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- 2025/08/08 掲載
大和証券・明治安田・愛媛銀の「AI活用」が超参考になるワケ、現行ルールの“課題と論点”とは?
元毎日新聞記者。長野支局で政治、司法、遊軍を担当、東京本社で政治部総理官邸番を担当。金融専門誌の当局取材担当を経て独立。株式会社ブルーベル代表。東京大院(比較文学比較文化研究室)修了。自称「霞が関文学評論家」
金融業界で広がるAI利用、その中身は?
金融機関のAI活用には乗り越えなければならないいくつかの課題があります。たとえば、銀行や証券会社、保険会社などは、顧客の個人情報やインサイダー情報を扱うこともあり、強い情報の規制が敷かれています。そうした規制対応に加えて、技術面やコスト面での課題にも向き合わなければいけません。実際に、金融庁が2024年10~11月に行った「金融機関等のAIの活用実態等に関するアンケート調査」を見ると、一般社員向けに生成AIの活用を認めている企業は約7割ながら、「特定部署の社員に限定」「利用は行っていない/利用範囲について検討中」も4分の1にのぼります。
なお、本調査ではAIの活用分野も紹介しており、たとえば、文書要約や翻訳などの社内利用、コールセンターや稟議書のドラフト作成など、対顧客サービスへの間接的な利用が進んでいるようです。一方、対顧客への直接利用はまだ限定的という状況のようです。
こうした状況を踏まえ、金融庁は最近、競争力の低下など「AIを活用しないリスク」をたびたび強調し、AI活用について過度に委縮しないよう事業者側に発破をかけています。
では、実際に金融機関ではどのようにAIを活用しているのでしょうか。2024年6月18日に金融庁が開催した「AI官民フォーラム」では、明治安田生命、愛媛銀行、大和証券といった企業が、それぞれの取り組みや計画について発表しました。
以下では、明治安田生命と愛媛銀行、大和証券の事例を中心に紹介します。
明治安田生命:既存AIと使い分け
明治安田生命は、「人とデジタルの効果的な融合」というDXの基本的な考え方にもとづき、生成AIの登場前からAIの利活用に積極的に取り組んできました。AIによる業務効率化によって、「人が『ひと』にしかできない役割に、より専念できるような世界をめざす」とのコンセプトを打ち出しています。同社では従来型AIと生成AIの使い分けを整理しています。たとえば、従来型では医療費領収書などの読み取りやデータ化、顧客向けには、「健活未来予測モデル」を使った「健活年齢」を算出しています。
一方、生成AIの方では、2023年に本社スタッフ向けの「AIアシスタント」導入するなど取り組みを進めています。これは資料作成や社内照会などをチャット形式で行えるツールで、OpenAIの「GPT-4o」をベースに、同社向けのユーザーインターフェースにカスタマイズしています。ここでは個人情報が外部流出しないよう、セキュアな環境が構築されているとのことです。

さらに、営業職員が使うスマートフォンには、顧客情報の登録や参照、検索機能を搭載したモバイルアプリ「デジタル秘書 MYパレット」を2024年10月に導入。音声入力とAI分析により顧客情報を簡単に入力できるほか、顧客1人ひとりの「人となり」も記録できるといいます。
今後は各種データに応じ、AIがアドバイスするなどの機能拡充も検討中です。 【次ページ】大和証券・明治安田・愛媛銀行の「AI活用」とは?
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