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  • 2020/01/30 掲載

あなたの給料はどうやって決まるのか? 「生涯所得を最大化」させる方法

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欧米諸国の学校では、早期から子どもへの金融教育が導入されているので、10歳の子どもが株を持つことも珍しくない。一方、日本の学校はいまだに「お金なんて教育にふさわしくない」という古い考えにしばられ、成人したビジネスパーソンでさえも、十分なマネーリテラシーを身に付けていると言いいがたい。そこで、米国で最初の大学投資クラブの一つ、ペンシルバニア投資連合の設立に携わったMBA・法務博士のアンドリュー・O・スミス氏に、米国で行われているキャリアとマネーに対する教育について、わかりやすくひも解いてもらった。
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日本では義務教育で身につかないマネーリテラシー、米国ではどう教育しているのか?
(Photo/Getty Images)
※本記事は『アメリカの高校生が学んでいるお金の教科書』を再構成したものです。


あなたのキャリアとお金の関係

 キャリアとは、それまで積み重ねてきた仕事のスキルや経験のことだ。たいていの人は、同じ仕事を続けたり、同じ業界の中でさまざまな職種を経験したりしてキャリアを築いていく。ずっと同じ会社でキャリアを築く人もいるだろう。

 たとえばあなたが冷蔵技師なら、キャリアを通じて複数の家電メーカーに勤めることになるかもしれない。あるいは公務員になって地元の自治体に就職し、会計係、プログラムマネジャー、プロジェクトスーパーバイザーを歴任するというケースもあるだろう。いずれのケースもずっと同じ業界で働いているので、業界をベースにしたキャリアを構築できる。自分のキャリアが最終的にどうなるのか予測するのは難しいが、だいたいの方向性を決めて、それに沿った正しい決断を下すことが大切だ。

 アメリカにおけるベビーブーム世代(1957~1964年生まれ)のいちばん若い層は、50代の半ばにさしかかっている。そんなキャリアの終盤が近づいた彼らは、平均して12の違う仕事を経験している(注1)。今の若い人は、上の世代に比べてさらに転職が盛んになると考えられているが、今のところミレニアル世代(1980年代~2000年代初頭生まれ)は上の世代よりも転職がわずかに少ないようだ(注2)。

 現代のアメリカでは、ひとつの仕事を続ける長さは平均して4年半になり、キャリア初期のほうが転職回数は多くなる傾向がある(注3)。未来のキャリアは、おそらくもっと転職が多くなるだろう。今の若い人たちは、仕事や環境の大きな変化を何度も経験することになる。しかし残念ながら、将来必ずやってくる「変化」に対して、万全の備えをしている人はほとんどいない。転職が当たり前になる世の中では、変化を見据えたキャリアプランが重要になる。

人的資本──「資産価値の高い人」とは

 仕事を続けていくうちに、知識、経験、人脈、スキルといった、その仕事に必要なものが手に入っていく。その結果、あなたの生産性が高まり、雇用主にとってより価値のある存在になる。こうやって築いたスキルや能力が、あなたの「人的資本」だ。

 職業をベースにしたキャリアを歩んでいる人は、人的資本がしっかりしていれば、勤め先が変わっても立派に通用するので、キャリアアップのための転職を望むことができる。また、業界をベースにしたキャリアであっても、人的資本がしっかりしていれば、同じ業界内でステップアップしていくことができる。ただし、違う業界に転職した場合、前の業界で身につけたことが役に立たなくなるかもしれない。

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同じ業界であれば、転職しても今まで築いた人的資本は通用しやすい
(Photo/Getty Images)

 おすすめできないキャリアの選択は、「職業と業界の両方を変える転職」だ。たとえば、小売店の店員から、メーカーの購買部、教育機関のテクニカルサポートというような転職がそれにあたる。こういうキャリアの道を歩む人は、収入がなかなか増えずに苦労することになるだろう。それぞれの仕事で身につけた知識、経験、人脈、スキル、すなわち人的資本が、次の仕事でほとんど生かされないからだ。

 しっかりした人的資本を手に入れたいなら、最初の投資は教育とトレーニングということになる。平均的な高校卒業生であれば、卒業の時点でかなりの仕事のスキルを身につけている。まず読み書きができ、計算ができる。集団行動もできるし、さまざまなタイプの人と協力して働くことができる。

 悪くないスタートだが、社会で有能な人材になるには、さらに追加の教育やトレーニングが必要だ。一般的に、トレーニングとは、ある特定の職業に必要なスキルを学ぶことだ。たとえば、裁判所速記官、美容師、機械整備士になりたいのであれば、専門のトレーニングを受けなければならない。

 それに対して教育とは、さまざまな職業に応用できるような、一般的な知識を身につけることだ。たとえば大学でリベラルアーツを学んだ人は、分析的思考やコミュニケーションスキルを身につけたとみなされる。また、会計の知識があれば多くの職場で役に立つだろうし、外国語ができれば、外国と取引のある仕事で役立てることができる。

 大学に行くことには長い目で見れば大きな見返りがある。しかし、すべての人が大学教育を必要としているわけではない。ここでいちばん大切なのは、自分のキャリアの道を選び、そのために必要な知識やスキルを、教育やトレーニングで身につけるということだ。

 高校を出たら専門学校へ行って、特定の職業に必要なスキルを身につけようとする人もいるかもしれない。あるいは、すでにその仕事をしている人に弟子入りするという道を選ぶ人もいるだろう。この場合、最初の収入はごくわずかだが、修行を積んで一人前になり、もっと稼げるようになることを目指す。

 キャリアに関する教育やトレーニングは、就職したらそこで終わりではなく、働くかぎりはずっと続けていかなければならない。学ぶのをやめなかった人は、たいていキャリアで成功して稼げるようになっている。

 どんな仕事であっても、学ぶチャンスはほぼ確実にある。自動車整備工でも、医師でも、最新の知識や技術を学ぶことを忘れてはいけない。17歳か18歳で、50年先の将来のことまで考えている人はあまりいないだろう。とはいえ、高校を卒業したころから考えておきたいことが2つある。

 ひとつは、複数の職業で応用できる実用的なスキルを磨いておくこと。たとえば、マーケティング、ウェブサイトを作る、基本的な簿記といったスキルだ。こういったスキルがあれば仕事が見つかりやすくなり、キャリア初期の転職でも有利に働くだろう。

 そしてもうひとつは、興味のある業界の中から関連する仕事をひとつかふたつ選び、それに集中するということ。たとえ目指すキャリアがまだ決まっていなくても、ある業界に関する知識や経験があると、将来的に貴重なスキルを身につけることができる。

【次ページ】生涯所得を最大化させるために大切なこと
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