• 2026/08/21 06:30 掲載

AI失業論はウソ?マイクロソフト・アマゾン大量リストラの“その後”(2/2)

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米テック大手で相次ぐ大量リストラ、原因は本当にAIなのか

 日本の失業率にはまだ大きな変化が見えない一方で、米国では企業レベルで人員削減や採用抑制が起きている。

 米国の大手テック企業ではAIの普及と並行して大規模な人員削減が続いている。

 米マイクロソフトは2026年7月に世界の従業員の約2%にあたる4800人の従業員を解雇することを発表した。このレイオフ(一時解雇)について、同社は、変化する顧客ニーズや事業モデルに合わせて人材や投資を重点領域に再配置することが目的だと説明し、重点領域の1つにAIを挙げている。

 エイミー・コールマン最高人事責任者は、削減対象の職種がAIによって直接置き換えられるわけではないと明言しつつ、AIによって日常業務の一部が自動化され、仕事の内容そのものが変化していることは認めている。

 また、米アマゾンでは2025年10月以降、複数回のレイオフを行っており、対象となった従業員数は約3万人を超える。

 こうしたAIによる雇用の変化を背景に、米国ではホワイトカラー以上に高収入を得るブルーカラー人材への注目が高まり、「ブルーカラービリオネア」と呼ばれる現象も話題になっている。

 だが、AIが人間を直接代替した結果として大量解雇が起きている、と単純化することは時期尚早だろう。

 最近になって、AI導入にともなってこうしたリストラや雇用の抑制を進めていた企業の中に、リストラした人員を再雇用したり、新たな人材確保を活発化させたりしている企業があるという報道が出始めている。

 むしろ、大手テック企業の人員削減とAIの普及は同時進行していると見るのが正しいかもしれない。

 雇用を増やしている理由には、AIで対応不能な部分が見つかったというものや、人間とAIの得意領域を詳しく調べた結果、人間の必要性が再確認されたといったものもあるようだ。また、AIでの効率化が進んだ結果、これまで以上に対応する顧客数や案件数が増えたことが、増員につながっているケースも多いようだ。

日本でも大量リストラは起きる? 米国と異なる“雇用の壁”

 こうした海外の雇用環境の変化に対して、日本ではどのような動きが考えられるだろうか。

 日本では米国に比べ、企業側が正社員を一方的に解雇するハードルは高い。

 そのため、筆者自身は日本においてAI導入を背景とした大規模な雇用の抑制や解雇のような事態が発生することには懐疑的だ。

 日本よりも失業率が高く、その変動自体も激しい米国においても、生成AI普及後の近年の失業率は落ち着いている。このような状況の中、AIだけを理由に日本の失業率が跳ね上がるような事態は考えにくい。

 たとえば、内閣府が出した『世界経済の潮流 2024年I AIで変わる労働市場』(内閣府、2024年)では、AI導入による影響を受けやすい職種などを説明する一方で、影響を受けるにしてもAIが多くを人間に取って代わる「代替」と、AIが人間の作業を助ける「補完」では、その影響に差があることを述べている。

 また、判断や責任が重い仕事はAIの影響が少ないことや、AIが新たな雇用を生み出す可能性にも言及している。AIは直接的に人間の雇用を奪うのではなく、あくまでも「タスク=作業」を代替するものであることも、多くの場面で触れられている。

 日本の将来の予想として、従業員を直ちに解雇しなくても、新規採用を抑えたり、退職者を補充しなかったりすることで、ジワジワと雇用が縮小するパターンなどが考えられる。

 日本の雇用環境では、職務を明確に限定するジョブ型雇用がまだ少なく、従来のメンバーシップ型雇用も色濃く残っているため、これまでとまったく違う業務を命じるハードルは低い。

 AIが日本の雇用環境に与える影響は、欧米の企業のように人員数を大きく増減させることなく、雇用が維持される一方で、仕事内容の大幅な変化という形で表面化するのではないだろうか。

AIで仕事が変わる時代、キャリアが揺らがない人の共通点

 だが、日本の企業が強く解雇を推し進めることがないといっても、AI普及の影響を楽観視して良いわけではない。

 仕事の内容はAIの普及に合わせて否応なしに変化するため、新たな学びは不可欠であるし、企業規模や人員配置の状況によってはこれまでとまったく違う仕事をする部署に異動になる場合もあるかもしれない。

 またAIに関する学習には終わりがないことにも注意が必要だ。

 AIの進歩は著しく、できることや操作感は日々進化している。今後はデジタルデバイスの中だけではなく、ロボットなどと結合した“フィジカルAI”もさらに進歩し、これまでAIとの関わりが薄いと思われていた職種でもAIとの結びつきが強まるかもしれない。

 たとえば自動運転が普及しても、トラックドライバーという仕事が直ちになくなるとは限らない。運転という作業が自動化される一方、車両の監視や緊急時対応、荷物の積み下ろしなど、人間が担う役割が残ったり、新たな役割が生まれたりする可能性がある。重要なのは「トラックドライバーという職種が残るか」ではなく、その職種を構成する仕事の中身がどう変わるかだ。

 雇用が大きく減少しなかったとしても、新しい知識を学び、常にアップデートし続けなければならないと考えると、気が重く感じる人も多いかもしれない。

 しかし、ミドルやシニアでキャリアを上手に描けている人は、AIの有無に関係なく、学ぶ姿勢があり、実践できている人である。AIの大きな進歩にもそこまで気負うことなく、これまでと変わらず学ぶ姿勢を継続できれば、キャリアが大きく揺らぐことはないだろうと筆者は考える。

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