- 2026/09/28 07:00 掲載
コンサルも経営もやった、でもPEファンドは別物…経験者が語る「仕事・報酬・向く人」(2/2)
コンサルで鍛える力、事業会社でしか得にくい経験
コンサルティングで鍛えられるのは、論点を立て、短期間で筋の通った答えを組み立てる力である。知らない業界を数週間で把握し、経営陣に通じる資料と説明に落とし込む訓練は、職場を変えた今も毎日役に立っている。他方で、損益に責任を負う経験や、資金を調達する経験は、どうしても積みにくい。提案の先の実行は、クライアントの領分だからである。
事業会社で身につくのは、実行の力である。とりわけ経営者として過ごした約4年間は、営業から採用、資金繰り、組織の立て直しまで、やらざるを得ない状況がすべてを鍛えてくれた。もちろん頼りになるメンバーが常にサポートしてくれてはいたが、最終責任は常に代表取締役である自分自身にあった。正直きつい日々だったが、どんな局面でも何とかする力は、あの逃げ場のなさが鍛えてくれたと思う。
PEファンドでは、事業・カネ・ヒトという経営のすべての領域に関わることになる。買収資金の借入条件の交渉、契約の設計、取締役会の運営、銀行への業績説明。前職までは年に数回あるかどうかだった種類の仕事が、ここでは日常として続く。
案件のたびに業界が変わるため、幅広く業界を見続けられる点は、コンサルティングに近い。逆に、現場のオペレーションを自分の手で動かす機会は、事業会社に比べると少なくなる。
こうして並べて実感するのは、PEファンドだけで身につく技能は実は多くない、ということである。投資の判断も投資先の支援も、中身を分解すれば、事業の理解と、数字の分析と、組織のマネジメントであり、いずれもコンサルティングファームや事業会社で鍛えられる力である。
成果が出なければゼロ? PEファンドの報酬はこう決まる
報酬にも触れておきたい。具体的な金額ではなく、決まり方の構造の違いである。固定報酬と年間賞与という基本の組み立ては、日本で働いている以上大きくは変わらない。違いが出るのは、その他の部分である。コンサルティングファームや事業会社の従業員という立場だと、固定報酬と年間賞与以外には基本的に追加報酬はない。
外資系企業の日本法人経営者、いわゆるカントリーマネージャーでは、ストックオプション、すなわち会社の価値に連動し、上場や売却で初めて現金になる報酬が加わることが多い。PEファンドでは、通常の年間賞与のほかに、投資成果に連動する成果報酬が加わる。
前回書いたとおり、成果報酬は成果が出なければゼロであり、確定するのも投資回収が進んだ後である。どの職場を選ぶかは、報酬のどれだけを、どのくらい先の成果に連動させるかという選択でもある。
「正解のない決断」を楽しめる? 3つの仕事を分ける適性
最後に、向き不向きについて筆者の考えを述べておきたい。コンサルティングに向くのは、新しい問いに短いサイクルで取り組み続けることを楽しめる人である。反対に、同じ相手と長く付き合い、実行の結果まで見届けたい人には、物足りなさが残るかもしれない。
事業会社の経営に向くのは、決めることと、その結果を引き受けることをいとわない人だ。経営の判断には、正解も、決めてくれる上司もいない。値付けを変えるか、人を採るか、続けてきた施策をやめるか。迷っても、決めなければ会社が停滞する。そして決めた結果は、翌月の数字と組織のモメンタム(勢い)になって返ってくる。この繰り返しを引き受けられる人にとって、事業会社の経営は、事業が伸びる手応えを最も濃く味わえる仕事である。
PEファンドに向くのは、数字と人の両方に関心を持ち続けられる人だと思う。財務の分析だけでは投資はできず、経営者との信頼関係だけでも投資はできない。1つの会社に数年単位で深く関わりながら、経営者そのものにはならず、株主として一歩引いた立場を保つ。この距離感を面白がれるかどうかが、分かれ目になる。
その上で、筆者は、PEファンドの仕事をとてつもなく面白いと感じている。検討する案件ごとに業界が変わり、製造業の原価構造を調べた翌週には、ITサービスの課金モデルを追いかけている。AIの業務活用やデジタルマーケティング、ゼロからの事業立ち上げといった過去の蓄積のある領域では、投資先や社内のメンバーに知見を提供する側に回る。ファイナンスや会計のように、この仕事でこそ深まる領域では、第一線の専門家から吸収する側に回る。
これまでの経験と知見をすべて使いながら、扱える領域がなお広がっていく。社会人になって10数年、この感覚を毎日味わえる仕事は初めてである。本稿が、ご自身のキャリアを考える際の1つの材料になれば幸いである。
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