• 2026/04/10 掲載

アジアのフィンテックで何が“止まって”いる? 規制・決済・越境の「理想と現実」(2/4)

各国Fintech協会が語る「理想と現実」

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マレーシアのデジタル銀行ライセンス、日本企業が先陣を切る

 マレーシアからは、中央銀行が戦略的に発行した5つのデジタル銀行ライセンスの最新状況が共有された。注目すべきは、イスラミック・デジタル銀行の分野で最初に営業を開始したのが、日本のイオングループ傘下のイオン銀行(Aeon Bank)であったという点だ。

 イオンはマレーシア国内にモール、クレジット事業、中小企業向け融資の基盤を持ち、デジタル銀行によってバリューチェーン全体を完結させる戦略を採っている。

 ただし、現段階でのユーザー層は中間層・上位層が中心であり、真の金融包摂にはまだ課題が残るとの率直な見解も示された。

 日本企業にとっては、マレーシアが東南アジア展開のローンチパッドとして現実的な選択肢になりつつあるという情報は、事業戦略上の重要なインプットだろう。

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AFA(マレーシアフィンテック協会) 副会長
ベー・ウェイ・チアン(Beh Wei Chean/Wilson Beh)氏

越境B2B決済、中小企業が直面する「見えない壁」

 越境決済については、とりわけ中小企業(SME)が直面するB2B決済の課題が具体的に語られた。アジアの貿易赤字国向けに製品を輸出する際、取引先が香港やシンガポールの第三者を経由して支払いを行うため、自社の銀行口座への直接入金が困難になっている実態が報告された。

 背景には、SWIFTシステムが現代のB2B資金フローの速度に対応しきれていないこと、そして「実際のビジネストレーダー」に対する規制上の定義が不明確であることがある。この問題は日本の中小企業の海外展開にも通底し、ASEAN諸国との決済インフラの接続強化は急務と言える。

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モンゴルフィンテック協会 CEO(最高経営責任者)
ビンバー・ビャンバスレン・ミャグマルツェレン
(Bimbaa Byambasuren Myagmartsseren)氏

「ステーブルコインとプログラマブルマネー」日本への問い

 議論の後半では、クロスボーダーフィンテックの将来像として、プログラマブルマネーとスマートコントラクト(契約の自動化)の組み合わせが有望視された。特にサプライチェーン・ファイナンスの領域で、保険や融資をスマートコントラクトで自動処理することで、越境取引の摩擦を大幅に低減できるとの見解が示された。

 そこで焦点となったのが、ステーブルコインの通貨建てと発行者の問題だ。現在、世界のステーブルコイン市場は大半がUSD建てで占められている。日本と台湾はともに自国通貨建てステーブルコインの発行に向けた動きを進めているが、アジア域内の越境決済においてUSDステーブルコインを使うべきか、各国通貨建ての相互運用を目指すべきかという根本的な問いが提起された。

 この点で日本と台湾の状況は対照的だ。日本ではJPYCなど円建てデジタル通貨・ステーブルコイン周辺の取り組みが先行しており、改正資金決済法のもとで銀行や資金移動業者、信託会社に加えフィンテック企業も発行に参入する道筋が開かれている。

 一方、台湾では規制当局が伝統的金融機関をより信頼する傾向にあり、非金融機関による発行には慎重な姿勢が見られるとの指摘があった。発行者の適格性をめぐる各国の規制アプローチの違いが、今後のステーブルコイン市場の地図を左右する可能性がある。

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AFA(台湾フィンテック協会) 事務局長
ウィンストン・シャオ(Winston Hsiao) 氏

インドネシアの「デジタル金融インフラ」不在問題

 インドネシアからは、国内QR決済規格QRISが数千万規模の加盟店・利用者に普及した成功事例が報告される一方、デジタルレンディングやインシュアテックにはまだ課題が多いとの現状認識が示された。

 とりわけ深刻なのが、「デジタル金融インフラ」の不在だ。本人確認(eKYC)、所得検証、不正検知のためのデータ基盤が、中立的な形で整備されていない。ホスティング主体、資金源、持続可能性の3つの課題があり、国際的なパートナーシップを求めているとのことだった。

 日本は全銀ネットの24時間即時決済や、マイナンバーに基づく本人確認の基盤を持つ。インドネシアが求めるデジタル金融インフラの分野は、日本企業・技術にとっての協力機会ともなり得る。

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AFTECH Indonesia エグゼクティブディレクター
メルシー・ジュリアナ・シモランギル(Mercy Juliana Simorangkir)氏
【次ページ】AFAの国際連携構想──サンドボックスも念頭に
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