- 2026/09/02 07:00 掲載
AIを使う企業ほど「残業が多い」? 馬渕磨理子氏に聞く“成果が出る投資”の条件
大阪公立大学客員准教授。京都大学公共政策大学院 修士課程修了。トレーダーとして法人のファンド運用を担う。その後、金融メディアのシニアアナリストを経て、現在は、一般社団法人日本金融経済研究所 代表理事として企業価値向上の研究を大学と共同研究している。国会 衆議院「財務金融委員会」で参考人として意見陳述し、事業性融資の法案可決に寄与。フジテレビ「LiveNewsα」、TBS「Nスタ」、TokyoFM「馬渕・渡辺のビジトピ」、読売テレビ「関西情報ネット.ten」などレギュラー出演中。NHK「日曜討論」、フジテレビ「日曜報道」など討論番組にも活動の幅を広げる。著書に『馬渕流! 投資の世界地図 経済の全体像をつかみ、金融市場を読む感度を磨く』(大和書房)『一歩踏み出せない人のための株式原論』(プレジデント社)など。
「攻撃されてから」では遅い…セキュリティ投資の鉄則とは
馬渕磨理子氏(以下、馬渕氏):セキュリティは、被害が発生して初めて、その重要性を実感しやすい分野です。
AIへの設備投資とセキュリティへの設備投資はセットで考えるべきでしょう。企業は自社のデータや顧客情報を持っています。そこを人質に取られ、身代金を要求されるような状況になれば、企業側は非常に弱い立場になります。
身代金の支払いは犯罪組織の資金源となり、再攻撃を招くおそれもあるため、原則として避けるべきです。重要なのは、そうした事態に陥らないための体制をあらかじめ構築しておくことです。AI活用を進めるのであれば、それを守るセキュリティも同時に強化する。両者を一体の経営投資として捉える必要があります。
──ここ最近、国家系のハッカーによる最先端AIを使ったサイバー攻撃が目立ちます。攻撃側がAIを使う時代、守る側もAIを活用した対策が欠かせません。一方で、防御技術を海外に依存し続けるリスクもあります。
馬渕氏:企業だけではなく、国家としてセキュリティを高めていく必要性は以前から言われていました。そこに日本がようやく本格的に舵を切り始めています。
米国の助けや技術も当然活用していけばいい。ただ、それだけに依存するのではなく、日本国内でも技術や人材を育て、日本企業が担える領域を増やしていくことが重要です。
AIや半導体、防衛、セキュリティなどは、企業の競争力だけではなく、国としての強さにも関わる分野です。官民、行政を含めてセキュリティへの感度が高まってきています。
なぜ今「国内回帰」なのか、企業に迫られる効率性からの転換
──2022年のロシアによるウクライナ侵攻以降、トランプ関税や中東情勢なども重なり、かつてのようにグローバルサプライチェーンが盤石だとは言いにくい状況です。日本国内である程度完結できる体制をつくる「国内回帰」の流れを、どう見ていますか。馬渕氏:これまでは、安く物を作れる地域で作ればいいという考え方が強かった。つまり効率性を重視したグローバル化がスタンダードでした。ただ、これからは効率性だけではなく、「何か起きても止まらない」という強靱さが必要になります。企業組織も国家運営も同じです。「自前主義」が求められています。
現在は、サプライチェーンの混乱、世界が分断している事実を突きつけられています。
国内で作れるものは国内で作る。エネルギーもできるだけ自国で確保する。一方、どうしても国内で完結できないものについては、調達先を複数持ってサプライチェーンを多様化する。そうした方向へ機運が高まりつつあります。
──政府はAIや半導体などの成長分野への官民投資を掲げ、企業にも内部留保を設備投資や研究開発へ回すよう促しています。
馬渕氏:これまでは需要が足りない、つまり個人消費が弱いから需要を刺激しましょう、という経済政策が中心でした。ただ、今のインフレ下では、人手不足でサービスを十分に提供できなかったり、物を作ろうとしてもコストが高かったりと、供給力が足りない状況です。
そこで政府は企業側に資金を入れて設備投資や研究開発を進め、供給制約を取り除いていこうとしている。国だけですべてを負担するのではなく、公的資金を呼び水にして民間企業にも投資してもらおうという考え方です。
政府の見通しでも、足元では120兆円台の国内民間設備投資を、2040年度には220兆円~250兆円へ増やしていく方向性が示されています。AIや半導体などの成長分野が、その投資をけん引していくことになります。
日本には、半導体関連の部品や素材、フィジカルAIなど、世界でも高い競争力を持つ企業が数多くあります。こうした日本企業ならではの強みを生かし、国内での設備投資や研究開発をさらに進めていくことが非常に重要です。 【次ページ】AI投資できる企業、できない企業…広がる「K字型格差」
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