• 2026/04/08 掲載

2030年稼働“全銀システム”はどうなる? 「新たな決済システム」7つのポイント(3/3)

FINOLABコラム

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利用者・金融機関・フィンテック企業のメリット

 新決済システムの導入により、将来的に利用者および金融機関の双方にさまざまな価値が提供される。

 利用者にとっては、送金の即時性向上、手続きの簡便化、エラーや不正の減少といった利便性の向上が期待される。また、データ活用により企業の資金管理や業務効率化も進展する。

 金融機関にとっては、システム維持コストの低減、業務の自動化(STP化)、新サービス創出の基盤整備といったメリットがある。さらに、AI発展と並行して周辺システムの統合により、システム全体の最適化が可能となる。

主要論点と制度設計上の「7つのポイント」

 新システム構築にあたっては、複数の重要論点が整理された。

(1) 対象範囲:新システムは当面、現行全銀システムと併存しつつ、個人・法人の即時決済を対象とする。バルク決済(給与・年金など)は当面対象外とされる。

(2)機能設計:事前口座確認の義務化、入金通知、エイリアス送金などは優先実装とされる一方、QRコード送金などは段階的導入とされる。

(3)周辺システムとの関係:ZEDIなど既存機能の統合を視野に入れ、決済インフラ全体の効率化を図る。

(4)クロスボーダー対応:FATF勧告16対応送金を含め、新システムでの取り扱いを基本としつつ、既存制度との併用も検討する。

(5)ISO20022対応:国際標準との整合性を確保しつつ、移行コストの最小化が求められる。

(6)技術アーキテクチャ:クラウド活用、API設計、パッケージ導入など、柔軟性と安全性の両立が重要となり、ベンダーロックインやブラックボックス化を避けることが求められる。

(7)新技術対応:ステーブルコインやトークン化資産との接続を前提とした拡張性が求められる。この点については、日本円建てのステーブルコインを発行しているJPYC社より見解が発表されている。

決済は「インフラからプラットフォーム」へ

 現状認識から新システム構築の提言が含まれているこの報告書の本質は、日本の決済システムを「従来型インフラ」から「データ駆動型プラットフォーム」へ転換する必要性を提示している点にあるといえる。

 従来の全銀システムは、銀行間決済の効率化と国民的なインフラとしての安定運用を目的とした閉鎖的インフラであった。一方、新決済システムは、リアルタイム性、データ活用、国際接続性、外部連携を備えたオープンプラットフォームとして構想されている。

 ステーブルコインやデジタル資産の台頭、クロスボーダー決済の再編、API経済の進展といった世界的なトレンドの中で、日本がとりうるポジションを決定づける重要な政策課題である。

 これは単なるシステム更改とはいえず、日本の金融競争力を左右する構造改革である。そうした点で、既存システムとの並行運用を当面行うとした点は、大きな発想の転換と言える。

 その実現には、金融機関、規制当局、IT企業の連携に加え、段階的移行と明確なロードマップが不可欠である。本報告書はその出発点として、新たな決済インフラ構築の方向性を提示したものである。

 とはいえ、かなり多岐にわたる意欲的な内容が盛り込まれているだけに、将来的な拡張性を担保した実装は容易なものではないものと考えられる。

 金融システム開発の常連と言えるようなシステムインテグレーターが報告書の検討メンバーに入っていないだけに、開発フェーズでブレーキがかかるおそれもある。

 国民的なインフラということで安全保障上の観点も必要であるが、海外における先行事例から効果的に技術要素を取り込むことによって、従来の「ガラパゴス的開発」に陥らないようにすることが肝要であり、新システム実現にあたってどのような体制が組めるかが成否を分けるものと考えられる。

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