- 2026/08/04 06:30 掲載
なぜ全銀協は「リバースピッチ」を仕掛けた? 銀行を“協業ハブ”にする3ステップとは
「融資だけでは届かない」全銀協が非金融支援に動いた理由
日本の銀行界では従来からスタートアップ支援に取り組んできたが、ここ 3年ほどはその取り組みを一段と強化している。全銀協は「新事業創出・育成支援検討部会」を新設し、スタートアップ支援を重点施策として位置付けてきた。しかし当初の取り組みは、主として「融資」という金融面の施策に重点が置かれていた。2024年度には、銀行がスタートアップへ融資する際の審査上の着眼点などを体系的にまとめた「スタートアップ融資実務ハンドブック」を作成した。
2025年度には、スタートアップ向け融資手法の1つである「新株予約権付融資(金融機関がスタートアップに融資を行うととも、スタートアップが金融機関に将来の株式取得権を付与する仕組み)」の法的解釈の整理に関する検討会を有識者を招いて開催した。 全銀協は、こうした金融面の取り組みを着実に積み上げてきた一方で、スタートアップ支援のさらなる充実に向け、非金融面での支援の重要性にも着目した。
「スタートアップ支援というのは金融面だけではなくて、金融・非金融の両面からの対応が必要だと思っています」(吉村氏)
この認識のもとで2025年度、全銀協として初めて「非金融面」の施策の取り組みに踏み込んだ。それが、オープンイノベーションの推進を目的としたリバースピッチ・イベントの開催だ。
背景には、政府の動きもある。政府が掲げる「スタートアップ育成5か年計画」のもと、銀行界としてどのような役割を果たせるかを検討する中で、融資を中心とした従来の支援に加え、事業連携や新たなビジネス機会の創出を後押しする取り組みへの期待が高まっていた。
銀行には、きわめて広範な企業との取引関係がある。製造業、サービス業、流通業、農業、医療など業種を問わず、地域の企業情報を蓄積し、顧客と長期的な関係を築いてきた存在だ。その顧客基盤を梃子(てこ)にして、スタートアップと既存企業をつなぐ「結節点」になれるのではないか──これが全銀協の構想の核心にある。
ではなぜ、これまでその役割を十分に発揮できてこなかったのか。理由の1つとして挙げられるのが、銀行特有の組織文化だ。従来の銀行は、「自前主義」の傾向が強く、自社のビジネス開発を念頭にスタートアップとの協業を考えてきた。
スタートアップとのオープンな連携という発想はこの数年で少しずつ拡大していった潮流だ。 全銀協委員会室上席調査役(みずほ銀行経営企画部全銀協会長行室)の緑川雄太氏も、この点について率直に認める。
「この数年で金融機関もイノベーションやビジネスモデルに対する考え方が少しずつ変わってきたこともあり、全銀協としても、会員行のオープンイノベーションに対する取り組みを後押ししたいと考えていました」(緑川氏)
銀行界全体としては、この変化はまだまだこれからの領域といえる。 【次ページ】「理解促進→実践準備→実践トライアル」3ステップ設計の狙い
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