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  • 2019/09/26 掲載

「キャッシュレス8割」は2027年? PayPayや楽天、みずほ、リクルートが語る

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現金を使用しない「キャッシュレス決済」。クレジットカードや電子マネーに加えて、QRコードやモバイル決済などが台頭したことで活況を呈している。現金での支払いが主流の日本だが、政府は今後世界最高水準の決済比率80%を目指すことを宣言した。キャッシュレス決済サービスを推進する経済産業省 津脇 慈子氏をモデレーターとして、リクルートライフスタイルの林 裕大氏、楽天ペイメントの小山 幸宏氏、みずほフィナンシャルグループ 柿原 愼一郎氏 PayPay 柳瀬 将良氏がキャッシュレス決済比率が80%となった時の社会を展望した。

フリーライター 野中 瑛里子

フリーライター 野中 瑛里子

立教大学経済学部卒。現・三菱UFJ銀行に入行、市場部門にて法人運用デスク、ファンド管理を担当。2017年にソフトバンクへ転職。Fintechを中心にSoftBank Vision Fundの日本ローカライズ部署にてPaypayなどの新規事業推進を担う。会社員時代より、NPO法人Startup Weekendのプロボノスタッフとして携わり、日本では初となるFintechテーマの企画・実行を行なった実績をもつ。その後、個人事業主としても主にスタートアップ向けに事業企画や資本政策の支援を行うなど、金融とベンチャー両軸の理解・経験に富む。

※本記事は、金融庁 日本経済新聞 共催 FIN/SUM 2019「キャッシュレス率80%の日本 ここまで変わる」での講演内容をもとに再構成したものです。
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「キャッシュレス80%」の実現には何が必要なのか
(写真提供:日本経済新聞)

日本は「キャッシュレス決済後進国」

 2018年4月に経済産業省が掲げたキャッシュレス・ビジョンによると、2015年時点における日本のキャッシュレス決済比率は18.4%にとどまる。韓国(89.1%)、中国(60.0%)、米国(45%)、英国(54.9%)などキャッシュレスが進んでいる諸外国に比べると、日本の決済比率がいかに低いかが分かる。

 中国では「Alipay」や「WeChatPay」などのモバイル決済が急速に普及しているため、2019年現在の比率はさらに高くなっていると考えられる。

 なぜ、日本ではキャッシュレス決済の普及が遅れてしまったのか? その理由としては「端末初期費用」「決済手数料」「入金サイクル」などが挙げられる。ただ、多様化するキャッシュレス決済サービスの台頭により、店舗導入のハードルも下がってきた。経済産業省が掲げる「キャッシュレス決済比率80%」というのは、一体いつ達成されるのだろうか。

決済比率80%の達成時期を予測

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経済産業省
キャッシュレス推進室長
津脇 慈子氏
(写真提供:日本経済新聞)
 9月3日に開催された金融庁 日本経済新聞 共催 FIN/SUM 2019のセッション「キャッシュレス率80%の日本 ここまで変わる」でモデレータを務めた経産省の津脇氏は「キャッシュレス決済比率40%の達成時期目標は2025年だが、80%の達成時期についてはこれから検討を重ねるフェーズ。なかなかハードルの高い目標だ」と語り、各登壇者に達成時期の予想を尋ねていった。

 楽天ペイの小山氏は「2027年」と予測。「楽天ペイだけでなく、業界全体の盛り上がりが後押しし、年平均成長率20%程度で、この辺りではないかと試算した」と述べた。

 「J-Coin Pay」を手掛けるみずほFGの柿原氏、「Airペイ」を提供するリクルートの林氏は、両者とも「2030年」と回答した。「試算をしたわけではないが、足元の状況や日本の国民性を考えると大体これくらいの時期になるのではという“肌感”だ」(林氏)

 PayPayの柳瀬氏は「韓国の事例を参考にすると、官民が一体化すれば、政府目標の10年ではなく3年まで短縮可能だ」と述べた。柳瀬氏の回答を受け、津脇氏は「経産省も頑張らねば。政府目標を改めて検討していきたい」と応じた。

キャッシュレス比率80%が実現した世界とは?

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リクルートライフスタイル
ネットビジネス本部
Air事業ユニット ユニット長
林 裕大氏
(写真提供:日本経済新聞)
 クレジットカードや電子マネーが浸透したとはいえ、便利な決済手段として現金はまだまだ重宝されている。特に日本は、現金による決済が主流の「現金大国」だ。その理由には「ATMが普及して便利だから」という指摘もある。コンビニにも設置されているATMが至る所にあり、現金の調達に困ることはない。キャッシュレス決済比率80%という世界は、一体どういう景色が見えるのだろうか。

 リクルートの林氏は「技術的進歩に伴う顧客体験の変化」を予想する。「人が新しい物を選択する理由は、現状よりも利便性が高いから。アプリや生体認証などのデバイスとのシームレスなUX(顧客体験)が鍵になるだろう。10年後には、誰もスマホを持っていない景色が広がっている可能性もある。メガネなのか時計なのか、その時の利便性に合わせてUXは変わっていくと考えられ、決済手法もそれに伴って変容していくだろう」と語った。

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みずほフィナンシャルグループ
デジタルイノベーション部 部長
柿原 愼一郎氏
(写真提供:日本経済新聞)
 みずほFGの柿原氏は「80%の達成には、日常生活のあらゆるシーンでの活用が必要だ」と述べた。「給食代やクラブチームの集金、お年玉など、日本国民の生活の中には、現金を使うシーンがまだまだ残っている。キャッシュレス決済比率80%を実現するためには、店舗決済だけではなく、個人間送金を含めたオンライン送金の普及までが求められる」と指摘した。

 オンラインとオフラインが融合した「OMO(Online Merges with Offline)」の重要性を語ったのは、楽天ペイの小山氏だ。「決済にはIDやデバイスなどの層が存在するが、特に重要なのはIDだ。IDは多様なサービスに連携しているため、そのセキュリティが強固であるかが、シームレスなUXの構築の土台となる」(同氏)

 PayPayの柳瀬氏は「ユースケースの多様化が鍵になると思う。当社でも公共料金をPayPayで支払える『PayPay請求書払い』をリリースしたばかりだ。金額ベースでの目標到達を考えれば、生活費から税金といった従来の電子決済や店舗決済がカバーしてきていない領域までを包含する必要がある」と語る。

【次ページ】全国で普及するための必要条件

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