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  • 2019/11/29

“キャッシュレス”に物申す、「決済手段の変更」は変革か? (2/2)

現金に由来する仕組みを変えることの重要性

 Stapleカードの事例において注目すべきは、従業員による経費の立て替えという行為自体をなくした点にある。よくよく考えてみると、なぜ従業員は会社の経費を立て替えなければならないのだろうか。

 会社に対して経費を貸し付ける契約を結んだわけではないし、一時的とはいえ経費を貸し付けているにもかかわらず利息を受け取ることもできない。仮に会社が倒産した場合、給与は労働債権として一般債権に優先するが、立て替えている経費はそうではない。

 本来であれば会社が経費を仮払いし、あまった分を戻すというのがあるべき姿なのだろう。実際に従業員が立て替えるのは困難な高額の経費を使用する場合、そのような処理が行われることがある。

 しかし、少額の経費についてまで現金を用いて同様の処理を行うのは、手間や事故の可能性を考慮すると合理的ではない。従業員による経費の立て替えは、現金を使用しているからこそ続いてきた、理にかなった行為と言える。

 そうであれば、現金以外の決済手段が普及した現在においては、企業における経費の使用には現金以外の手段を用い、立て替え払いという行為自体をなくす方が合理的ではないだろうか。そして、これこそがキャッシュレスの真の姿であるように思われる。

真のキャッシュレスとは何か

 つまり、真のキャッシュレスとは、単に現金を電子マネーやQRコード決済に置き換えるのではなく、現金の使用を前提としたプロセスそのものをなくすことだと考えられる。

 我々はキャッシュレスにより現金を用いるプロセスそのものをなくすということを、早い人では約20年前に体験している。SuicaやPASMOなどの交通系電子マネーの登場により、それまでは電車に乗る際に必ず発生していた切符を購入するというプロセスを飛ばして、改札を直接通るという行動が当たり前になった。今では当然すぎて意識しないこの行動こそが、キャッシュレスによる成果と言える。

 キャッシュレスが普及した世界を予想するには、すべての人が交通系電子マネーを利用するようになり、切符や券売機が存在しなくなった世界を想像することが参考になるだろう。

 たとえば、3月末や9月末に定期券を購入、更新する利用者が駅に行列を作る姿を見かけるが、これは利用者の時間を消費するとても無駄な行動に思われる。現金を使わないのであれば、新規発行はともかく、更新であればネット経由で完結できるはずで、無駄な行列はなくなると考えられる。

 ネットで定期券を申し込む(予約する)サービスは現在も存在するが、キャッシュレス決済の普及に併せて、さらに利便性が高いサービスへの進化が期待される。

 また、券売機で販売できる切符の種類の制約からか、現在は一定の距離毎に決まっている電車の運賃を、距離に応じて駅毎に細かく設定するといったことも可能になるだろう。かつては均一料金制だった首都高速道路の通行料金が、ETCというキャッシュレス決済が普及したことで距離別料金制になった先例がある。テーマパークなども滞在時間に応じた料金体系を導入できるかもしれない。

 これまでの考察からすると、キャッシュレスにより実現することとして、「現金に由来する面倒なプロセスをなくすこと」「決済のために物理的に移動する必要がなくなること」「(従量制などの)柔軟な料金体系を導入できること」が挙げられる。

 もちろん、キャッシュレスによりほかにもさまざまなことが実現できるのであろうが、ここで指摘しておきたいのは、これらを踏まえて世の中の仕組みを変革することの重要性である。

 あまりにも当たり前すぎて、我々が何の疑問も持たずに受け入れている「社会の仕組み」の中には、現金を使用していることに由来するものが少なからず存在する。その仕組みの中で現金とキャッシュレス決済を置き換えただけでは、利用者があまり利便性を感じず、ポイント還元などのメリットがなくなれば、キャッシュレス決済を利用しなくなる懸念がある。

 キャッシュレスの進展には、現金に由来する仕組みをなくし、キャッシュレス決済を前提とした、利用者が利便性を実感し使い続ける仕組みを構築する必要がある。

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