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  • 2020/01/07

“実用段階”に入ったブロックチェーンとの向き合い方、「解決策」としての進化を解説 (2/2)

ブロックチェーンの実用化には中長期の目線も必要

 一方、ブロックチェーンの実用化が本格化するに伴い、中長期視点に立って課題解決に取り組むことも重要になっている。

 LayerXの畑島 崇宏シニアマネージャーによれば、銀行や証券、保険といった金融分野に限らず、サプライチェーンといったさまざまな分野で、もはや単発的なPoC案件は少なくなり、中長期で価値を生む実用化事例が出てきているという。

 そうした企業におけるブロックチェーンの実用化プロジェクトでは、既存システムをブロックチェーンに置き換えるというよりは、ブロックチェーンを活用して新規の事業やサービスを立ち上げるようなケースで使われる場合が多い。

  同社には、事業立ち上げ経験を有するリーダーやサービス構築を担ってきたエンジニアが結集しており、ブロックチェーンが本質的に価値を出せるような新規サービスの立ち上げにむけて、一団となって企業との共同プロジェクトを推進しているという。

このように、目先のPoCに止まらず中長期に価値を生み出し続けるインフラ作りに取り組んでいることから、新規事業の商用金融システムについて、インフラ構築のリードを担える人材や、設計・実装を担える人材を求めており、中~大規模の商用サービスのバックエンドエンジニアなどを経験した人材に活躍の場がある。

また、かつてのインターネットがそうであったように、ブロックチェーン技術が世の中により広く受け入れられるためには、スケーラビリティ、セキュリティ、プライバシーなど、多岐にわたる問題に対処する必要があり、世界中の優秀なプレイヤーが問題の解決に向けて尽力している。

 その一つの例として、プライバシーの分野では、実際の値を秘匿化したままで、その値の有効性・計算結果の有効性を証明・検証できる「ゼロ知識証明」という暗号技術の実装が進められている。LayerXでは、こうしたブロックチェーン上で取り扱われるデータのプライバシー・セキュリティについても研究を進めており、関連技術の進歩に期待したい。

実用化されるブロックチェーンにどのように向き合うべきか

 ブロックチェーンは一企業の情報システムの構築には向いておらず、複数の企業をまたいで利用されるシステムや、業界全体のインフラとなるようなシステムに適しているとされる。たとえば、サプライチェーンの中で部材や製品の流れをトラッキングするシステムなどが該当すると考えられる。

 企業間をまたいで利用されるシステムや、業界のインフラとなるようなシステムは、誰がコストを負担するのか、競合に手の内を知られるのではないかといった点が問題となり、なかなか実用化には至らなかった。

 特に国内においては、ブロックチェーンを活用してそのようなアプリケーションやサービスを提供する企業はほとんど登場していない。

 ただし、ブロックチェーンの実用化に成功したサービスが国内にまったく存在しない訳ではない。スタンデージは、2019年12月に、ブロックチェーンを使った貿易決済のプラットフォーム「Shake Hands Contract」の提供を開始した。

 Shake Hands Contractは、価値の変動が少ない仮想通貨であるUSDコインを用いた貿易エスクロー(貿易代金の安産な決済を担うこと)サービスである。

 買い手から購入代金が預かり口座に支払われ、売り手が商品を輸出する、または商品が納品された、といった予め両者で決めたタイミングで、口座から売り手に代金が支払われる仕組みを提供している。

 同社の足立 彰紀代表取締役によれば、ブロックチェーンありきで事業を開始したのではなく、総合商社出身の創業者が自ら貿易業務を行い、その最適化・効率化を図る中で、ブロックチェーンの活用に至ったという。その結果、おそらく国内初のブロックチェーン実用化サービスを正式にリリースすることになった。

 スタンデージの例が示すように、ブロックチェーンの実用化には、まずは業務における問題を明確にし、その解決にブロックチェーンが有効であるならば適用するという姿勢で臨むべきなのだろう。

 企業が単独で取り組むのが難しければ、BUIDLのような企業の支援を受けるのも良い。また、新規事業を立ち上げるのであれば、LayerXといったスタートアップと協業する方が効果的かもしれない。

 一方、Shake Hands Contractのようなサービスが今後も登場してくるのであれば、必ずしも自社で新しい仕組みを構築する必要はなく、スタートアップなどによるインフラサービスの利用も検討すべきだろう。

 なぜなら、目的はブロックチェーンの活用ではなく、業務における問題の解決だからである。

 ブロックチェーンの実用化が現実となったことで、今後はカンブリア爆発のように、多様なブロックチェーン関連サービスが登場してくると期待される。

 企業はそれら新サービスの動向を把握しつつ、業務の問題解決の観点から冷静に評価していく必要がある。

ブロックチェーンシステムがレガシー化する時代に向けて

 最後に老婆心ながら、実用化されたブロックチェーンシステムがレガシー化する時代まで解決しておくべき課題について2点ほど言及したい。

 第1に、暗号技術の陳腐化である。量子コンピューターの進歩により、将来は既存の暗号技術が陳腐化すると予想される。もちろん、それまでに新しい暗号技術が開発されていると思われるが、新しい暗号技術を既存のブロックチェーンの暗号技術と置き換えられるかというと、現時点では可能であるとは言い切れない。

 何か起きるとしても将来のことだからと言って放置しておけば、2000年問題のように後になってから大きな問題となる可能性は否定できない。ブロックチェーンをベースに構築したシステムがレガシー化した場合のメンテンナンスについても、予め検討しておく必要があるだろう。

 第2に、ブロックチェーンシステムを再構築した場合のデータ移行である。企業の情報システムにおいて、構成する技術が陳腐化した場合、新しい技術を取り入れてシステムが再構築されてきた。ブロックチェーンにおいても、既存のものが使えなくなるのであれば、新しいブロックチェーン技術を使いシステムを再構築する方法が考えられる。

 ただし、システム自体は再構築できても、既存データを移行する方法は確立されていない。ブロックチェーンのデータ移行については研究論文が発表された段階であり、具体的なノウハウについては今後の課題である。データ移行はシステムの再構築では避けて通れない問題であるため、ノウハウの確立は必須である。

 いずれも大きな課題ではあるが、これまでにも多くのエンジニアの奮闘によりさまざまな課題が解決されブロックチェーンが実用化に至ったように、これらの課題もいずれは過去のものとなるに違いない。

 ブロックチェーンの未来を信じるエンジニアたちの活躍に期待したい。
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