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  • 2020/06/29

新型コロナは「キャッシュレス決済」普及の追い風か? 決済事業各社のIRを読み解く

政府の専門家会議が提唱した「新しい生活様式」では、不特定多数の人が触れる現金を敬遠する向きもあり、明確に「キャッシュレス決済」が推奨されている。そうした中、「新型コロナウイルスは、キャッシュレス決済拡大の追い風となっている」という論調もある。実際にキャッシュレス決済は伸びているのか。新型コロナウイルスが国内のキャッシュレス市場に与えた影響と海外の最新動向について、一般社団法人Fintech協会 理事の八巻 渉氏が解説する。

フリーランスライター 酒井 真弓

フリーランスライター 酒井 真弓

ビジネス/エンタープライズIT領域のライター、広報、イベントコーディネーターとして活動するフリーランス。

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キャッシュレスは本当に伸びているのか?
(Photo/Getty Images)
※本記事は、電子決済代等行事業者協会とFintech協会が2020年5月27日に共催した勉強会「2020年下半期キャッシュレス動向/金融サービス仲介業最新状況」の講演内容をもとに再構成したものです。

キャッシュレスは本当に伸びているのか? 国内決済事業者のIR資料が示すもの

 まずは、決済事業者各社の最近の取扱高の推移を確認しよう。八巻氏の予測に基づき、各社のIR情報から決済回数などの情報を取得して「GMV(取扱高)」を算出した。

 QRコードと電子マネーの分野では「PayPay」が急激に伸びているようだ。取扱高が最も大きい「WAON」が月間約1,600億円、年間で約2兆円弱という規模だ。PayPayは、この伸びでいくと月間1,400億円、年間1兆5,000億円程度まで成長していると推測される。

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各社IR情報から決済回数などの情報を取得し、GMVを予測
(出典:Fintech協会 報道発表)

 クレジットカードの分野では「楽天カード」の伸びが著しい。月間9,000億円を超え、年間11兆円規模となっている。全キャッシュレス手段の10%を超える最も大きなシェアを獲得している。新型コロナがキャッシュレス市場に与えた影響は、楽天カードなど決済事業各社のIR資料からある程度見えてきそうだ。

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クレジットカード会社のCMV比較
(出典:Fintech協会 報道発表)

 楽天のIR資料によると、オンラインでの取扱高は伸び、オフラインは減少している。

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楽天カードはオンラインは伸びているが、オフラインは下落
(出典:Fintech協会 報道発表)

 業績の推移を見ると、オンライン決済は伸びているものの、オフラインの下落を相殺できるほどではないようだ。

 その点について、八巻氏は「クレジットカードカード決済は12月に最も伸びるものなので、2019年度の第4四半期と2020年度の第1四半期の比較はあまり意味がありません。ただ、その額が減少しています。継続的な成長からわずかでも減少に転じるのはかつてない事象です。1月~3月期は1.9%程度、全体取扱高が減っているのではないでしょうか」と説明する。

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前年のQ1/Q4比を加味すると、約-1.9%のインパクトと予想
(出典:Fintech協会 報道発表)

 次に、セゾンカードの2020年3月期のIR資料はどうだろうか。こちらは、1~3月期の減少は-1%程度だが、4月は例年より20%~30%程度落ち込んでいる。4~6月期は、さらに減少すると予想される。

 八巻氏は興味深い点として「キャッシングの取扱高」の推移を挙げている。3月までは横ばいだったが、4月にショッピング取扱高よりもさらに大きな下落が垣間見えている。八巻氏は「個人の資金繰りニーズ、たとえば、旅行や嗜好品の必要性が低くなったと考えられます。消費の落ち込みが見て取れると思います」と分析する。

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Q単位では1-3月期-1%未満の下落だが、4月の落ち込みが大きい(-20%?)
(出典:Fintech協会 報道発表)

消費者意識は、キャッシュレスへとシフト

 各社のIR資料をひもとくと、キャッシュレス決済の取扱高は伸びていないことがうかがえる。その理由は、新型コロナの影響により、キャッシュレス単価が高い旅行と飲食機会が大幅に減少していることが大きい。また、飲食店のデリバリーやテークアウトが増え、オンライン決済は伸びているが、オフライン決済の落ち込みを相殺できるほどではないようだ。

 では、何が伸びているのか。それはキャッシュレス決済の回数だ。グラフは、PayPayの累計決済回数の推移を表している。3~4月は多少伸びが鈍化したように見えるが、それでも月の決済回数は1億以上のペースで伸びている。「PayPayの結果から、特にスーパーやコンビニでの少額決済に関しては大きな影響はなく、成長し続けていると推測できます」(八巻氏)

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累計決済回数は、4月に少し伸びが減退したものの、月1億回以上のペースで伸びている。少額決済においては、影響は軽微と見られる
(出典:Fintech協会 報道発表)

 その他、新型コロナの影響として、「加盟店が入金サイクルを忌避し、取り扱いをやめてしまうのではないか」という報道もある。要は、月一回払いや翌月末払いだと保たない店舗が、現金決済に戻してしまうのではという話だ。しかし、決済事業各社にヒアリングした八巻氏は、これを否定する。

「もちろんそういった加盟店さんもいらっしゃると思いますが、それ以上に現金を扱いたくない加盟店が多いようです。大きな加盟店の減少はないと聞いています」(八巻氏)

 「現金をあまり扱いたくない」という心理は、消費者行動にも現れている。八巻氏が代表を務めるカンムが行ったアンケート調査では、キャッシュレス払いの比率が大幅に増えている。2019年から順調に増えているため、新型コロナの影響がすべてではないが、コロナ禍において、消費者意識はキャッシュレスに傾いてると見てよさそうだ。

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キャッシュレス払いの意識は成長を継続
(出典:Fintech協会 報道発表)

【次ページ】海外では、コンタクトレス決済(非接触決済)が注目の対象に

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