- 2026/03/31 掲載
SMBCグループに聞く金融機関のAI導入、なぜ「現場の不安」が最大の壁となるのか?
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金融機関が直面するAI導入の「組織的ギャップ」
金融機関におけるAI導入の課題は、技術面よりもむしろ組織運営の側面にある。三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)でデジタル戦略部長を務める松永圭司氏は、この問題の本質について次のように指摘する。「銀行業務の大部分は、新しいものを作るチェンジ・ザ・バンクではなく、日常業務を正確に遂行するラン・ザ・バンクなのです」(松永氏)
金融機関は社会の公共インフラとして、決済やファイナンスを確実に回さなければならない。そのため組織は、チェック機能、レビュー体制、法令遵守といった「間違いのない運営」に最適化されている。
この組織構造が、AI導入時に大きな壁となる。たとえば、貿易書類の確認業務にAIを導入する場合を考えてみよう。従来は「チェッカー」「アプルーバー」「最終承認者」の三人体制で運営していた業務を、AIで自動化しようとすると、「規定上、人による三人体制が必要だが、これを減らしていいのか」という問題が生じる。
「結局、部を超えて、管理部門のルール変更から始めなければならない。組織を超えた取り組みが必要になります」(松永氏)
「AI導入後に作業時間が増加」という皮肉な現実
組織ルールをクリアしてAI導入を開始しても、さらに深刻な問題が待ち受けている。松永氏が経験した実例は、多くの企業が陥りがちな落とし穴を浮き彫りにする。「リスクを取ってAI導入を進めたものの、三ヶ月後に確認すると、むしろ作業時間が増えていました。AIがチェックした後に、人が再度確認していたのです」(松永氏)
現場担当者の心理は理解できる。長年にわたって「ミスのない業務」を誇りとして取り組んできた人たちにとって、AIの判断を盲信するのは不安が大きい。「本当に大丈夫だろうか」という思いから、結果的にダブルチェック体制となってしまう。
この現象は、業務を守る人としての正しい考え方の現れでもある。しかし、AI導入の効果を実現するには、従業員の不安を段階的に払拭していく取り組みが不可欠だ。
「半年間運用して、フォールスネガティブやフォールスポジティブのデータを蓄積し、この程度の精度なら安心して任せられるという閾値を見つけていく必要があります」(松永氏)
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