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  • これから待ち受ける、あらゆるものが証券化される「超金融資本主義」の未来

  • 2019/09/11

これから待ち受ける、あらゆるものが証券化される「超金融資本主義」の未来

デジタル証券の発行が容易になり、今後ありとあらゆるものが“証券化”されていくだろうと坂井氏は予想する。そうした世界では、望むと望まざるに関わらず、人でさえも投資の対象となり、選別が進む。そのため“人間が平等である”という概念は維持が困難になると予想する。このように価値観が激変し、かつ100年人生を生きることになる未来社会においては、他人と協力しながら働き続けることが、最も重要な処世術になると同氏は助言する。

聞き手:編集部 松尾慎司、構成:吉田育代

聞き手:編集部 松尾慎司、構成:吉田育代

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慶應義塾大学 経済学部 教授 坂井豊貴氏


これからは、あらゆるものが証券化の対象になる

 暗号通貨は現代社会にどのような変化をもたらすのか。これは私の未来予想ですが、色々なものが証券化するのだと思います。そういう意味で、金融資本主義はますます進んでいくのでしょう。この変化が人間をハッピーにするのかどうかよくわかりません。ビットコインは証券ではありませんが、証券化の時代を幕開けたような気がします。

 もう少しわかりやすく話します。ビットコインに価値の裏付けはないといわれます。しかし、それは円やドルといった普通の法定通貨も同じです。ただの紙切れであり、ただの情報だということもできます。

 ビットコインの後にさまざまな暗号通貨が出てきました。その中の一つに「テザー」があります。あれは1ドルと1テザーを交換することを保証しました。ドルと連動した暗号通貨で、価値が安定するのでステーブルコインと呼ばれます。また、こういうのをドルにペッグすると言います。

 このペッグの対象は別にドルじゃなく、ゴールドでも、何だったらビルでもいいわけですよね。いまいるこのビルが仮に10億円だとして、10億円のビルを買うのは大変ですが、10億個のコインに分割したら話は変わります。100円あったら100個のコインが買えるから。

 つまり、このビルにペッグさせて10億枚の暗号通貨を発行できます。これは所有権を10億分割するような、セキュリティトークンと呼ばれます。

 1つの建物を10億分割して所有するといったことは、以前も理論上はできました。しかし、その書類を作るのに1枚1円以上かかるのではコストがかかりすぎです。しかし、ブロックチェーン技術はそのコストを大幅に下げます。コストが下がるというのは偉大なことで、コストが下がるから世の中で使えるようになります。 パソコンやスマホが一般家庭に普及したのは、一般家庭で買える値段になったからです。

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人の価値もまた証券化されていく

 色んなものが証券化できるようになった以上、それは進むのではないでしょうか。できることはやっちゃうのが人間の性ですし。とくに証券化は流動性という価値が付いて高値になりやすいだろうから、やるインセンティブは強いように思います。

 やがて私たちは「あれもこれも証券化できる」ことに気付くでしょう。証券化しないものは、「なんであれは証券化しないの?」という発想になるのではないでしょうか。人間だってそうです。他人の子どもに投資するとかね。すでに私たちは「教育投資」なんて言葉を当たり前のように使っており、この発想は突飛ではありません。

 つまり貧しい家庭に生まれた優秀な子どもが1万トークンを発行して、この子は将来性があると思った投資家がこれを買う。その子が将来お金を稼ぐようになったら、そのうちのいくらかを対価として受けとる。この話の印象は、いまは良くないと思います。人間をモノとして扱っている感じがあって、生理的に嫌悪する人もいるでしょうね。私自身にも何か嫌だなと思う感情はある。

 でも将来はどうでしょう。人間の嫌悪感のもち方は、時代により変わるものです。ある程度はオブラートに包むにせよ、私たちはこれからそういう證券的な発想をしていくのではないでしょうか。

 これでますます貧富の差が開くのかどうかはわかりませんが、これまで貧しい家庭の子は、能力が高かろうと低かろうと高等教育へ進めなかった。しかし金融技術の発達によって、能力が高そうな子については救済されるわけです。全員が救われるわけではないですが、全員が救われないよりはベターだと思います。

 「教育や再分配は政府の役割」が筋論なのかもしれませんが、現実的に政府がそこまで頼りにならない以上、金融が人間を救うのだろうという気がしています。ただし対象は全ての人間ではないです。これは良し悪しの話ではなく、私の大まかな未来予測です。

【次ページ】“人間は平等”という発想は続くのか

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