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  • 2022/02/04 掲載

めぶきFG社長 笹島律夫氏に聞く地銀の役割、「地場産業の支援」で伸張を続けられる理由

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2016年に常陽銀行と足利ホールディングスが経営統合したことにより発足しためぶきフィナンシャルグループは、国内第3位の規模の地銀グループとして存在感を示すだけでなく、DXやコンサルティング事業など独自の取り組みで注目を集める。これら施策の背景や現状、将来の目標などについて、同グループ取締役社長と常陽銀行頭取を務める笹島律夫氏に聞いた。

聞き手、構成:編集部 山田 竜司 執筆:吉村 哲樹

聞き手、構成:編集部 山田 竜司 執筆:吉村 哲樹

photo
めぶきフィナンシャルグループ取締役社長
常陽銀行頭取
笹島律夫氏

コロナ禍はデジタル化や合理化を進める上では追い風にも

──めぶきフィナンシャルグループ(以下、めぶきFG)の事業の概況と、中期経営計画で掲げている目標についてお教えください。

笹島 律夫氏(以下、笹島氏):めぶきFGは、茨城県を地盤とする常陽銀行と栃木県を地盤とする足利銀行が2016年10月に経営統合して発足しました。その際に策定した第1次中期経営計画は、両銀行の中期経営計画をそれぞれ引き継いだ形でしたが、2019年度からスタートした第2次中期経営計画ではいよいよ本格的な統合成果を取り込むとともに、今後の成長のための準備を行う期間と位置付けてこれまで取り組んできました。

 具体的には、次の成長に向けた「構造改革」を進めていて、その中にはデジタル技術の積極活用といった施策も含まれています。また世の中の変化に合わせて、私たちも従来の銀行業務にとらわれることなく新たな事業に積極的に打って出て、地域経済により貢献していかなければなりません。中でも「コンサルティング営業」に関しては、特に力を入れています。またこれらの施策を推進していくために、「人材育成」や「働き方改革」にも積極的に取り組んでいます。

画像
めぶきFG第2次グループ中期経営計画
(出典:めぶきフィナンシャルグループ)

──そうした取り組みの成果はどのような形で表れていますか?

笹島氏:コロナ禍を踏まえ、予防的な引当により与信関係費用(信用コスト)の増加が最終利益を圧迫していますが、コンサルティング機能の強化および構造改革に積極的に取り組んだことにより、本業の収益力を示すコア業務純益は順調に伸びています。構造改革では、中計期間中に現行店舗の2割程度の見直しを予定していましたが、結果的には6割強の見直しを当初の計画より1年前倒しで実現できています。

画像
コア業務純益が堅調に推移している
(出典:めぶきフィナンシャルグループ)

──そのほかにコロナ禍は経営にどのようなインパクトをもたらしましたか?

笹島氏:コロナ禍は社会全体にとって確かに不幸な出来事でしたが、この厄災を「変えられない事実」であると認識して切り替えて考えると、IT化・デジタル化を進める上での追い風にもなりました。

 もともと経営統合前から常陽銀行ではデジタル化を積極的に進めていたのですが、コロナ禍によって非接触・非対面での接客や商談が求められるようになりました。そこで当初の予定より前倒しして、デジタルやオンラインの仕組みの導入を進めました。平時であれば不平不満が出たかもしれませんが、一気に進めることができました。

 ただし、お客さまとのすべての接点をオンライン化することが必ずしもいいことだとは考えていません。私たちはネット専業銀行ではありませんから、むしろ最大の強みはリアルでの顧客接点にあります。

 これまでは必ずしもリアルでなくてもいい場面でも対面でお客さまと接していました。つまり商談の最初、それからクロージングはリアルで会った方がいいと思う一方、途中の打ち合わせはWebでもいいじゃないかと。それらをオンライン化して業務の無駄を省くことで、もともと持っていたリアルの強みをより生かせるようになるのではと考えています。

地域経済活性化のためのコンサルティング活動とそれを支えるIT

──国では現在「地方創生」と銘打って地方活性化の政策を打ち出していますが、めぶきFGは地域に根差した金融機関として現在どのように地場産業の支援に当たっているのでしょうか。

笹島氏:「地方」という漠然とした言葉には、実体はありません。私たちが日々目にしている実体とは、地域で仕事をする方々の暮らしそのものなのです。そうした方々の暮らしをよくしていくためには、融資を担うだけでなく地域の企業の業績をよくして、さらに10~20年先の環境変化まで視野に入れながらともに経営課題を解決していく必要があります。

 こうして既存のお取引さまの経営を支援していくと同時に、これからの地域経済の成長をけん引する新たな産業も創出しなくてはなりません。茨城県にはつくばや日立などを中心に、産業技術総合研究所(産総研)や、物質・材料研究機構(物材研)、農林水産政策研究所(農水研)、筑波大学といった国の研究機関や大学がいくつも存在します。

 各研究所や大学には新たな発想をお持ちの研究者の方々も多くいらっしゃるのですが、そうした方々は商売に注力しきれないところがあります。そこで私たちが商売のお手伝いをするとともに、グループ内の投資会社を通じて資金の提供も行っています。

 また、商談会の開催により、新たなビジネスや販路の開拓に積極的に取り組んでいます。コロナ禍の中でも「ものづくり企業フォーラム」や「めぶきビジネスアワード」をオンラインで主催し、融資だけでは解決できない経営課題の解決をお手伝いしています。

──地域の企業に対するコンサルティングが非常に好調だとお聞きしています。

笹島氏:これまでもコンサルティングは行っていたのですが、その活動を行う専門人材がいろいろな部署に所属している状況でした。コロナ禍でニーズが急増したこともあり、2020年6月に行内のコンサルティング人材を集めて「コンサルティング営業部」を発足しました。現在ではメンバーが100人を超え、コンサルティングに特化した活動を機動的に展開し、業績に大きく貢献しています。

 「今は機動力が大事だ」と捉えており、1人の責任者の下で、とにかく徹底して「行動すること」を求めています。コンサルティング領域は競合も多いのですが、我々のように地域の企業1社ごとの状況や業務内容を理解しているコンサルティング会社はいないのではないでしょうか。

 システムのことがわかっているコンサルタントはいますが、我々は相手の業務内容に対する理解や信頼関係を構築しています。クライアントのことを知るための時間もコンサルティングに含まれるので“高くつく”のかもしれません(笑)。仕事の関連性と、インプットの量で勝てるので、我々に頼んだ方がトータルは安いですし、思ったものができるはずですとお伝えしています。

 また、社内の取り組みとして、コンサルティングを担う行員の活動を可視化する仕組みも導入しました。行員にはモバイルPCとスマートフォンを支給して、専用のスマートフォンアプリを通じて顧客の訪問履歴や商談内容などをその場ですぐ登録できるようにしています。各行員の活動状況が正確に可視化できますし、入力されたデータにテキストマイニングを施すことで状況を可視化・分析して、本部から次の指示を出すことでコンサルティングの高度化につなげています。

 データ分析により「活動レベルの高い人の活動量と成績に極めて高い相関がある」こともわかり、KPIもより洗練されていきます。

 さらに、データによって業績の進捗を定量的に可視化しているので、「何でできないんだ」と叱責したり、無駄な進捗確認に時間を浪費したりすることなく、課題解決のための議論に集中できるようになりました。「その内容は顧客関係管理(CRM)で把握できているから報告は要らない」という状態を作っています。


【次ページ】顧客の困りごとを丸ごと引き受ける「地域のコンシェルジェ」として

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