• 2026/09/09 06:30 掲載

デジタル決済71%を達成したウズベキスタン、楽天・PayPay型の経済圏が競う8分野

FINOLABコラム

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2026年8月、ウズベキスタンで「シルクロード・ファイナンス&テクノロジー・フォーラム」が開催され、世界74カ国から6000人以上が集まった。同国では「2030年までに10億ドルのフィンテック投資誘致」を掲げる一方、決済やEコマース企業が銀行業へ相次ぎ進出。PayPay経済圏や楽天経済圏が競い合うような“陣営間競争”が急速に進んでいる。本稿では、主要プレイヤーと4つの陣営、日本の金融機関がいま同国から学ぶべき理由を読み解く。
執筆:FINOLAB Head of FINOLAB 柴田 誠

FINOLAB Head of FINOLAB 柴田 誠

FINOLAB設立とともに所長に就任。東大経済学部卒、東京銀行入行、池袋支店、オックスフォード大学留学(開発経済学修士取得)、経理部、名古屋支店、企画部を経て1998年より一貫して金融IT関連調査に従事。2018年三菱UFJ銀行からMUFGのイノベーション推進を担うJDDに移り、オックスフォード大学の客員研究員として渡英。日本のフィンテックコミュニティ育成に黎明期より関与、FINOVATORS創設にも参加。

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74カ国6000人が集結…“中央アジアの金融立国”は本物か
(画像:筆者提供)

74カ国6000人が集結…ウズベキスタン“10億ドル”の野心

 2026年8月24~26日の3日間で、首都タシュケントにて初となる「シルクロード・ファイナンス&テクノロジー・フォーラム(Silk Road Finance & Technology Forum 2026)」が開催された。

 本フォーラムは、ウズベキスタン政府が掲げる「2030年までに10億ドルのフィンテック投資を誘致する」という国家目標のもと、ウズベキスタン中央銀行(CBU)と、シンガポール金融管理局(MAS)によって設立された非営利組織「グローバル・ファイナンス&テクノロジー・ネットワーク(GFTN)」との共同主催により実施された。

 開催概要は次のとおりである。

  • ■開催場所:8月24日・25日はセントラル・アジアン・エキスポ・ウズベキスタン(CAEx)、8月26日はイスラム文明センター(Islamic Civilization Centre)

  • ■テーマ:「アル=ジャブル(Al-Jabr)」。代数学の語源となったアラビア語で「バラバラのものを結びつける・統合する」の意味で、ウズベキスタン出身の9世紀の数学者アル・フワーリズミーへのオマージュ

  • ■開催規模:世界74カ国から6000名以上の参加者および約200名のスピーカーが登壇。運用資産(AUM)総額40億ドル超を誇る25社以上の国際的投資家、中央銀行総裁、政府高官(中央アジア、コーカサス、中東、東欧など)、国際金融機関(IMF〔国際通貨基金〕、世界銀行など)、主要金融機関・決済企業トップ、スタートアップ創業者などが集結

 フォーラムでは、中央アジアを国際金融の集積地として発展させるため、主に以下の5つの柱を中心に議論が展開された。

(1)オープンバンキングとデジタル決済・インフラ
(2)デジタル資産、トークン化、ステーブルコインおよびCBDC(中央銀行デジタル通貨)
(3)クロスボーダー決済・規制・金融集積地の構築
(4)イスラム金融と新たな金融集積地
(5)AI(人工知能)・先進技術の導入とイノベーション投資
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マクロ好調とフィンテック戦略、初日に出た中銀の“新施策”

 初日はマクロ経済の現状報告、中央銀行による新たなフィンテック支援施策と関連分野についての議論が中心となった。下記が、各講演者による講演内容の概要だ。

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左:クチカロフ副首相 兼 経済財務相、右:イシュメトフ中央銀行総裁
(出典:筆者提供)

■「マクロ経済の好調と投資環境」(ジャムシド・クチカロフ副首相 兼 経済財務相)
 ウズベキスタンの実質GDP成長率は年平均6~7%(2026年上半期は8.5%増)で推移しており、経済規模は従来の600億ドルから1,800億ドルへと3倍に拡大した。

 インフレ率は過去の2桁台から今年約6.5%へ低下し、来年は5%の目標を目指す。

 対外公的債務をGDPの約27%に維持し、フィッチなどの格付け機関から格上げを取得。WTO(世界貿易機関)加入手続きの完了、国営企業の民営化推進、投資適格級ソブリン格付けの取得を目指すと表明した。

■「フィンテック戦略と新しい取り組み」(ティムール・イシュメトフ中央銀行総裁)
 中央銀行総裁からは、次の4つの施策が示された。

(1)フィンテック・イノベーション・ハブ:2026年第4四半期に第1期参加者を募集し、インキュベーション、アクセラレーション、規制助言、パイロットテストを提供する

(2)ソブリンベンチャーファンド(5,000万ドル規模):国際的ファンドマネージャーと連携し、スタートアップの海外展開および国際的な共同投資を促進する

(3)人材育成プログラム:GFTNやシンガポールの大学と連携し、2028年までに5000人の若者へ実践的フィンテック教育を提供する(年内開始)

(4)CBDCホワイトペーパーの公開:ユースケース、設計、システムへの影響を評価するホワイトペーパーを公刊予定

■「新しいデジタル決済の登場」(セルジオ・メロ Anchorage Digital、Global Head of Stablecoin)
 ステーブルコインと伝統的コルレス銀行業務は対立するものではなく、「ステーブルコイン・コルレスバンキング」により24時間365日のリアルタイム決済と流動性改善が可能になると強調した。

■「オープンファイナンス」
 筆者自身が参加したオープンファイナンスのパネルでも、議論の中心は「銀行かフィンテックか」という対立ではなく、両者がどのようにデータを共有し、利用者価値を高めるかという点にあった。

 これは、ウズベキスタンのフィンテックが単純な銀行への挑戦という段階を越えつつあることを象徴しているように感じられた。 【次ページ】ステーブルコイン規制に“4段階”サイバー評価…2日目の焦点
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