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  • 2019/12/04 掲載

8年で30倍になったフィンテック投資、日本が示す存在感とは

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いま、世界にフィンテックの大きな波が押し寄せている。アクセンチュアではフィンテック投資やイノベーションの動向について、日本においては2015年から情報発信してきた。2019年は4回目となる調査結果を公表。その内容をベースに、フィンテックの過去、現在、未来を展望する。

アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 マネジング・ディレクター 村上 隆文

アクセンチュア 戦略コンサルティング本部 マネジング・ディレクター 村上 隆文

テクノロジーを梃子にした戦略立案を支援する組織「テクノロジー戦略グループ」の責任者。15年以上に渡り、金融を中心に複数業界にて戦略立案、トランスフォメーション、M&A/PMI等のプロジェクトに従事。テクノロジー戦略、イノベーション戦略、IT投資戦略、ビジネス・ITトランスフォメーション、大規模システム導入等に多くの知見を持つ。経済産業省「産業・金融・IT融合に関する研究会」(FinTech研究会)メンバー。共著書に「フィンテック 金融維新へ」(日本経済新聞出版社)。

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ファインテック関連の投資が世界中で盛り上がる理由とは
(Photo/Getty Images)

フィンテック投資は右肩上がり、スタートアップの調達額も巨大化

 アクセンチュアが公開した、世界のフィンテック動向についてのレポート『フィンテックの発展と新たな社会価値の創出』は、2018年までのデータを分析したものだ。調査対象には、ベンチャーキャピタルおよび未上場企業、株式会社および企業のベンチャーキャピタル部門、ヘッジファンド、アクセラレーター、政府系ファンドなどにおける国際的な投資活動が含まれる。

 また対象となるデータは、エクイティ(株主資本)および非エクイティの融資が含まれている。なお、本レポートでは、「フィンテック企業」を銀行業務やコーポレートファイナンス、キャピタルマーケット、財務データ分析、保険、決済や個人向けの財務管理等に関してさまざまなテクノロジーを提供する企業と定義している。

 以下ではこのレポートをベースに、フィンテックをめぐる世界の動きを概観したい。図1は、世界のフィンテック投資の推移である。一見して分かるように、投資額と案件数ともに右肩上がりの基調が続いている。

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図1:グローバルフィンテック投資の推移
(出典:アクセンチュアによるCB Insightsデータの分析)

 特に投資額は2018年、前年の2倍以上に増加した。2018年の実績には、中国・アリババグループの金融関連会社で、「Alipay(アリペイ)」などを展開するアント・フィナンシャルによる約140億ドルの資金調達が含まれる。日本円でおよそ1兆5000億円という巨額の資金調達である。ただ、同社分を除いたとしても、2017年から2018年の伸びは顕著である。一方の案件数については、近年、折れ線グラフが急勾配で上昇している。

 2つのグラフから、2015年ごろに起きた変化がうかがえる。単純化していうと、2015年ごろまでは、投資額の伸びが案件数のそれを上回っていた。1件当たりで見ると、比較的大きな資金を集めていた時代といえるだろう。

 これに対して、2016年以降になると案件数の伸びのほうが大きい。私たちは、これをイノベーションの実需を反映した動きととらえている。多くの大企業やスタートアップがフィンテックの可能性を強く認識するようになり、イノベーションのシーズづくりともいうべき動きが加速、それがフィンテック投資の規模的拡大よりも案件数の増加につながったのではないかと考えている。

 また、図1には地域別の動向を色分けして示している。2015年ごろまでは北米の存在感が圧倒的だったが、以後は欧州やアジア・パシフィックが急激な伸びを見せた。アント・フィナンシャルの影響もあって、2018年にはアジア・パシフィックにおける投資額が急増している。

 なお、図には国別の内訳を記載していないが、北米では米国、欧州では英国、アジア・パシフィックでは中国のスタートアップが大きな割合を占めている。ただ、近年はほかの国でも、これら先進諸国に追随する動きが顕著であることも付言しておきたい。

 アント・フィナンシャルについて言及したが、大口の資金調達は同社に限られたものではない。フィンテックの世界では、資金調達の大規模化が進んでいる。

 世界全体で見ると、1億ドル以上の資金調達件数は2013年まで1%未満だった。以後拡大して、2018年には4%を超えた。金額ベースでは、この傾向はより強まっている。

 スタートアップというと小規模という印象があるかもしれないが、フィンテック分野では必ずしも当てはまらない。今では大企業並み、またはそれ以上の資金調達を行い、大きな社会インパクトの実現を目指すスタートアップは少なくないのである。

日本のフィンテック投資は前年比で件数2倍、投資額5倍以上に

 次に、事業領域別の投資動向である(図2)。アクセンチュアは「預金口座」と「決済」「融資」「保険」「ウェルス&アセットマネジメント」「証券取引」「オペレーション」「その他」という8領域を設定し、それぞれの動向を注視してきた。

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図2:事業領域別の投資動向
(出典:アクセンチュアによるCB Insightsデータの分析)

 8領域の中で、フィンテック黎明期から高い関心を集めてきたのが「決済」と「融資」である。これら2領域への投資はいまも増加しており、全体の中でも大きなポーションを占めている。

 2018年には「ウェルス&アセットマネジメント」の投資額の大きさが目を引くが、ここにはアント・フィナンシャルが含まれている。また、「保険」領域も注目に値する。劇的というほどの伸びではないものの、この領域のフィンテック事業は着実に成長を続けている。

 先にグローバルと地域別の動向を述べたが、さらに細かく、国別で分類すると違った光景が見えてくる。2018年の投資件数のランキングは、1位から順に米国、中国、英国、インド、フランスと並んでいる。

 日本は63件で10位、投資額で見ると5億4200万ドルで9位にランクされる。なお、2017年の投資件数は24件(18位)、投資額は1億500万ドルだった。2017年から2018年にかけて、件数で2倍以上、投資額では5倍以上に増加した。日本におけるフィンテック投資は、ギアチェンジの節目を迎えているのかもしれない。

 では具体的に、日本ではどのような事業領域が拡大したのだろうか。前述した8領域の中で、2018年に10件以上の投資があったのは「融資」「保険」「ウェルス&アセットマネジメント」「その他」の4領域。

 すべての領域で、前年からの大幅な伸長が見られた。また、「決済」での件数は7件だったが、投資額は1億2800万ドルとかなり大きい。これは「ウェルス&アセットマネジメント」の2億5800万ドルに次ぎ、8領域の中で2番目の位置を占めている。

 5年ほど前までは、日本ではクラウド会計や預金口座やPFM (Personal Financial Management)のようなフィンテック事業が目立ったが、近年は投資領域の多様化が進みつつある。2018年の事業領域別の投資動向からは、そんな傾向を見て取ることができる。

【次ページ】存在感を高めつつある地域に根差したフィンテック事業

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