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7月17日に四半期決算を発表したTSMC。6月期の売上高は約4兆7,000億円、通年成長見通しは「30%増」に上方修正し、最高益を更新した。米国の関税発動期限が迫る中、TSMC株の推定公正価値は306ドルまで引き上げられたが、それでも「割安」だという。市場が見落としている“本当の強さ”とは何か。
※本記事は、米国モーニングスター社の記事「
Taiwan Semi Earnings: Firm Shrugs off Tariff Blows Amid Insatiable AI Demand」をもとにFinTech Journal編集部が翻訳・再構成したものです。米国モーニングスターの独占的な権利に属しており、私的利用かつ非営利目的に限定します。また、米国モーニングスター及びその関連会社は、本翻訳記事の利用に関して一切の責任を負いません。
売上・最終利益ともに「過去最高」絶好調のTSMC
TSMC(台湾積体電路製造)は、7月17日に四半期決算を発表し、通年の売上高成長見通しを米ドルベースで従来の20%台半ばから30%増に引き上げた。
6月期の売上高は9,340億台湾ドル(301億米ドル、約4兆7,000億円)で、前四半期比11%増となった。粗利益率は前四半期から17ベーシスポイント低下し、58.6%となった。
TSMCがここに来て大躍進をしているワケ
AI需要の高まりと成熟プロセスノードの稼働率向上が、TSMCの通年ガイダンス引き上げの要因となっている。データセンターの顧客はトランプ関税の影響がある中でも投資を継続しており、今後のノード移行にも意欲を示している。
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TSMC経営陣のコメントは、2026年の設備投資が2025年の380億~420億ドルをやや上回るだろうという私たちの見方を裏付けるものである。経営陣は、通年の見通しおよび設備投資予算には関税やその他の地政学的リスクに対する保守的な姿勢が織り込まれているが、需要は引き続き堅調だと述べている。
- 米金融調査会社モーニングスターでは、TSMCが長期的に粗利益率を50%台後半に到達させるという見方を強めている。2nmノードが3nmよりも高い上乗せ価格で設定されていること、また設備の減価償却が終わることで3nm~7nmノードの訴求力をコスト重視の顧客層にまで広げていることがその背景にある。
現在の株価は“割安”なのか? 2つの要因
ガイダンスの改善と長期見通しを踏まえ、TSMCの推定公正価値を262ドルから306ドルに引き上げた。TSMC株は割安と考えられるが、その要因として、市場が関税の影響を過大評価していること、そしてAI投資の持続性を過小評価していることが挙げられる。
- AIの貢献拡大に加え、産業機器市場やスマートホーム市場の見通し改善を受け、2025年~2029年の売上高予想を5%引き上げ、1株当たり利益予想を9%引き上げとした。
TSMCの「今後」を左右する注目動向
米国は8月1日の関税発動期限までに台湾との貿易協定を発表する可能性があるが、TSMCに対する影響は限定的なものになるかもしれない。これまでに締結された貿易協定から判断すると、関税が想定される20%前後からさらに拡大した場合でも、同社には米国顧客に対応可能な4nmの生産能力が十分にある。
TSMCの2026年設備投資は、AI需要対応に重点を置くと見られる。同社のサプライヤーであるASMLの2026年見通しは慎重だが、これはTSMCがインテルやサムスンを上回る設備投資を行っている可能性を示唆しており、両社が追いつく可能性は一段と低くなっていると考えられる。
2025年7月時点のTSMC株の評価
米モーニングスターの主要指標によるTSMCの評価
推定公正価値:306ドル
スター評価(注1):★★★★
エコノミックモート評価(注2):Wide
不確実性評価(注3):Medium
注1:スター評価は、銘柄の過小評価または過大評価に関する見解を示す。5つ星の銘柄は過小評価、3つ星の銘柄は公正評価、1つ星の銘柄は過大評価されている。
注2:エコノミックモート評価とは、米モーニングスターが企業の競争力の強さと持続可能性について「Wide(広い)」「Narrow(狭い)」「None(なし)」という3段階で評価しているものである。なお、「Wide」のほうが高い競争優位性を示す。
ウォーレン・バフェット氏が重視する概念としても知られる。
注3:不確実性評価は、企業の将来のキャッシュフローの予測可能性を表し、その企業の推定公正価値における確実性のレベルを表す。Low(低い)/Medium(中程度)/High(高い)/Very High(非常に高い)/Extreme(極端に高い)の5段階で評価する。
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