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- 2020/07/13 掲載
「仮想通貨 vs 中央銀行」の現在地、CBDCの開発状況とFRBや日銀の動きを解説
FINOLAB コラム:
2017年の「仮想通貨」バブルを振り返る
麗澤大学 教授 中島 真志氏が著者を務める『アフター・ビットコイン』が刊行された2017年10月は、日本が「仮想通貨(現在では暗号資産が正式呼称)」取引で世界から注目されていた時期であった。世界に先駆けて2017年4月に施行された改正資金決済法により「仮想通貨取引所」が規制されることになった一方、取引所各社は「いよいよ仮想通貨が合法化された」といってアピールをし、低金利下で高いリターンを求める顧客の争奪戦が展開されていた。
同年中ビットコイン価格が20倍近く上昇、「億り人」と呼ばれるビットコイン長者が続出したこともあって、350万もの取引口座が開設される「ブーム」が出現、いわば「バブル」の真っただ中であった。
意外に早かったバブル崩壊
「仮想通貨」の取引が活発となった状況のもとで、2017年後半には全世界のビットコイン取引に占める日本円のシェアが5割に達するようなこともあったが、早々に「バブル」が弾けることとなったのは記憶に新しい。同年12月に2万ドル手前まで上昇したのが最高値で、そこから一気に価格下落が始まった。さらに、2018年1月には、取引所としての正式認可取得前の「みなし業者」というステータスで派手に顧客を集めていたコインチェック社で600億円相当以上の仮想通貨が不正流出するという事件も発生し、「バブル」の崩壊が決定的なものとなった。
今から思えば典型的な「バブル」であったが、価格上昇が続いているうちはなかなか認識できないものである。著者が2017年の執筆段階でビットコインの問題点と「バブル」の可能性を指摘して、ビットコインは「終わった」と断言したのは正に慧眼である。
さらに、仮想通貨を支える基幹技術である「ブロックチェーン」について、(1)取引データの改ざん防止、(2)システム障害の発生防止、(3)構築コストの削減などの特徴に言及して、「世界を変える」と評価しているが、その後多くの金融分野においてブロックチェーンを活用した実証実験、実用化プロジェクトが進展しつつあり、決済業務に精通している著者の深い洞察に敬服するものである。
「デジタル通貨」に何が起きているのか
前作が刊行された2017年10月以降の大きな変化として、まずフェイスブックが「仮想通貨」の利便性と「法定通貨」の安心感を両立させるべく、新しいデジタル通貨である「リブラ」の発行準備を進めるためにホワイトペーパーを発表したが、世界中の決済関係者の議論を呼び、中銀関係者からはかなりネガティブな反応を得たという顛末を説明している。そして「仮想通貨」業界においては多くのアルトコイン(ビットコインの代替コイン)が出現し、不正流出事件や取引承認結果を歪める51%攻撃が発生した点を説明。取引価格が変動しない「ステーブルコイン」が注目されるようになった一方で、その代表銘柄である「テザー」の持つ問題点を指摘している。
また、大手金融機関がブロックチェーン技術を活用した「デジタル通貨」に積極的に取り組むようになっており、Utility Settlement Coin(USC)のように大手行の協業による銀行間決済用「デジタル通貨」を中銀預金見合い(融資後にその一部を半強制的に預金させること)で発行していることを紹介。
さらに、米JPモルガンチェースの独自通貨「JPMコイン」のように単独行によるデジタル通貨の発行、IBMが推進して50以上の銀行が参加するBlockchain World Wire(BWW)のようにブロックチェーンベースの決済ネットワークでデジタル通貨を利用している、といった事例を示している。
また、各国中央銀行におけるブロックチェーン技術の研究が、シンガポールとカナダ、欧州と日本というように多国間プロジェクトに発展していることに加え、「デジタル通貨」発行をめぐる検討も、中国やスウェーデン、バハマ、カンボジア、東カリブ、欧州、ウクライナ、トルコなどにおいて本格化していることから、いよいよ「中銀デジタル通貨(CBDC)」が現実のものとなりつつあるとしている。
そうした点をふまえ、IT企業や民間銀行、中央銀行による「三つ巴」の争いが、「デジタル通貨」の覇権をめぐって展開されていると指摘している。
【次ページ】FRBや日銀の「中銀デジタル通貨」への動き
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