- 2026/04/22 掲載
結局地域金融はどう変わる? 企業価値担保権・DX・再編の実装論
前編はこちら(この記事は後編です)
「企業価値担保権」将来性に賭ける覚悟を問う制度
大野博堂氏(以下、大野氏):コロナ禍においては、国主導で多額の無利子融資の仕組みが講じられ、ある意味、カネを企業に渡すという単純な役割が金融機関に期待されたという時代が長く続きました。
マネージングディレクター
金融政策コンサルティングユニット長
大野 博堂氏
その傍ら、昨今の地銀、信金における貸出の多くが不動産絡みの貸出に傾注している実態があります。日本銀行が公表する「国内銀行の不動産業向け貸出残高」の推移をみると、一貫して増加傾向を辿っており、2022年時点では総貸出に占める不動産業向けウェイトは8割にも上っています。この数値には個人による貸家業向け貸出が含まれていますが、その他、個人の住宅ローン貸出も増加傾向にあります。一般的な事業性融資と異なり、待っていれば顧客から声がかかって、特段の評価をすることなく融資の残高を積み上げることができた。こういう時代が長く続きすぎたように感じています。
一方で、本来の金融機関の役割というのは、「企業の目利き役」にあるわけです。この目利き能力を発揮する上で、本来業務にもう一度立ち返ることを目的に、金融庁は事業性融資推進プロジェクトチームを立ち上げたものと理解しています。
これは、融資先企業が事業遂行に際して一体何を強みとして、いかなるIP(知的財産権)ないしは特異な技術を有しているのか。これをしっかりと定量的かつ定性的な面にも目配せをしながら認識、評価をするという所作そのものです。こうした目利き力そのものをスキームとして成立させようとしているのが企業価値担保権だと思っています。
ですが、実践に際しては職員のリテラシーに依存する部分が多分に出てきますので、職員教育をしっかり施さない限り、簡単に対応できるものではありません。
そもそもなぜ企業価値担保権は重要か
栗田照久氏(以下、栗田氏):これから制度が始まるのですけれども、企業価値担保権は企業の財産を全部担保に取る、つまり、将来キャッシュフローも担保に取るということです。しかし、これは逆説的な言い方をすれば、無担保と同じだと思うのです。要するに、通常の担保権のように、個別の物件を売却して資金の回収を図るという発想にはまったくなってないのです。基本的に、資金を回収しようとする際には、企業の全部の事業を売却するという形を想定しているわけで、その意味では、無担保での取り扱いと実効的には変わらないともいえます。
企業価値担保権の何が大事かというと、担保権を付けることによってほかの金融機関を排除することが可能になる点だと考えています。金融機関は企業価値担保権を付けた企業に対して、常に経営状況を確認しながら伴走型支援を行っていくことになります。他方、後順位の金融機関は借り手とのコミュニケーションも希薄となり、それこそ“裸で貸す”ことになります。金融機関は企業の面倒を見続ける代わりに、その企業が成長したら取引も拡大していくという性格の担保権なのだという理解が必要です。
つまり、自分たちの目利き力を生かして、この企業は将来性があると信じるところに企業価値担保権を付ければ良いのではないでしょうか。
────金融庁としても、地域金融にそういう目利き力を持ってほしいし、それぐらいの覚悟を持って投資しなさいというようなメッセージを感じるのですが。
栗田氏:そのような理解です。
大野氏:新しい制度ですので、立ち上げ当初はそれほど急激に件数が増えるものではないと思います。しかしながら、一層地域の人口が減少する中で、単純に外形的な基準をよりどころにして評価を行う上での限界が立ちはだかるものとみています。したがって、この仕組みの優位性に着目した金融機関から徐々に取り組みが進んでいくものとみています。
すると、それを前提とした人材育成が欠かせなくなりますので、より優位な人材をどう抱え、育成していくのかが課題となります。とりわけ昨今は店舗数を減らすとともに集金業務を見送り、オンラインでの手続きに顧客を誘導する金融機関が増加しています。その結果、ネット銀行との差別化を図ることすら困難になり、顧客接点が損なわれつつあります。今後は、顧客接点をいかに継続的に確保し続けることができるかが問われることでしょう。
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