたものは、たとえば“一つの工場の生産ラインの最適化”といった単位のものでした。こうした最適化はすでに実用化されているものもあります。そして、次のステップとして、こうした局所的な最適化を超え、“サプライチェーンをまたいだ最適化”という視点があり得ると考えています」(馬場氏)
このサプライチェーンをまたいだ最適化については、デロイト トーマツの調査結果を基にNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が発表した「量子コンピューターユースケース事例集(第二版)」でも説明されている。
しかし、馬場氏は同時に、企業がこうしたサプライチェーン横断的な目線を持つことの難しさにも言及する。
「だからこそ、サプライチェーンの上流に位置する、ある程度視座の高い企業が量子インスパイアード技術を使ってみるということが必要になってきます」(馬場氏)
工程単位の最適化から、工場単位、さらにはサプライチェーン単位へ──量子インスパイアード技術の活用の射程は、高い目線で活用方法を見通せる企業の関与によって、大きく広がり得るという。
NEDOのユースケース集において紹介されている実例の中でも、大規模な効率化の取り組みはすでに現れている。馬場氏が指摘するのは、さらにその先に、サプライチェーン全体の最適化という大きな世界が広がっているということだ。
金融セキュリティのおすすめコンテンツ
PR
PR
PR