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  • 2019/08/08 掲載

ステーブルコインとは何か? ブロックチェーン時代の新たな基軸通貨となりえるのか

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ブロックチェーン上で価格が安定した通貨を発行する「ステーブルコイン」と呼ばれる試みが最近になって注目を集めている。ステーブルコインの可能性は、価格が安定した通貨として、店舗等での支払いに使われることだけではない。ステーブルコインはブロックチェーン上に存在するという特性から、ブロックチェーン上の複数のサービスとシームレスに相互連携できるため、将来的にブロックチェーン上のサービスの基軸通貨となる可能性が期待される。本稿ではステーブルコインの可能性に注目し、これを利用するために考慮すべきリスクについて考察する。

有限責任監査法人トーマツ デロイトアナリティクス 岸 純也

有限責任監査法人トーマツ デロイトアナリティクス 岸 純也

2015年に公認会計士試験に合格後、2016年より有限責任監査法人トーマツにて大手金融機関の会計監査業務に従事し、デリバティブの公正価値評価を担当。2018年より暗号資産に関するアナリティクス業務を専門に行うチームに参画し、暗号資産取引分析システムの開発や、ブロックチェーンに関連したサービスの開発に従事。早稲田大学政治経済学部卒。公認会計士。

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ステーブルコインは価格が安定しているのが特徴となる
(Photo/Getty Images)

ステーブルコインとは

 ステーブルコインとは、法定通貨や金などの価格が安定した資産に価値を裏付けられた、価格変動を小さくした暗号資産のことである。

 ビジネスで利用する通貨は、価格が安定していることが必要である。通貨の価格が大きく変動すると、価格設定を頻繁に更新しなればならず、また、保有する通貨について価格変動リスクが生じる。

 たとえば、ビットコインは2017年12月に220万円をつけてから、2018年12月には約41万円にまで下落し、1年間で80%も価格が下落した。このように、これまでの暗号資産をビジネスで利用するには、価格変動があまりにも大きすぎた。

 そこで、ブロックチェーン上で既存の通貨や資産を担保として価格が安定した暗号資産を発行する取り組みが立ち上がり、ステーブルコインと呼ばれるようになった。

ステーブルコインの仕組み

 ステーブルコインの生成から償却に関わる基本的なライフサイクルは以下の通り(図1)。

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図1:ステーブルコインの発行・流通・償却

 利用者が発行体へ担保資産を拠出することによって、発行体により、ブロックチェーン上でステーブルコインが発行され、発行体から利用者へ送付される。利用者間の流通は、ブロックチェーン上で取引される。

 特段の仕組みがない場合、利用者間の流通に発行体は関わらない。利用者がステーブルコインを現金化する時には、発行体へブロックチェーン上でステーブルコインを送付し、発行体にて償却した後に、発行体から利用者へブロックチェーンの外側で送金する。

 ステーブルコインが発行されてから償却されるまでの間、発行体は担保資産を確実に保存するか、価値を保証することが求められる。

ステーブルコインの可能性

 ステーブルコインは、発行体の形態や、利用するブロックチェーンの形態、担保とする資産の種類や組み合わせ方法などの構成要素の組み合わせによって、さまざまなタイプが存在する(図2)。

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図2:ステーブルコインの性質を決める構成要素

 ステーブルコインは価格が安定した暗号資産として、決済手段としての普及をまずは目指しているが、目標は支払い手段の一つとなることだけに止まらない。

 社会で広く流通し複数のビジネスに受け入れられるステーブルコインが登場すると、ブロックチェーン上での取引が活発になると期待される。そして、そのブロックチェーン上での取引とは、スマートコントラクトによって完全自動化され、複数のビジネスプロセスをまたがった連携になるかもしれないのだ。

 複数のビジネスプロセスを跨った連携は、ブロックチェーンとスマートコントラクトのユースケースとしてよく挙げられる。複数の企業が相互に自動連携する例として、ブロックチェーン上に自動発注EDI (Electronic Data Interchange)システムを構築する場合を考えてみよう(図3)。

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図3:ブロックチェーンを用いた自動発注EDIの例

 事前に、発注企業と受注企業の間で「自動発注契約」と「売買契約」を取り決め、スマートコントラクトとして記録しておく。そして、発注側企業は在庫を定期的にブロックチェーン上へ「在庫証明」として記録する。在庫が一定数を下回ると、「自動発注契約」のスマートコントラクトが起動。自動で「発注指示」をブロックチェーンへ記録する。

 物流会社は発注指示を見て商品を納品し、商品を受け取った発注企業は「受領証明」をブロックチェーンに記録する。その受領証明をトリガーに「売買契約」のスマートコントラクトが起動され、自動で支払いが行われる。

 このようなビジネスプロセス間の連携を目的としたブロックチェーン実証実験は数多く実施されてきた。だが、多くが合理的なコストで実現できないとの結論に至っていた。

【次ページ】ステーブルコインを利用する上でのリスク

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