- 2026/03/30 掲載
SMBCグループが挑む生成AI全社展開、「500億円投資枠」と100近いプロジェクトの全貌
チャレンジを促す500億円のAI投資枠
多くの日本企業において、システム投資の意思決定は一筋縄ではいかない。年に一度の案件会議でROI(投資収益率)を確り精査し、かつどうしても優先されるのはレガシーシステムの更改や法令対応になりがち──そういった構造の中では、効果が見えにくい生成AIのプロジェクトはどうしても後回しになってしまう。SMBCはこの壁を乗り越えるために、あえて異例の手を打った。「AI利活用はROIを厳密に出せないプロジェクトも多い。だからこそ、チャレンジングなものとして取り組める枠を設けた」(松永氏)というのが、生成AI投資枠500億円の設立経緯だ。通常の投資審査とは切り離し、アジャイル(俊敏)に動けるこの枠が、現在のAI活用加速の土台となっている。
もう1つの仕組みが「CDIOミーティング」と呼ばれる会議体だ。2017年から始まり、累計70回以上を数えるこの会議には、社長・頭取をはじめ関連CxOが全員出席する。グループのどの部署の誰でも案件を持ち込め、その場で投資予算の承認まで判断される。事前根回しなしのフラットな場で、「社長にその場で厳しい指摘を受けることもある」(松永氏)というほどの緊張感が、逆に組織のチャレンジ文化を育ててきた。
では、実際のAI活用の取り組みを見てみると、まず目を引くのが、全グループ員が日常的に使える社内汎用チャットツール「SMBC-GAI」の浸透ぶりだ。
1日7~8万回──社内AIが「当たり前のツール」になるまで
SMBC-GAIは稼働から3年弱が経ち、今ではトランザクション(利用件数)が、1日7~8万回まで伸びた。文章作成や翻訳にとどまらず、プログラミングやアイデア出しにも使われるようになっている。日本国内だけでなく、アジア地域のグループ会社にも展開済みだ。しかし、ツールを作れば自然に使われるようになるわけではない。2025年夏の大型アップデートでは、社内規定や通達などの膨大なデータを読み込ませ、検索から回答生成まで一気通貫で対応できる体制を整えた。「データ整備とガバナンスの強化に、かなりのリソースをかけている」(松永氏)のが実態だ。
同じ文脈で注目されたのが、中島社長を模した「AICEO」の取り組みだ。経営会議やイベントでの発言データを学習させ、社長目線の情報や気づきを従業員に提供するチャットボットとして実験的に開発された。
ただし、"社長らしさ"の再現には人手によるプロンプト(AIへの指示文)の細かな調整が欠かせず、また使用頻度が時間とともに落ちやすいという共通課題も浮き彫りになった。プッシュ通知の工夫やイベント連動メッセージなど、「地味だが重要な施策」(松永氏)を積み重ねながら継続的な改善を続けている。 【次ページ】「見える化だけ」から始まった、CFO支援の5年間
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