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  • 2019/10/29 掲載

DeFi(分散型金融)を解説、JPモルガンやフェイスブックが注力するワケ

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従来型の金融では、金融機関や取引所などの中央管理システムが仲介することにより、円滑な取引を実現していた。現在注目されるのは、「さまざまな金融領域において中央管理を廃して利便性や透明性の向上を目指す」ことを目的とした「分散型金融(Decentralized Finance:DeFi)」だ。本稿ではDeFiの現在についてはもちろん、大手金融機関の動き、フェイスブックのLibra、そして展望を解説する。

執筆:日本マイクロソフト 業務執行役員 金融イノベーション本部長 藤井達人

執筆:日本マイクロソフト 業務執行役員 金融イノベーション本部長 藤井達人

日本マイクロソフト エンタープライズ事業本部 業務執行役員 金融イノベーション本部長 藤井達人
IBMにてメガバンクの基幹系開発、インターネットバンキング黎明期のプロジェクト立上げ、金融機関向けコンサルティング業務に従事。その後、マイクロソフトを経て、三菱UFJフィナンシャル・グループのイノベーション事業に参画し、フィンテック導入のオープンイノベーションを担当。「Fintech Challenge 2015」「MUFG Digitalアクセラレータ」「オープンAPI」などの設立を主導。また、MUFGコインなどブロックチェーン等の新規事業などの立上げも手がける。auフィナンシャルホールディングス 執行役員 最高デジタル責任者を歴任し金融スーパーアプリなどに携わる。現在は日本マイクロソフトにて、フィンテックを活用したデジタル金融サービスの創造に取り組んでいる。

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分散型金融の現在地とは
(Photo/Getty Images)

なぜ今DeFiなのか?

 2019年ごろから金融業界では、「分散型金融(Decentralized Finance:DeFi)」という言葉が盛んに聞かれるようになってきました。

 DeFiに関して正式に定まった定義が存在するわけではありませんが、一般的には「ブロックチェーンの非中央集権モデルを活用して、さまざまな金融領域において中央管理を廃して利便性や透明性の向上を目指すもの」といった意味で使われることが多いようです。

 ではなぜ、ブロックチェーンを活用すると利便性や透明性が向上するのでしょうか? 従来型の金融では、金融機関や取引所などの中央管理システムが取引者同士の間に入って取引を仲介することで円滑な金融取引を実現しています。

 これに対してDeFiは、信頼できる第三者の仲介なしに価値移転を成立させるというブロックチェーンの特性を活用して、効率的な金融取引を実現しようとするものです。

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ブロックチェーンの仕組み
(出典:経済産業省)

 取引に伴う契約条件はスマートコントラクトとよばれるプログラムで自動的に実行され、同時に、不正な二重支払いが起きないことも保証されます。これらの取引は共有される台帳に記録されるので、透明性も高まります。

 このように、金融取引のように信用と信頼性を必要とする取引を、ブロックチェーン上のプロトコルによって仲介者の存在なしに実現しようというのがDeFiの基本的な考え方です。

 Defiを後押しする背景にはスマートコントラクトを実行可能なパブリックチェーン(不特定の人間がネットワークに参加可能なブロックチェーン)である、Ethereum、Tezos、EOSといったプラットフォームの開発が進んだことがあります。

DeFiの代表的なカテゴリー

 こちらでは、代表的なDeFiのカテゴリーを解説します。

DEX(分散型取引所) ウォレット間で直にトークンをやりとり可能な(P2Pで取引可能な)取引所
ステーブルコイン 法定通貨と1:1の価値になっている仮想通貨
レンディング(融資、貸付) 融資を中央機関や人間を介さずにプロトコルで実行
デリバティブ(派生型金融商品)/予測市場 分散型の証拠金・オプション取引
将来予測のための先物市場
バスケット取引 複数種類のトークンをまとめて新しいトークンとして流通
セキュリティトークン 有価証券をブロックチェーン上に発行、流通させる
KYC(顧客確認)/AML(アンチマネーロンダリング)/ID(利用者識別) ユーザー/会社の信用力・資格・身元証明を実施し、ブロックチェーンやIPFS(Inter Planetary File System)にその情報を保管、証明
アプリ/ツール DeFiサービスを便利に効果的に執行するためのサポートツール
ブロックチェーン分析 ブロックチェーンの取引高やDeFiにロックされているトークンなどをダッシュボードで閲覧
その他 分散サブスクリプション、請求書プロトコルなど多様なサービスが存在
代表的なDeFiのカテゴリー

 上記の中でも、ステーブルコインは理解しやすいDeFiの例でしょう。2019年9月時点ですでにいくつものステーブルコインがインターネット上で流通しており、流通額も毎月増加傾向にあります。

 Tetherや USDCのように法定通貨を担保に企業が発行しているものや、MakerDAOのように分散的に発行されるものなど、いくつかの方式が存在します。

ステーブルコインと電子マネーは何が違うのか

 よくある質問に「ステーブルコインと電子マネーは何が違うのか?」というものがありますが、「電子で表現されたお金」という意味において違いはありません。

 しかし、ステーブルコインはブロックチェーン上に発行された通貨であるため、スマートコントラクト(契約の自動化)によるプログラム制御が可能という点で異なります。

 ブロックチェーン上に発行された所有権(例としてコンサートチケットや楽曲など)を他人に譲渡する場合を考えてみましょう。ステーブルコインであれば、所有権を移転するスマートコントラクト機能を介することで確実な支払いが保証されます。

 今後、実社会でさまざまな取引がブロックチェーン上に実装されていくことが予想されます。スマートコントラクトによる制御が可能な通貨(こうした性質を持つ通貨はProgrammable Moneyとも呼ばれる)は、そうした取引を円滑に実行するための重要な役割を担うことになるでしょう。

 証券分野もブロックチェーンと相性が良い領域の一つです。デジタル化した有価証券をブロックチェーン上に発行する「セキュリティトークン」により、管理と仲介のコストを下げ、24時間365日の取引で流動性を増加させることが期待されています。

 セキュリティトークンは、株式や債権といった既存の金融商品の流通プラットフォームの置き換えではなく、今まで証券化しにくかったアセットを担保にした証券や、未公開株式などから発行が始まっているのも特徴と言えるでしょう。

【次ページ】大手金融機関はDeFiをどう見ているのか?

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