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- 2022/06/08 掲載
グーグルも「スキル重視」採用にシフト、米国で「学歴は必須ではない」が進む残酷理由
学歴と収入は必ずしも比例しない
労働市場で求められるスキルを持つ即戦力人材を育成できていないとして、国内外で大学の存在意義を見直す動きが広がっている。学費の高騰が著しい米国では、その動きが先鋭化し、高等教育を取り巻く環境や大手企業の大卒に対する認識が大きく変わりつつある。米大手メディアがこの問題を頻繁に取り上げていることも変化を加速する要因となっているようだ。
たとえば、CNBCでは2022年5月に「大卒がアメリカン・ドリーム実現の唯一の手段ではなくなった」と題する記事を公開、この主張を裏付けるさまざまなデータを紹介している。
その1つにジョージタウン大学が2021年10月に発表した調査レポートがある。
同レポートによると、米国の生涯賃金を学歴別に見ると、博士号取得者の中央値が400万ドル(約5億1,451万円)、修士号取得者が320万ドル(約4億1,160万円)、4年制大学卒業者が280万ドル(約3億6,000万円)、高校卒業者が160万ドル(約2億円)と学歴が高くなるほど生涯賃金の中央値も高くなることが分かった。
一見、アメリカン・ドリーム実現には学歴が必須条件であることを示す調査結果に見えるが、その数字を注意深く見ると、そうではないことが見えてくる。
たとえば、高校卒業者の生涯賃金中央値は、160万ドルであるが、分布上位25%は、220万ドル以上であることが分かっている。これは、4年制大学卒業者の下位25%の190万ドルを上回る数値だ。また、高校卒業者の16%が4年制大学卒業者の中央値220万ドルを超えたという。
4年制大学卒業者と2年制大学卒業者(準学士)を比較しても同様の傾向が観察される。2年制大学卒業者の生涯賃金中央値は、200万ドルであるが、上位25%は290万ドル以上であり、4年制大学卒業者の中央値を上回る水準となるのだ。
こうした分析結果を踏まえ、同調査の担当者らは、学歴が必ずしも高い収入につながる訳ではないと指摘。また、賃金水準は、専攻によって大きく変わってくるとも述べている。
米大学の学費は住宅購入費と同じ?
学歴が必ずしも高い収入につながる訳ではないとの認識の広がりや米国大学の学費の高騰などが影響し、大学進学を見直す人が増えつつあるともいわれている。The Harris Pollが2021年12月に米国で実施した比較的新しい意識調査では、高等教育の学費高騰によって、高校卒業後の進学計画に影響が出たとの回答割合は、米国成人の51%と半数以上に上ったことが明らかになった。
世界大学ランキングで知られるQSは、非営利団体College Boardが算出した米国大学の平均的な費用を紹介しており、その高騰具合を知るのに役立つはずだ。
算出されているのは、公立2年制大学、州立4年制大学、私立4年制大学の費用である。
公立2年制大学の平均的な年間学費は3,660ドル(約47万円)、これに寮費・食事代8,660ドル(約111万円)が加わり、年間総額は1万2,320ドル(約158万円)となる。2年間通った合計は、2万4,640ドル(約316万円)。
州立大学は、州内の学生と州外の学生とで学費が異なる。
州内の学生が支払う州立大学の平均学費は、年間1万230ドル(約131万円)、生活費は1万1,140ドル(約143万円)で、総額は2万1,370ドル(約274万円)。4年間の合計は、8万5,480(約1,100万円)となる。
一方、州外の学生は、生活費は同じだが、学費が年間2万6,290ドル(約338万円)と州内の学生に比べ2.5倍ほど高い学費を支払うことが求められる。4年間の合計は、14万9,720ドル(約1,925万円)。
これは価格中央値が14万9,900ドルといわれているニューヨーク・ロチェスターの住宅とほぼ同じ水準である。
上記比較で最も大学費用が高いのは、私立4年制大学だ。年間学費は3万5,830ドル(約460万円)、これに生活費1万2,680ドル(163万円)が加わり、計4万8,510ドル(約623万円)となる。4年間では、19万4,040ドル(約2,495万円)に膨れ上がる。
ただし、米国の学生の多くは何らかの学費サポートを受けており、実際支払っている費用は、上記より低くなるという。
【次ページ】グーグルが示すスキル重視シフト
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