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  • 2025/08/11 掲載

なぜ「日本だけ」生成AI活用が進まない? 効果実感は米・英の「たった1/4」という衝撃

連載:野口悠紀雄のデジタルイノベーションの本質

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企業による生成AI活用に関するさまざまな調査で、日本の立ち後れが目立つ。ある調査では、「期待を上回る効果」を出せた日本企業が13%と、米国・英国の1/4程度にとどまった。なぜ日本は、このような状況に陥ったのか。
執筆:野口 悠紀雄

野口 悠紀雄

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを歴任。一橋大学名誉教授。
noteアカウント:https://note.com/yukionoguchi
Twitterアカウント:@yukionoguchi10
野口ホームページ:https://www.noguchi.co.jp/

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生成AI活用で、なぜ日本の遅れが目立つのか
(Photo/Shutterstock.com)

生成AI活用中の企業「1年で3倍超」に

 7月14日7月28日の本欄で、日本企業による生成AIの活用度が、諸外国に比べて低いことを述べた。7月28日には、情報通信白書の調査を紹介した。以下で述べるように、同様の結果が他の調査でも明らかになっている。

 さまざまな見通しによれば、生成AI市場は今後急速に成長する。そのインパクトは非常に大きい。したがってこの分野で日本が遅れを取ることのコストは、極めて大きいと考えるべきだ。そこで以下では、この問題をさらに追求することとしよう。


 まず、Nikkei ResearchがReuters向けに2024年7月に行った調査によれば、その時点で、日本企業の41%がAI導入の計画すら持っていなかった。AIをすでに導入している企業は全体の24%でしかなく、計画中を含めても35%にしかならなかった。この結果はAI活用において、日本が世界的な潮流に大きく遅れを取っていたことを明白に示している。

 一方、PwC Japanグループは、2023年から「生成AIに関する実態調査」を継続的に実施している。2024春の調査では、日本の場合、社内で生成AIを活用・推進中と回答した企業は67%だった。この結果は、1年前の22%の3倍以上であり、半年前の調査よりも高い。

 生成AIへの期待度合いについては、「業界構造を根本から変革するチャンス」と積極的に捉えている企業の割合は25%にとどまっており、「他社より相対的に劣勢に晒される脅威に対応するため」というやや防御的な回答の企業が43%となっていた。

効果実感は「わずか13%」、米・英の1/4…

 PwC Japanグループは、2025年春には、「生成AIに関する実態調査5カ国比較」(日本・米国・英国・ドイツ・中国)調査を実施した。この調査では、企業における生成AIの認知度、導入状況、効果、ガバナンス体制の違いが5カ国について比較されている。

 米国と英国では、生成AIが経営変革の中核として活用されており、効果創出に成功している企業の割合が極めて高い。また中国では、積極的な導入姿勢と迅速な拡張が目立つ。

 それに対して日本企業は、導入の推進度は平均的であるものの、「期待を上回る効果」を実感している企業はわずか13%にとどまっている。これは米国・英国の1/4でしかなく、ドイツ・中国と比べても、約半分の水準だ。また、「効果が期待以下」と回答する企業が増加していることも注目される。

 効果を出している企業に共通する成功要因としては、経営陣のリーダーシップの下で生成AIを中核業務に統合し、全社変革と堅牢なガバナンス整備を推進していることにある。それに対して、効果が低い企業では「業務効率化ツール」としての断片的活用にとどまり、経営層の関与や全社的戦略が欠如している。

 以上の結果を踏まえ、PwCは日本企業に対して、次の取り組みを提言している。 【次ページ】【結論】日本が抱える「最大の問題」
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