• 2025/07/01 掲載

島根銀行が挑む“選ばれるバンク”への道筋、「地域活性化」のための独自戦略とは?

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島根銀行は、地元に密着した業務活動を行ってきた銀行であり、2025年5月に公表した「新中期経営計画」においても、「ふるさと山陰活性化プロジェクト」というキャッチコピーを掲げている。経営計画の大きな特徴は、地域貢献と企業価値の向上を実現していることだ。島根銀行の展開している戦略の詳細と目指す姿について、同スマートフォン支店支店長の野中駿平氏と同総合企画グループ副長の三成直紀氏に話を聞いた。
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「オープンイノベーションバンクしまぎん」戦略の進化
(後ほど詳しく解説します)

「4つの柱」で、島根銀行は地域課題を解決に導く

 島根銀行は「オープンイノベーションバンクしまぎん」という戦略のもと、地域課題の解決支援に取り組んでいる。その取り組みをより具体化させたのが、「ふるさと山陰活性化プロジェクト」である。プロジェクトの大きな柱となっているのは、「事業の引継ぎ・雇用維持」「中心市街地の活性化」「産業の新陳代謝」「販路の拡大」の4つだ。

「事業の引継ぎ・雇用維持」と「中心市街地の活性化」について、SBI未来共創プロジェクト推進室、スマートフォン支店の支店長である野中駿平氏は、こう語る。
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SBI未来共創プロジェクト推進室
スマートフォン支店 支店長
野中 駿平 氏

「“事業の引継ぎ・雇用維持”の解決策として考えていることの1つは、事業承継を見据えた投資専門子会社“しまぎん地域事業投資”の活用です。当地では住民全体の高齢化に伴い、経営者の高齢化も進んでおり、事業承継の課題を抱える企業が数多くあります。後継者が育っていない、適任者がいないなどの課題を解消し、引継ぎが完了するまでサポートできる体制を整えるという目的もあり、投資専門子会社を立ち上げました」(野中氏)
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総合企画グループ副長
三成 直紀 氏

 投資専門子会社「しまぎん地域事業投資」が設立されたのは、2025 年4月15日である。主な目的は、株式・社債への投資、後継者育成、経営基盤強化に向けたコンサルティング、次世代の経営体制や事業基盤の整備・強化、事業の引継ぎ問題および雇用維持問題の解消など、多岐にわたっている。「ふるさと山陰活性化プロジェクト」を担う企業の1つだ。総合企画グループ副長の三成氏はこう説明する。

「しまぎん地域事業投資の設立にあたっては、SBIグループのサポートにより実現しております。その他にも銀行として、SBIグループのノウハウ提供により、各種サービスの拡充を進めています。たとえば、特定の資産やキャッシュフローを裏付けとして、複数の金融商品を組み合わせる金融手法、ストラクチャードファイナンスによって、資金調達できるようになりました。その手法を活用できたのは、SBIグループの協力により実現したものです」(三成氏)

 島根県松江市では、「中心市街地の活性化」も大きな課題となっていた。人口減少に伴って、空き家・空き店舗の増加が目立つ状況になっていたのだ。そのため、ファンドの設立により、民間の「まちづくり事業」を支援するために、2024年12月10日に「しまぎんまちづくりファンド」を設立したのだ。

「経済自体が縮小している中で、中心市街地でも空き家が目立つ状況にあり、この地区をいかに盛り上げていくかが大きな課題となっていました。MINTO機構(民間都市開発推進機構)と連携して、“しまぎんまちづくりファンド”を設立しました。ファンド設立の目的は、空き家・空き店舗のリノベーション・コンバージョン、施設を整備・運営する民間事業の支援などの地域貢献です」(野中氏)

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「しまぎんまちづくりファンド」を創設
(出典:島根銀行)

 この「しまぎんまちづくりファンド」の大きな特徴は、松江市の中心市街地の一定エリアが指定されていること、そして、そのエリア内で行われる事業が連鎖的に進められていることである。つまり、島根銀行は、まちづくり事業者のハブのような役割も果たしているのだ。

地域活性化のための超独特な販路拡大戦略とは?

 「産業の新陳代謝」と「販路の拡大」も島根県・鳥取県の大きな課題となっている。「産業の新陳代謝」を進めるためには、新事業の創出が不可欠となる。

「“産業の新陳代謝”の課題解消に関しては、2024年11月より“しまぎん地域活性化プロジェクトローン”を開始しました。新たな事業への挑戦を計画し、当行の定めた一定の要件を満たす法人のお客さまに対して、経営者保証を不要とし、さらに当行と島根県信用保証協会が連携し事業の成長に向けてサポートすることを特徴としています」(野中氏)

 「しまぎん地域活性化プロジェクトローン」は起業に加えて、既存企業における事業拡大や新分野への進出にも使用可能である。融資額は3,500万円までで、期間は最大10年だ。まだ開始から約半年であるため、具体的な成果はまだ出ていないが、プロジェクト開始前から要望が多かったこともあり、今後の展開が注目される。

 「販路拡大」という課題に対しては、島根銀行ではさまざまな対策を多角的に行ってきた。2025年1月からは「地域産品の情報発信」の第1弾として、島根県東部の雲南地域の「奥出雲和牛」の情報発信を開始している。

「スマートフォン支店のお客さまが島根・鳥取以外にも多くいらっしゃるため、全国から集まったお客さまに対して、アプリのプッシュ通知などを活用して、我々の取引先企業の商品やサービス情報の発信も積極的に行っています。こうした活動を地域の消費につなげ、地元企業の販路を拡大することが狙いです。新たにできた顧客接点を生かして、我々が能動的に動き、販路拡大を支えていけたらと考えています」(野中氏)

 販路拡大のユニークな取り組みの1つが、吉本興業との連携によって、2025年3月23日にくにびきメッセ大展示場で開催された 「しまぎんマルシェin松江」だ。 地元人気グルメのマルシェと吉本お笑いライブと地域ステージイベントとが連動して開催されたのだ。

「吉本興業ホールディングスとは、2022年3月に包括業務提携を締結しています。島根県在住の“島根県住みます芸人”の方がもともと地元でシェフをしていた背景もあり、我々と取引のある地元の飲食店とコラボレーションをして、商品販売も行っています」(野中氏)

 なお、吉本興業との包括業務提携の主な内容は、各種イベント連携によるコミュニティ活性化、お笑いを生かした観光コンテンツの連携による観光振興、プロモーション連携による山陰への移住・定住促進などだ。 【次ページ】SBIと連携し「次世代バンキングシステム」導入を目指しているが…
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