- 2026/02/23 掲載
セールスフォースもアドビも撃沈…“SaaSの死”で人間に残された「たった3つの役割」
連載:野口悠紀雄のデジタルイノベーションの本質
1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを歴任。一橋大学名誉教授。
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株価暴落…AIで「死にゆくSaaS」
米アンソロピックが開発した最新のAIが、幅広い分野で業務の自動化を急速に進めている。これを受けて、「従来の業務ソフトは生成AIに代替されるのではないか」という見方が市場で広がり、米国のSaaS関連企業の株価が下落した。これが、「SaaSの死」と呼ばれる現象だ。そもそもSaaS(Software as a Service)とは、インターネットを通じて業務ソフトを提供するサービス形態だ。データ管理、会計処理、文書作成、画像編集などの機能を、定額課金で提供する。企業が独自に業務システムを構築する場合に比べて、低コストで、かつ短期間で導入できることから、高い成長力を持つビジネスモデルと考えられてきた。
SaaS提供企業の代表例としては、CRM(顧客関係管理)を主力とする「セールスフォース」、中小企業向け会計ソフトを提供する「インテュイット」、デザイン分野の「アドビ」、業務管理を担う「サービスナウ」などがある。また、業務ソフトの売上比率が高いことから、マイクロソフトも広義のSaaS企業として捉えられることがある。
SaaSの特徴は、会計処理など特定の業務をソフトウェアとして提供し、人間がそれを操作する点にあった。そこで前提とされてきたのは、人間が入力作業を担当し、ソフトウェアがそれを支援するという役割分担であった。
人間による“ソフト操作”を覆した「バイブコーディング」
ところが最近のAIは、専門のプログラマーに匹敵する能力を持つようになった。このため、AIの助けを借りれば、プログラミング知識を持たない人でも、自然言語によってPCに指示を出せる。この手法は、「バイブコーディング」(vibe coding)と呼ばれる。このような変化の入口を開いたのは、OpenAIが公開したChatGPTであったと言える。
ChatGPTは、従来の業務ソフトが採用してきた「画面操作」という前提を覆し、自然言語による対話だけで文書作成、分析、企画立案といった業務を進められる環境を広く普及させた。その結果、契約書の作成、財務モデルの構築、プレゼンテーション資料の作成など、これまで「専門職の仕事」とされてきた業務を、AIが一貫して担えるようになってきた。
ここで起きているのは、単なる「作業の自動化」ではない。重要なのは、人間とAIの接点(インターフェース)が変化し、その結果、仕事の分担が変わりつつあることだ。
具体的に言えば、「人間がソフトを操作する」というこれまでの構図が崩れ、AIが主体的に仕事を進めるようになった。そして、「人間は目的設定や最終判断を担う」という役割に移行しつつあるのだ。 【次ページ】Claude Cowork・Claude Opusが与えた「特大インパクト」
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