- 2026/02/23 掲載
セールスフォースもアドビも撃沈…“SaaSの死”で人間に残された「たった3つの役割」(2/2)
Claude Cowork・Claude Opusが与えた「特大インパクト」
コンピュータと人間のインターフェースの新しい形を具現化したのが、アンソロピック社が開発した「Claude Cowork」だ。同社は、元OpenAI幹部のダリオ・アモデイ氏らが2021年に創設した新興企業。アマゾン、グーグル、マイクロソフト、エヌビディアなどから巨額の出資を受けている。Coworkは、プログラマーではない事務系の職種向けに開発されたAIであり、話し言葉での指示に基づいて、資料作成やデータ分析などの作業を行う。従来のAIが利用する情報が主としてネット上の情報であったのに対して、「Cowork」はパソコン内のファイルをも探索し、必要な情報を整理し、新たなデータを書き込み、経費精算レポートなどを自動的に作成する。
これによって、法務、財務、マーケティングといった専門的な業務もAIが担えるようになり、人間はより高度な判断や創造的な業務に集中できるようになる。
ここでは、特定の会計ソフトや業務アプリを人間が「操作する」必要はない。人は「何をしたいか」を伝えるだけでよく、仕事の手順設計や実行はAIが引き受ける。
この仕組みは、これまで提供されてきたSaaSの一部機能を代替する可能性があるが、それ以上の意味を持つ。Coworkは、人間の代わりに作業を自律的に遂行するAIなのだ。
注目すべきは、指示された作業を分解し、計画的に実行する「エージェント能力」を備えている点だ。こうしたAIは一般に「AIエージェント」と呼ばれるが、Coworkは実用段階に到達したAIエージェントの実例なのである。
アンソロピックは、AIを単なるツールではなく、人間と共に働く「同僚」として位置づけている。このような位置づけこそが、これからの社会を考える際の最も基本的な視点となるだろう。
アモデイ氏は、将来は、AIがソフト開発のコードの大半を生成できるようになり、初級レベルのホワイトカラーの雇用の半分がAIによって代替される可能性があると予測している。
またアンソロピックが発表した最新AIモデル「Claude Opus4.6」は、企業の財務情報を分析し、表計算ソフトやプレゼンテーション資料を自動生成する能力を持つ。
投資銀行のアナリストが数週間かけて行ってきた作業を、AIが短時間で代行できるとされ、契約書レビューなども専門家並みにこなすと言われる。楽天グループは、Claudeを用いて膨大なコード整理を短時間で完了させたと報じられている。
SaaSの死が「本当に意味すること」とは
こうした変化を背景に、SaaS企業の株価が下落している。この現象が「SaaSの死」と呼ばれているものだ。しかし、死んでいるのはSaaSそのものというより、「人がソフトを操作する」という前提に立った業務設計だと考えるべきだろう。今後、人間の仕事は、以下の領域へと重心を移していくことになるだろう。
- 何を目的とするかを定義する
- AIが出した結果を評価・修正する
- 倫理や責任を引き受ける
日本は「まず使ってみる」の方針で良いのか?
米国では、以上で見た仕事観の転換が、現実のものとなりつつある。他方、日本では、政府が「AI基本計画」を策定し、「まずはAIを使ってみる」という方針を打ち出した。これは、方向性として否定すべきものではない。ただ、「どんな使い方でも良い」というわけではあるまい。本稿で見たように、人間とAIの役割分担が大きく変わろうとしていることを見過ごしてはならない。
そうした認識なしに、「とにかく使えば、これまでよりは事務能率が上がる」という程度の使い方にとどまれば、日本と米国の差は、開くばかりだ。
問題は、CoworkやClaude Opus、そしてChatGPT(あるいは、それらの進化系)が活躍する時代において、日本の企業や組織がどのように仕事を再設計できるかである。その設計思想を自ら持てるかどうかが、AIにおける今後の競争力を左右することになるだろう。
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