- 2026/04/22 掲載
結局地域金融はどう変わる? 企業価値担保権・DX・再編の実装論(3/3)
地銀再編は本質的解決になるのか──規模の利益と戦略の転換
──地銀再編というトピックについてお考えをお聞かせください。栗田氏:地域金融機関の経営を取り巻く環境は厳しいものがあります。地域の人口減少や少子高齢化は今後も続くと想定されますし、企業の数自体が減少しており、社会・経済環境は容易に好転しないと考えた方が良いと思います。自分たちの地盤のパイが徐々に小さくなっていく中で、社会・経済の機能を維持していかなければいけないわけです。その問題を克服する1つの手段として金融機関の規模を大きくするというのは、あり得る選択肢だと思います。
そもそも銀行業というものは装置産業であり、規模の利益が働くと言われていますが、昨今、サイバーセキュリティやマネロン、金融犯罪対策などへの対応を余儀なくされています。こうした対応には、金融機関の規模の大小に関わらず、相当規模の投資が避けて通れません。しかも、そのような投資は短期的には収益を生むものではありません。こうした負担も考えれば、規模を拡大することにより経営基盤を確保するという考え方は十分にあり得ます。
大野氏:金融庁も今回の地域金融力強化プランの中で、この人口減という大きなうずの中で、戦略そのものをシフトしようとしているようにも見受けられます。
これまでならば業態内での統合や合併が推進されてきたのでしょうが、今回の枠組みを解釈するならば、多業態を巻き込んだ垂直統合も可能になるというのが我々の見立てです。
すると、地銀の傘下に信金が付いたり、信金の傘下に地銀が付くというケースも今後は想定されることでしょう。このように、地域金融の枠組みにおいて発想の転換が生まれつつあります。根拠法としても合併転換法が存在しますので、業態転換を踏まえたさまざまな組み合わせが検討される可能性があります。
栗田氏:業態を超えた経営統合については、難しい面もありますが、地域ごとに社会・経済環境の変化を見渡して、「こんな経営統合を行えば、地域の将来にこういう風に役立てるのではないか」というビジョンを描くことが重要です。それは、地域金融機関がそれぞれ検討、検証するべき話ですが、柔軟な発想で取り組む必要があると思います。
地域金融の未来──課題分析と自律的なガバナンスへの転換
──地域金融に対して今後の展望をお教えください。大野氏:地域金融力強化プランでの金融庁の考え方を着実に遂行するうえでは、営業基盤としている地域の課題分析を徹底的に実施すべきです。これにより、職員1人ひとりが地元自治体を取り巻く真の課題を認識することが可能となり、対処方針策定の深度を増すことに繋がります。すなわち、これまでのような「感覚的な提案」ではなく「仮説に基づいた実効性の高い提案」が可能となります。こうした取り組みは、職員のモチベーションマネジメントの面でも有効ではないでしょうか。
また、DXの面では、金融機関自身が地域における「デジタル化先進事例」に該当していることでしょう。金融機関が自らのリソースを外部向けに提供することで、プラクティスを有効活用可能です。例えば紀陽銀行ではグループにIT子会社を抱え、自治体向けの業務サービスも提供しています。FISCの安全対策基準に対応したセンター設備を有することで、地域に対する安心安全なサービス提供の基盤機能をかなえることが可能ですし、DX面での地域貢献そのものともいえます。
栗田氏:地域金融の未来を語るうえでは、単純に明るい見通しを描くことが難しい実態がありますし、みなさん大きな悩みを抱えていることでしょう。
地域金融機関の存在意義は、一言で言えば、地域とともにあるということです。地域金融機関は、地域企業や地域経済をいかに発展させるか、地域社会をいかに良くしていくかということを常に考えるべき存在です。そのために、DXなどテクノロジー面での取り組みが必要になることもあるし、再編や広域連携といった組織的な取り組みが必要になることもあります。しかし、それらはあくまで手段であって、目的ではありません。地域を支える力としての地域金融の本質は、地域の将来を一緒に考える存在であり続けられるかというところにあります。その点が明確になっていれば、どのような課題にも解決策は見いだせるのではないかと思っています。
また、地域金融がその役割を果たす上でガバナンスは非常に重要な要素になります。地域金融機関に期待される役割が益々大きくなり、業務が複雑化、広範化していることに鑑みれば、金融機関としてのさまざまな活動を的確に把握・評価し、また、サイバー攻撃といった思わぬ不測の事態に対処できるようにするためにも、ガバナンスということが更に重要になってきます。地域の未来のためにも、地域金融機関には自らの足場をしっかりと固めて頂きたいと思います。
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