- 2026/04/10 掲載
アジアのフィンテックで何が“止まって”いる? 規制・決済・越境の「理想と現実」
各国Fintech協会が語る「理想と現実」
渥美坂井法律事務所・外国法共同事業 プロトタイプ政策研究所・シニアパートナー弁護士
慶應義塾大学理工学部数理科学科卒業。同大学院理工学研究科在学中に旧司法試験合格。
森・濱田松本法律事務所で約9年東京、北京オフィスで勤務し、国際紛争・倒産、知的財産、海外投資等を扱った。
現事務所に参画後は、金融、医療、不動産、MaaS、ITなどの業界におけるビジネスへのアドバイス、新たな制度構築などについて活動を行っている。東京都・大阪府市・福岡県の国際金融都市に関するアドバイザーや、自主規制団体である一般社団法人日本金融サービス仲介業協会代表理事副会長、東京大学法学部非常勤講師など、産官学の様々な役職を務める。 現所属先ではプロトタイプ政策研究所を立ち上げて所長を務め、またスマートガバナンス株式会社代表取締役共同創業者を務める。FT Innovative Lawyers Asia-Pacific Awards 2023 Innovation in Adjacent Services (Firm)や、日本のルールメーカー30人(Forbes JAPAN 2022年8月号、2022)等の受賞歴がある。
日本の規制は「進んでいる」問題は民間にある?
議論の冒頭、各国が自国フィンテックの最大の課題を一言で述べる場面で、日本側の参加者からは意外な自己診断が示された。「日本の規制環境は、ステーブルコインを含めて非常に先進的だ。問題はむしろ民間側にある」という趣旨の発言である。
銀行をはじめとする既存プレイヤーのハードウェア更新の遅れ、ユーザー体験の設計不足、そして「現状維持バイアス」が、規制以上にイノベーションの障壁になっているとの認識だ。
この見解は、「規制がボトルネック」という通念とは異なる。実際、日本はステーブルコインに関する法整備でアジアの先頭を走っており、金融庁のサンドボックスと内閣府の規制のサンドボックスという二重の制度を備えている。
にもかかわらず、事業者からの申請が十分に集まらないのは、審査プロセスに半年から1年を要するケースがあること、そして何より民間側のスピード感が規制側の枠組みに追いついていないことが背景にある。
一方、他国の参加者からは、日本とは異なる構図が語られた。台湾では規制当局と業界の間の「信頼構築」が段階的に進められているものの、省庁横断の承認プロセスが市場投入のスピードを制約している。 韓国では、金融委員会が多数の革新的金融サービスを承認してきた一方で、技術の迅速な商用化と市場の安定性を十分に立証することとの間のバランスにも注目している。
サンドボックスの「使われ方」が各国で異なる
台湾のサンドボックスは「高水準だが利用は限定的」と評された。その理由は明快で、サンドボックスに参加するということは、自社の事業が「現行法上は違法」であることを公に認めることを意味するからだ。そのため多くの事業者は、既存金融機関と組んでPOC(概念実証)を行うか、当局に事業モデルの合法性について正式な判断を求めるという、より現実的なルートを選んでいる。韓国の場合、これまでサンドボックスを通じて承認された中小・小規模企業の革新的なサービスは内容も多様で、その件数も多い一方、事業機会の観点から懸念も提起された。すなわち、サンドボックス・プログラムに参加していなかった企業が、本承認後にそのモデルを模倣するケースである。初期のサンドボックス承認に貢献した小規模事業者に対して、事業を主導する機会が十分に与えられているのかという点も、あわせて検討すべき課題である。
日本の二重サンドボックス制度(金融庁と内閣府)については、制度自体は整備されているが、手続きの長さが利用を抑制している点が複数の参加者から言及された。
ドンピョ・ホン(Dongpyo Hong)氏
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