• トップページ
  • QRコードはもう古い、アリババやテンセントが進めるのは「顔認証決済」

  • 会員限定
  • 2019/09/03 掲載

QRコードはもう古い、アリババやテンセントが進めるのは「顔認証決済」

記事をお気に入りリストに登録することができます。
2015年時点でキャッシュレス比率60%を誇る中国では、QRコード決済が常識になっていることは有名だ。日本でも多くのQRコード決済サービスが登場し、その普及率を各社が競っている状況であるが、中国はすでに次のステージへ進んでいるという。それが「顔認証決済」である。なぜアリババやテンセントは顔認証決済の導入に力を入れているのだろうか。世界のキャッシュレスをけん引する中国の現状から、日本が見失いつつあるキャッシュレスの本質が見えてきた。

執筆:ITジャーナリスト 牧野武文

執筆:ITジャーナリスト 牧野武文

消費者ビジネスの視点でIT技術を論じる記事を各種メディアに発表。近年は中国のIT技術に注目をしている。著書に『Googleの正体』(マイコミ新書)、『任天堂ノスタルジー』(角川新書)など。

画像
中国・江西省の病院はアリペイの顔認証決済ユニットでの支払いが可能だ
(写真:Imaginechina/アフロ)


すでに中国は「脱QRコード決済」の動き

 中国の街中消費での決済手段が、スマートフォン決済になっていることはすでによく知られている。アリペイ(アリババグループのアリペイが運営)とウィーチャットペイ(テンセントが運営)の2つが主に使われ、QRコードを使って決済をすることから、俗に「QRコード決済」と呼ばれる。

 経済産業省の資料によると、日本のキャッシュレス比率は19.8%(2016年)であるのに対し、中国では60%(2015年)となっている。このデータはやや古く、現在の大都市部では90%以上の決済がキャッシュレスになっている印象だ。紙幣や硬貨を目にすることが、極端に少なくなっている。

 中国の都市はQRコードだらけだ。スーパーやコンビニでは、買い物客がスマホにQRコードを表示し、これをレジでスキャンしてもらい決済をする。自動販売機にもQRコードをかざして飲み物を買う。地下鉄やバスにもQRコードで乗車する。レストランのテーブルにはQRコードが印刷してあり、これをスマホでスキャンをするとメニューが現れる。ここから注文と決済ができ、食べ終わったら、そのまま帰ることができる。

 日本でもLINE PayやPay PayなどのQRコードを使ったキャッシュレス決済が登場し、このまま普及をしていくと、中国のようにQRコードだらけの街になっていくのかもしれない。

 ところが、中国ではすでに「脱QRコード」の流れが始まっている。

2019年は「顔認証決済」元年

 現在、アリペイやウィーチャットペイは、ユーザー体験をさらに向上させるために顔認証決済の導入に力を入れている。2019年は顔認証決済が身近になる「元年」だとも言われる。

 アリペイはすでに顔認証決済ユニット「蜻蜓(チンティン、トンボのヤンマの意味)を1199元(約1万8000円)で発売している。

 アリペイ決済に対応しているPOSレジであれば、USB接続をするだけで顔認証決済が可能になる。すでにスーパーの「ロータス」、華南地区のセブン―イレブンなどが導入を決めている。利用客数に応じて最高1200元までの加盟店へのキャッシュバック制度が行われているため、客数の多いスーパー、コンビニでは実質無料で導入できる。

 対抗するウィーチャットペイのテンセントも同様の顔認証ユニット「青蛙」(チンワー)を発売、スーパー、コンビニなどでの導入が始まっている。

画像
浙江省杭州市にあるKFC(ケンタッキーフライドチキン)の高級業態「KPro」。入り口付近の大型タッチパネルでメニューを選び、顔認証決済をする。左にある小さなデバイスを持って好きな席に座ると、そのデバイスの位置情報によりスタッフが料理を運んできてくれる。2016年からアリババはこのKProで顔認証決済を提供し、今年になって本格的に普及させる施策を打ち出している
(写真:著者撮影)
 このような顔認証ユニットは、消費者、商店の両方にメリットがある。

 消費者にとっては、財布もいらない、スマホすらいらない。レジの前に立つだけで決済が完了する。

 スーパー「ロータス」では、以前のQRコード決済では1人あたりのレジ処理時間が5.6秒だったが、顔認証専用レジでは2.8秒に短縮したという。消費者にとっては、それだけ行列で待たされる時間が短くなる。

 商店側では、レジ処理時間が短縮され、人件費を抑えることができるようになる。特に最近は人手不足が深刻であるため、採用数を抑え報酬を高くして人手を確保するのに顔認証導入が有効なのだ。

【次ページ】まだある「顔認証決済」のメリット、日本が見失いつつあるキャッシュレスの本質とは?

あなたの投稿

関連コンテンツ

東京都

2024年に向けて、サイバーセキュリティ最新情報や多様化する脅威への対処法&防止策

サイバーセキュリティ業界最大級のイベントRSAカンファレンスでも話題となった最前線をご紹介 攻撃に関連する被害のレベルが、かつてないほど高くなっている今、 専門家から最新の攻撃手法やトレンドに関する情報をお届けします。 サイバーセキュリティの専門家、ITリーダー、経営者、そしてデジタルアセットとプライバシーを守りたい全ての方々に知っておくべき! RSAカンファレンスでも話題となったサイバー対策や、政府、教育機関、弁護士からの講演を通して、進化するサイバー脅威から組織や自分自身を保護する力やより強固なサーバーセキュリティ体制の構築の知識を深めましょう! 最新のサイバー脅威動向の解明 サイバーセキュリティインシデントへの対応 サイバーハイジーンの強化 協力と知識共有 未来への強靭性の構築 本セミナーでは、複合環境における高度な脅威対策のためのネットワーク検出と可視性の重要性、そして技術の進化に伴う政策の変化と法的コンプライアンスの最適な戦略についてお話しいたします。 また、今後多発することが見込まれる ChatGPT 技術を悪用した攻撃、コロナ蔓延やウクライナ戦争を契機にしたサイバー攻撃の状況の変化、 VR/AR/MRにおける新たなセキュリティとプライバシーの脅威を踏まえといった最新の攻撃手法を掘り下げ、金融、電力業界から幅広い業界でのサイバーセキュリティの課題に取り組む皆様に向けて、一年に一度のセキュリティイベント、専門家と共にセキュリティの高度化を探求しましょう!

東京都

Ivanti NEXT 2023

コロナ禍によってリモートワークやハイブリッドワーク環境への対応の波とデジタル化の更なる加速によって、Everywhere Work(場所にとらわれない働き方)が拡大し、より柔軟性のある働き方が定着しました。それと同時に、従業員が利用するPCやモバイルデバイス、周辺機器デバイス、アプリの数が増えたことで、企業はより複雑化したIT環境に直面しながら、一層のセキュリティ強化が求められるようになっています。また、経済産業省が2018年に発表した「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開~」により提唱された『2025年の崖』問題も迫っており、企業はDX(デジタルトランスフォーメーション)へ推進を加速しています。 そのような変化に対応・直面する中、 IT担当者が担うミッションはIT(ハードウェア、ソフトウェア)資産管理、サイバーセキュリティ(脆弱性、デバイス、ネットワーク)の強化、社員からのITサポートの対応、既存システムの保守、新システムの導入、OSの移行など多岐にわたり複雑化しているだけでなく、ITの人材不足や熟練者の退職によるナレッジのブラックボックス化が発生し、情報システム部門がすべての対応を行うことが難しい時代を迎えております。また、最近では従業員の定着率にも影響する「従業員のデジタル体験(Digital Employee Experience)」という重要性が高まっており、企業には、これまで以上にデジタル化で社員に負担をかけないよう、仕事環境の早急な改善が求められています。 本イベントでは、企業の「次」の戦略的なITの取り組みへリソースを使えるよう支援を目指すIvanti製品やソリューション、国内の事例をご紹介します。

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

おすすめユーザー

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます