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  • 2020/01/15

日本IBM 加藤洋 専務に聞く、金融機関が既存資産を生かしつつデジタル競争に勝つ方法 (2/2)

FinTech Journal創刊記念インタビュー

既存システムを生かしながら攻めに転じる

 一方で、現在の金融システムを迅速にDXに対応させるためには課題があります。

 たとえば一部のシステムはCOBOLやPL/Iと言ったプログラミング言語で構築されており、数十年以上経っているケースがあります。高い堅牢性を保持していますが、システムや技術面での硬直性が課題となっています。

 また、従来のシステムにポイントサービスやインターネットバンキングのステータス機能などが密結合で追加されており、複雑化している場合もあります。

 デジタル時代のサービス開発・提供にはスピードが求められ、またリリース後も新たなテクノロジーや顧客の要望に合わせて繰り返し変更を行い、進化させていく必要があります。

 これらの課題に対応する金融DX実現の施策として、IBMは「次世代金融サービス・アーキテクチャー」を提唱しています。堅牢性と可用性が求められる既存のビジネスサービス(基幹システム)を刷新することなく、柔軟性や俊敏性が求められる新たなフロントシステムをつなぐデジタルサービス・プラットフォームを構築し、効率的に金融DXを実現します。

 このプラットフォームは、アプリ開発を高速化、効率化するために必要な機能が部品化(マイクロサービス化)され、アジャイル手法による段階的な変革を実現します。

 また、デジタルサービスを起点に集約されたデータとAIを組み合わせ、新たな顧客ニーズやビジネス機会を創出し、そこから新しいアプリケーションを生み出していきます。このデータ活用とアプリケーション実装をサイクルとして繰り返すことで、サービスの改善を図っていくのです。

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次世代金融サービス・アーキテクチャー

 AI活用に関しては、さまざまなAI(『マルチAI』)を一つのプラットフォーム上で活用できる環境を構築し、適材適所でAIを使い分けます。今後は、一企業が複数のAIを活用すると同時に「AIが止まったら業務も止まる」時代です。そのためマルチAIを管理するプラットフォームが必須になるのです。

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フィンテック企業と協業し「顧客体験」競争に勝つ

 こうしたステップを経た取り組みはフィンテック企業との協業でも生きてくることになります。

 フィンテックが台頭し始めた当時、既存の金融機関にとってフィンテック企業は敵か味方か――脅威になり得る存在なのか否か――模索している状況でした。それが今は新規サービスの創出など、両者が相互補完する関係を築いています。

 しかし、フィンテック企業はスピード感を持って新サービスのリリースに努める一方、既存の金融機関からすれば、セキュリティの確保やコンプライアンス、既存サービスとの相反が懸念されるなど、検討すべきポイントは少なくありません。

 そのため、両者の要件をつなぐ存在が必要です。日本IBMではフィンテックに関する合弁会社である T&Iイノベーションセンターを地銀6行と立ち上げ、銀行が安心してフィンテック企業との交渉やAPIの接続確認などが行えるような環境を整えてきました。

 では、スタートアップ企業で、かつ銀行ライセンスを持つモバイル専業銀行である「チャレンジャーバンク」との競争では、金融機関はどのような対策を講じるべきなのでしょうか。

 チャレンジャーバンクの生命線は「顧客体験」です。モバイル端末ですべての銀行業務を完結するため、優れた「UI(User Interface)」、「UX(User eXperience)」の開発に注力しています。

 金融機関からしてみれば、チャレンジャーバンクのスピードに対抗するのは難しい場合があります。新規サービスを開始するためには既存システムの改修が必須であり、それには時間を要するからです。

 そこでポイントとなるのは、前述したデジタルサービス・プラットフォームの活用によるフィンテック企業との連携、そして「自行(自社)ならではの顧客体験の提供」です。

 たとえば、あいおいニッセイ同和損害保険さまは、「テレマティクス技術を活用した損害サービスシステム」を開発されました。この中で自動車メーカーやデバイスメーカー、あるいは外部APIサービスと連携したり、事故検知アルゴリズムなどを組み合わせることで、電話や書類のやりとりを中心とした従来の事故対応から、走行データや運転挙動・位置情報を中心としたデジタルデータの活用による革新的な事故対応を実現しています。

 これにより、事故にあったお客さまの保険請求手続きの負担を大幅に軽減しています。

 このようなサービスは、平準化が指摘されている金融機関のサービスとは一線を画す事例です。このように、自社独自のデータと外部データ、これまでの業界知見、そして最新技術を融合することで、自分たちの武器として独自のサービスを打ち出していくことも可能になるのです。

豊富な人材を抱えるIBMの強さ

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 現在、日本IBMには、デザイン学校や美大を卒業したデザイナーたちが在籍しています。彼らのミッションは、「使いやすいUI/UX」をデザインし、設計することです。IBMにそのようなイメージを持つ方は多くないと思いますが、今やUI/UXはデジタル時代のビジネスを考える上で避けては通れません。

 システム開発に関しては、グローバルでの豊富な実績と経験があります。グローバル・ネットワークを活用することで、翌日にはモックアップが完成する、といった短期開発を行うことも可能です。

 また、IBMの幅広い専門知識を結集し、イノベーションの実験・実証・実践を繰り返し行うことで、「デジタル・イノベーションの推進」や「新規事業の立ち上げ」などの企業変革を支援する共創サービス「IBM Garage」も提供しています。

 金融機関のDX推進のために、人材面のサポートやコストの最適化、AIなどの技術を活用した新たな顧客体験を実現するソリューションをそろえ、お客さまと新しいビジネスを一緒に切り拓いていきたいと考えています。
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