- 2026/06/22 掲載
【過去最高】シニア起業が増加中…それでも独立を勧められない“残酷な現実”とは(2/2)
プロが語る、シニア起業支援の厳しすぎる現実
しかし、老後も働くことを希望するすべてのシニアの方に起業がお勧めできるかというと、筆者はそこまでは言えない。シニアであるか若手であるか関係なく、経営者として成功できる人はどうしても一部の人に限られるため、むやみに勧めることが難しいというのが理由の1つだ。
もう1つの理由は、本当に支援が充実していると言えるのか、若干疑問が残るからだ。
確かに“官”の起業支援はどんどん充実してきている。
国が出資する金融機関で、中小企業などを支援する日本政策金融公庫による融資制度では55歳以上は通常よりも低く、有利な金利で融資を受けられる。
また、東京都を始めとした自治体でも、シニアを対象とした融資制度などの支援を設けていることがある。東京都ではシニアを対象としたビジネスプランコンテスト(ビジコン)なども主催している。
だが、“民”の支援はどうだろうか。日本シニア起業支援機構(J-SCORE)を“民”に含めるならば、会員のシニアによるコンサルティングなどの人材活用も行っている。
ところが、一般企業による支援はあまり進んでいる気配がない。
高年齢者雇用安定法が2021年に改正された際、70歳に至るまでの就業機会確保が企業の努力義務となった。
65歳から69歳までの働き方について自社で雇用するだけではなく、会社設立や個人事業主としてそれまで勤めた会社の仕事を業務委託契約で受けたり、社会貢献事業に参加したりすることも働き方として認められることとなった。
この制度は「創業支援等措置」と呼ばれるが、「創業支援等措置」を導入した企業の割合は、厚生労働省の「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果によると、2025年の調査までずっと0.1%のまま増えていない。
つまり、自社の社員の定年後の働き方として、契約社員やパートタイマーなどとして雇用継続するのではなく、起業を支援する企業はほとんど増えていないと言える。
シニアの起業は本当に「セカンドキャリア」になり得るのか
もっとも、定年を迎えた社員の立場でも、わざわざ不安定な個人事業主の立場となってこれまで勤めた会社の仕事を委託されるメリットは薄い。同じ仕事を続けるなら雇用される立場のほうが安定的であり、その意味では「創業支援等措置」は、労使どちらからもニーズがないのかもしれない。
だが、それ以外でも、シニア起業に逆風となるような動きがある。フリーランスから会社員に戻る動きがそれだ。
フリーランスの人口が増え、さらにAIも急激に発達して競争が激しくなる中で、安定を求める動きであると言えるが、もちろん、シニアのフリーランスが無関係とはならない。
序盤で、筆者が提供するシニア転職支援の現場でも起業したシニアと出会うことが増えている話をしたが、その中には本業である会社経営や個人事業主を続けながら副業を探すシニアだけでなく、会社をたたみ、事業を閉めて会社員に戻ろうとするシニアも多い。
むしろ、終活の1つとして、責任や負担が重い事業主という立場を整理し、後継者にバトンタッチしたり閉じたりして、残りの期間は再び会社員の立場に戻って過ごすシニアを数多く見ている。
なにより、老後は健康や体力も個人差が大きくなり、活躍できる期間も誰もが同じではない。
シニアにとって一概に起業が良い、雇用されるのが良いといったことがあるのではなく、多様な活躍の場面やそのための支援があるべきだ。
そのうえで、資金の融資に関する支援だけでなく、ノウハウや顧客マッチングなど、支援の形もさらに多様であるべきではないかと感じる。
キャリア形成のおすすめコンテンツ
PR
PR
PR