- 2026/04/10 掲載
アジアのフィンテックで何が“止まって”いる? 規制・決済・越境の「理想と現実」(4/4)
日本のフィンテックに必要な「視線の転換」
本ラウンドテーブルを通じて浮かび上がったのは、日本のフィンテック政策が規制面では先進的でありながら、民間側の実行力と国際的なプレゼンスに課題を抱えているという構図だ。しかし、この議論は悲観的なトーンで終わったわけではない。AFAを通じた国際連携の強化、暗号資産会計フレームワークの策定、eKYCのパイロット、デジタル金融インフラの国際協力──いずれも日本が強みを発揮できる領域であり、かつアジア各国が日本の参画を求めている分野でもある。
最後に、ある参加者の言葉が印象的だった。「この記事が、日本の企業やユーザーがアジアに目を向けるきっかけになることを願う」。
日本に求められているのは、制度を整えること以上に、アジアの現場とつながりながら実装と連携を前に進める視線の転換だろう。
筆者自身、AFAのTreasurerとして各国協会との連携に関わり、また欧州のデータインフラの議論にDSAを通じて参画する中で感じているのは、規制の枠組みを整えることと、それを使いこなす「現場力」はまったく別の能力だということだ。
今回のラウンドテーブルに際して、筆者がさらに接した新興国を含む各国のフィンテック事例で繰り返し見受けられたのは、制度やテクノロジーの導入だけでは組織は変わらないという点だった。
変革を実現するのは、現場のオペレーションを組み替え、顧客との関係を再構築し、組織文化そのものを変えていく実行力である。日本は規制面では確かに先行している。しかし、サンドボックスの利用率の低さや、国内市場への内向き志向が示すように、この「組織の変革力」にこそ大きな伸びしろがある。
また、ラウンドテーブルでは、各国が日本の規制枠組みに対して敬意を示す一方で、「なぜ日本はもっとアジアの現場に出てこないのか」という率直な問いかけもあった。
eKYCの相互検証、暗号資産の会計実務のプラクティス共有、デジタル金融インフラの技術協力──いずれも容易ではないが、完全な標準統一ではなく、実務・技術レベルでの合意形成を積み上げていくアプローチであれば、法制度の調和よりは前に進めやすい。
こうした実践的な連携こそ、日本の強みが活きる領域だ。実証から社会実装への「出口」をいかに設計するかは、国内の規制改革の議論にも通じる、日本のフィンテック政策全体にとっての鍵である。
アジアのフィンテックが「止まっている」のは、どの国も一国だけでは解決できない課題があるからだ。逆に言えば、だからこそ国際連携の余地がある。日本がその連携の結節点となれるかどうか──それは規制の先進性ではなく、現場に踏み出す意思の問題である。
AFA Chairwoman 台湾 Jaclyn Tsai Taiwan FinTech Association (TFTA) 名誉会長
AFA Vice Chairman 韓国 Dongpyo Hong Korea Fintech Industry Association (KORFIN) グローバルアライアンス&パートナーシップチェア
AFA Vice Chairman マレーシア Wilson Beh FinTech Association of Malaysia (FAOM) アドバイザー
AFA Secretary 台湾 Winston Hsiao Taiwan Fintech Association (TFTA) Director
インドネシア Mercy Juliana Simorangkir Asosiasi Fintech Indonesia(AFTECH)エグゼクティブディレクター
モンゴル Byambasuren Myagmartseren Mongolian Fintech Association CEO(最高経営責任者)
日本(Chair) 沖田貴史(Takashi Okita) Fintech Association of Japan 代表理事会長
日本(MC) 落合孝文(Takafumi Ochiai) Fintech Association of Japan 副会長/AFA Treasurer
Sub-MC 日本 山田竜司(Ryuji Yamada) FinTech Journal(SB Creative) 編集長
金融勘定系システムのおすすめコンテンツ
PR
PR
PR