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- 2019/11/27 掲載
40代の銀行員は「給料を落とさずに」異業種へ転職できるのか?
40代の銀行員が、給料を大幅に落とさずに異業種へ転職することは可能でしょうか? (北村洋一<仮名> 40代・現職銀行員)
大杉さん、こんにちは。私は、40代になったばかりの現職の銀行員です。銀行の将来に不安を感じ、成長する業界への転職を真剣に考えています。
もともと安定している仕事ということで銀行を選んで就職しましたが、ここ数年はゼロ金利が続いて銀行の収益は厳しく、本部から来る目標は、とても達成できない非現実的な数字になっています。職場の雰囲気は暗く、上司の疲れた表情をみていると、銀行の将来にはとても希望が持てません。
さらに「働き方改革」で残業代が大幅に減っているため年収も頭打ち。それなのに、責任はどんどん重くなり、勤務時間内に終わらない仕事はこっそり持ち帰って行うなど、仕事はむしろ増えています。
キャッシュレス化やフィンテック企業の台頭など、銀行の未来は暗いと感じ、成長する業界へ転職できないかと考えています。子どもの教育費が本格的にかかり始めたので、妻からは反対されています。40代では給料を大幅に落とさない転職は難しいのでしょうか?
【大杉氏の答え】
北村さん、おっしゃるように銀行業界の収益環境の厳しさは、メガバンク3行の大規模リストラ計画が発表されたように、ゼロ金利政策の長期継続と、企業の資金需要低迷で、ますます加速しています。今後は大手銀行だけでなく、地方銀行や信用金庫・信用組合など地域金融機関、さらには証券業界、生損保業界など、金融業界全体に大規模なリストラが広がっていくでしょう。
北村さんが肌で感じているように、銀行業界の収益が厳しくなっていくのは、これからがむしろ本番です。2019年10月からの消費増税において、キャッシュレス化よるポイント還元が大きな反響を呼んでいて、日本でもようやく本格的なキャッシュレス時代に入っていきます。中国ではすでに全人口の約4割がスマホによるキャッシュレス決済を利用し、沿海部住民のキャッシュレス決済利用率はなんと98%です。
そうなると、銀行の支店網やATMは果たしてどの程度、必要でしょうか?私が3月に刊行した『銀行員転職マニュアル 大失業時代を生き残る銀行員の「3つの武器」を磨け』(きずな出版)に詳しく書きましたが、今後10年以内に銀行の支店は1/10、ATMは1/5以下になるとみています。
では、銀行からいち早く抜け出して転職したほうがいいのか、と言うと、そんなに単純な話でもありません。今後、人工知能(AI)の活用などもあり、銀行で働く人たちは大幅に減ることになるのは間違いありませんが、銀行の担っている機能がまったく必要なくなる、ということもあり得ません。
結論から言えば、「銀行員の転職は若いほど有利」とは限らないし、「早いほどいい」とも言えない、と考えています。
なぜならば、「銀行員として身につけた中核的なスキル」を生かした転職のほうが、より能力を発揮して評価され、年収も高い職場で働けることになるからです。
「若い20代のうちが転職に有利」だとか、「第二新卒として就職活動ができる入行3年目までがいい」という人もいますが、よく聞いてみると、そのように煽って勧めるのは、人材紹介業の人だったりします。自分のビジネスのために勧めているだけかもしれません。そもそも、そんなに早く転職するなら、銀行に入らなかったほうがよかったのではないか、ということになります。
私が銀行員に転職を勧める場合は、「銀行員としてのスキルをしっかり磨いてから」とアドバイスしています。銀行員としては当たり前の知識やスキルが、実は他の一般の業界では貴重な能力、戦力として評価されるものなのです。
それを私は「銀行員の3つの武器」と呼んでいて、少なくともこの「3つの武器」を銀行で実務経験を積むことでしっかりと身につけ、磨いておいたほうがいい、ということです。それは次の3つです。
【次ページ】転職マーケットに打って出る際に重要な2つのポイント
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