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  • 2020/01/21 掲載

7割がなぜか「業務効率化」を期待…国内調査でわかったフィンテック導入の課題

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KPMGコンサルティングと慶應義塾大学FinTEKセンターは2019年、日本国内の上場企業を対象にフィンテックの取り組み状況を共同調査し、その結果を冊子「FinTech Initiative 2030」にまとめた。その調査結果からは、日本国内企業のフィンテック導入に関する意識の差や落とし穴が明らかになった。
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進まない国内企業のフィンテック導入、その実態が明らかになった
(Photo/Getty Images)


慶大とKPMGがまとめた「FinTech Initiative 2030」

 KPMGコンサルティングと慶應義塾大学FinTEKセンターは2019年12月2日、フィンテックに関する共同調査の結果を「FinTech Initiative 2030」として取りまとめ、その内容を発表した。

 KPMGコンサルティングは1年前から慶應義塾大学 FinTEKセンターと提携し、フィンテックに関する共同研究や授業などを展開してきた。「KPMGが持つ企業間のネットワーク、慶應義塾大学が持つアカデミックな部分を融合させ、実態調査を実施して報告書を作成することになった」と、KPMGコンサルティングの執行役員 パートナーの椎名 茂氏は語る。

 慶應義塾大学FinTEKセンターが発足したのは2017年6月のこと。通常、フィンテックは「FinTech」というつづりになるが、同センターのつづりは「FinTEK」となっている。最後の「K」は慶應義塾大学の「K」を指すが、「このつづりには、エコノミック(経済=K)の観点からフィンテックにアプローチするという意味がある」と、同センターのセンター長であり、同大学院経済学研究科委員長の中妻 照雄教授は説明する。

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慶應義塾大学 経済学部 教授
慶應義塾大学 FinTEKセンター長
中妻 照雄教授

 今回、KPMGコンサルティングとの共同プロジェクトとして調査を実施した意図について、中妻氏は「企業のフィンテックへの取り組みを数値化して世の中に出していくことが、大学として社会の問題を提起する最初の一歩となると考えた。また、大学からもフィンテックを盛り上げていきたいと思った」と述べている。

 続いて、KPMGコンサルティング フィンテック・イノベーション ディレクターの東海林 正賢氏が調査概要を説明した。

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KPMGコンサルティング
フィンテック・イノベーション ディレクター
東海林 正賢氏
 この調査は日本国内上場企業全社にアンケート票を郵送して実施した。その内、有効回答数は170社。調査の観点は、「市場の変化」「ビジネスポテンシャル」、進展することにおける「ビジネスリスク」「中長期的な企業としての戦略」の4点だ。東海林氏は「今回の調査では企業の戦略部分にも関係するため、回答できないという企業も少なくなかった」と説明する。

 また、国内の大手企業の有識者への対面インタビューを金融機関、非金融機関に分けて以下の10社、11人に対して実施。「今回は実際に実務を担当している方々を対象に、それぞれの視点でフィンテックにかかわる技術について語っていただいた」と東海林氏は語る。

・金融機関
三菱UFJ銀行 デジタル企画部 次長 岩田 廉平氏
みずほ証券 デジタルイノベーション部長 大井 聡紀氏
みずほ証券 デジタルイノベーション部ディレクター 星子 哲徳氏
ローソン銀行 代表取締役社長 山下 雅史氏
第一生命ホールディングス 国内営業企画ユニット InsTech推進グループ部長 市川 陽一氏
元・SOMPOホールディングス チーフ・データサイエンティスト 中林 紀彦氏
・非金融機関
国際資産運用センター推進機構 理事・東京国際金融機構 専務理事・Kensho Technology LLC アジア代表 有友 圭一氏
東日本旅客鉄道 技術イノベーション推進本部次長 中川 剛志氏
日本交通 代表取締役会長 兼 Japan Taxi代表取締役社長 川鍋 一朗氏
マネーフォワード 執行役員 神田 潤一氏
スクウェア・エニックス テクノロジー推進部 リードAIリサーチャー 三宅 陽一郎氏

投資規模は増えつつあるが、まだまだ規模は小さい

 今回の調査報告書で実施されたアンケートの結果からは、一般的な企業においてはまだまだフィンテック活用が進んでいない実態が明らかになった。たとえば、過去3年間のフィンテックへの投資規模、今後3年間に予定しているフィンテックへの投資規模の結果を見てみよう。

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「過去3年間のフィンテックへの投資規模」「今後3年間に予定しているフィンテックへの投資規模」の回答結果
(出典:KPMGコンサルティング)
 グラフを見ると分かるように、過去3年間のフィンテックへ1億円以上投資した企業は22.4%となっている。また、1億円未満が37.6%、現状投資をしていない企業も35.3%という割合だ。

 さらに、今後3年間に予定しているフィンテックへの投資規模については、若干前向き傾向にはあるものの、1億円以上投資をすると回答した企業は35.9%にとどまっている。1億円未満が25.3%、投資の予定はないと回答した企業も33.5%となった。「今後は積極的に投資をしていく企業、そうではない企業との格差が広がっていくと考えられる」(東海林氏)。

【次ページ】約70%の企業が「業務効率化」を期待することへの危惧

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