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  • 2021/07/02 掲載

なぜ「位置情報」が重要? 金融機関が注目すべき“ライフイベント”と〇〇データ

大野博堂の金融最前線(38)

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金融機関では、顧客を取り巻くイベントにフォーカスし、いかに顧客需要に対応した金融サービスを提供するかという、EBM(イベントベースドマーケティング)が注目されている。顧客ニーズを的確に把握するため、複数のデータを収集・分析し、営業活動のインプット情報とする取組みが強化されているが、通常金融機関が取得可能なデータには限界があるなど、複数の課題が存在するのが実態だ。そこで本稿では、近年金融機関でも注目されつつある位置情報データについて解説するとともに、EBMにおける活用の可能性と留意点について解説する。
NTTデータ経営研究所 金融政策コンサルティングユニット長 大野 博堂、シニアマネージャー 菊重 琢

NTTデータ経営研究所 金融政策コンサルティングユニット長 大野 博堂、シニアマネージャー 菊重 琢

NTTデータ経営研究所 パートナー 金融政策コンサルティングユニット長 大野 博堂 NTTデータ経営研究所 金融政策コンサルティングユニット シニアマネージャー 菊重 琢

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なぜ金融機関は「位置情報」に注目すべきなのか
(Photo/Getty Images)

顧客の「ライフイベント補足」に向けた課題とは

 個人の金融ニーズは、個々人のライフイベント(就職、結婚、出産など)に付随して発生するケースが多い。それ故に、銀行など金融機関の個人向けマーケティングではいかに顧客のライフイベントをリアルタイムに予測・把握できるかが重要視されてきた。

 ライフイベントの予測・把握に関する取り組みとして、10年以上前からEBM(イベントベースドマーケティング)が注目されている。EBMとは、顧客の属性や金融取引情報から、顧客が置かれている状況やライフイベントを把握し、適切なタイミング・チャネルを用いてアプローチする手法をいう。

 この意味で、EBMは顧客の理解と顧客理解に基づく施策を包含した優れた取り組みといえるだろう。しかしながら、金融取引情報を基にしたライフイベントの予測にはいくつかの課題がある。

 1つは、個々の金融機関が把握する金融取引情報は、顧客である個人からするとあくまで断片的なケースである場合が多いことである。通常、顧客となる個人は複数の金融機関と並行して取引を実施しているケースが多い。

 その場合、金融取引情報は複数金融機関に分散されることから、一金融機関で把握できる情報はあくまで一部にとどまってしまい、適切な検知ロジックを構築したとしても自行では顧客の変化を検知しきれないケースが相当数発生することが考えられる。

 また、もう1つの課題は、金融取引情報がライフイベントの予測に最適な情報とは言い切れないことである。もちろん金融機関が保有する膨大な情報をうまく活用することにより、これまで人手では検知しきれなかったマス層顧客のさまざまな変化やライフイベントを効率的に検知・予測できるようになることは大きな意味を持つだろう。

 しかし、ライフイベントの発生、もしくは予兆が金融取引情報には表れないケースも多々ある。逆に言えば、金融取引情報を補足するためも、より直接的にライフイベントの発生を示唆する情報を活用することが、既存の検知ロジックの高度化よりも簡易かつ確実な施策につながる可能性が高い。

「行動データ」に着目すべき理由

 それでは、直接的にライフイベントの発生を示唆する情報とは何か。

 ライフイベントの発生を予測・検知するには、そのイベントに付随して発生する行動を観測することが必要となる。その意味では、マーケティングに用いられる図1のデータのうち、特にビヘイビアル(行動学的属性)データの活用がポイントとなるだろう。

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図 1 マーケティングデータの分類

 行動データとは、顧客が日々の生活でどのような行動をとったかを記録したデータのことを指す。代表的なものとして購買データやWeb行動データのほか、SNSの書き込み情報などがあるが、特に金融機関においては、前述のEBMでも用いられる金融取引情報やWeb行動データの活用ケースが多いことだろう。

 金融取引情報は非常に有用な行動データではあるが、前述したとおり「(1)個々の金融機関が把握できる金融取引情報は断片的」「(2)ライフイベントを直接的に類推するには金融取引情報だけでは不十分」という課題がある。それらの課題を補足する意味でも注目されるのが、位置情報の活用である。

【次ページ】行動データとしての位置情報の可能性

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