• トップページ
  • 香港の全バーチャルバンクを「一枚」で紹介、なぜ“設立ラッシュ”が起きているのか

  • 会員限定
  • 2020/02/28 掲載

香港の全バーチャルバンクを「一枚」で紹介、なぜ“設立ラッシュ”が起きているのか

FINOLAB コラム:

記事をお気に入りリストに登録することができます。
1月14~15日、香港で開催されたAsian Financial Forum(AFF)2020 に参加した。AFFは、香港の中国返還後、国際金融都市としての存在感を示すために、特別行政区政府が貿易発展局(HKTD)を中心に主催している大規模な金融イベントである。2019年に認可されたバーチャルバンクの当事者も多く登壇するなど、フィンテック関係者も注目する最新情報をレポートする。

執筆:FINOLAB Head of FINOLAB 柴田 誠

執筆:FINOLAB Head of FINOLAB 柴田 誠

FINOLAB設立とともに所長に就任。東大経済学部卒、東京銀行入行、池袋支店、オックスフォード大学留学(開発経済学修士取得)、経理部、名古屋支店、企画部を経て1998年より一貫して金融IT関連調査に従事。2018年三菱UFJ銀行からMUFGのイノベーション推進を担うJDDに移り、オックスフォード大学の客員研究員として渡英。日本のフィンテックコミュニティ育成に黎明期より関与、FINOVATORS創設にも参加。

photo
筆者が香港の金融イベントに参加してわかった、「バーチャルバンク事情」とは
(Photo/Getty Images)

「フィンテックの集積地」を打ち出したAFF 2020

 今回が13回目の開催となるAFFだが、2019年から大規模なデモが続いている中、金融都市としての機能が揺るぎないものである点をアピールすべく、香港の威信をかけた開催となった感がある。冒頭の開会挨拶に行政トップのキャリー・ラム長官が登場して、香港金融業界が「Business as Usual」であることを強調したことからも、それがうかがえた。

 筆者が2017年に参加した際は、中国本土から大代表団が参加し、「一帯一路」が大々的に取り上げられ、香港が中国と西側諸国の接点としての役割を果たしていくことが強調されたが、今回はデモが頻発する香港内の反感に配慮したせいか、あまり目立たない扱いとなっていた。

 かわりに大きな扱いとなったのが、「フィンテックの集積地」としての香港をアピールすることであり、先行するシンガポールが国策としてフィンテックを推進するのに対抗していこうとする姿勢が見られた。

 2017年に筆者はデジタルイノベーションのパネルディスカッションに登壇したが、そのときはフィンテックに関係のあるセッションはそれだけであった。

 今回は対照的にフィンテックやデジタルトランスフォーメーション関連のセッションが多く設定されただけでなく、展示スペースの主役も、以前の大手金融機関やIT企業から、世界中から集まった100社近いフィンテックスタートアップのブースとなっていた。FINOLABからもカウリスマネーソー、卒業生である財産ネットがブースを出展した。

中国の「テックフィン」の存在感

 今回のAFPでは、中国本土のアリババ、テンセント、バイドゥといったIT大手(テクノロジー発ということで、「テックフィン」と形容されることも多い)の金融ビジネス拡大を香港が資金調達やアジア進出の面でサポートする「中国本土の玄関口」としての役割も強調された。

 特にスタートアップが急増している深圳との人的、経済的な結びつきが強まっていることもあり、香港やマカオ、広東省を示す「珠江デルタ」の9都市(広州、深圳、東莞、恵州、仏山、江門、中山、珠海、肇慶)を統合する「Greater Bay Area」といった表現も度々使われていた。

 こうしたフィンテック推進の象徴が、店舗を持たない「バーチャルバンク(VB)」ライセンスの導入であり、今回のAFFにおいて複数のセッションで取り上げられた。

 香港金融管理局(Hong Kong Monetary Authority:HKMA)によってバーチャルバンク設立を実質的に可能とするガイドラインが2000年に発表されたが、実績のある金融機関のマジョリティ出資であることが必須であったため認定実績はなかった。

 フィンテック推進の一環として、テクノロジー企業や通信事業者でも参入が可能となる修正ガイドラインが2018年に発表され、2019年になってから次々とライセンス認可が発表され、8行が新規設立されることになった。

 デモの混乱もあって事業開始が遅れ、AFF開催段階ではZA Bankの試行サービス開始にとどまっていたが、香港金融管理局、新銀行経営陣や参入企業担当者の登壇による認可や参入の背景や今後の見通しを論じるセッションもあったことから、全体像をまとめておきたい。

画像
「香港で2019年に認可されたバーチャルバンク一覧」から見えてくることとは(一覧)

【次ページ】バーチャルバンクの参加企業から見える中国本土との強い関係

あなたの投稿

関連コンテンツ

東京都

2024年に向けて、サイバーセキュリティ最新情報や多様化する脅威への対処法&防止策

サイバーセキュリティ業界最大級のイベントRSAカンファレンスでも話題となった最前線をご紹介 攻撃に関連する被害のレベルが、かつてないほど高くなっている今、 専門家から最新の攻撃手法やトレンドに関する情報をお届けします。 サイバーセキュリティの専門家、ITリーダー、経営者、そしてデジタルアセットとプライバシーを守りたい全ての方々に知っておくべき! RSAカンファレンスでも話題となったサイバー対策や、政府、教育機関、弁護士からの講演を通して、進化するサイバー脅威から組織や自分自身を保護する力やより強固なサーバーセキュリティ体制の構築の知識を深めましょう! 最新のサイバー脅威動向の解明 サイバーセキュリティインシデントへの対応 サイバーハイジーンの強化 協力と知識共有 未来への強靭性の構築 本セミナーでは、複合環境における高度な脅威対策のためのネットワーク検出と可視性の重要性、そして技術の進化に伴う政策の変化と法的コンプライアンスの最適な戦略についてお話しいたします。 また、今後多発することが見込まれる ChatGPT 技術を悪用した攻撃、コロナ蔓延やウクライナ戦争を契機にしたサイバー攻撃の状況の変化、 VR/AR/MRにおける新たなセキュリティとプライバシーの脅威を踏まえといった最新の攻撃手法を掘り下げ、金融、電力業界から幅広い業界でのサイバーセキュリティの課題に取り組む皆様に向けて、一年に一度のセキュリティイベント、専門家と共にセキュリティの高度化を探求しましょう!

東京都

Ivanti NEXT 2023

コロナ禍によってリモートワークやハイブリッドワーク環境への対応の波とデジタル化の更なる加速によって、Everywhere Work(場所にとらわれない働き方)が拡大し、より柔軟性のある働き方が定着しました。それと同時に、従業員が利用するPCやモバイルデバイス、周辺機器デバイス、アプリの数が増えたことで、企業はより複雑化したIT環境に直面しながら、一層のセキュリティ強化が求められるようになっています。また、経済産業省が2018年に発表した「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開~」により提唱された『2025年の崖』問題も迫っており、企業はDX(デジタルトランスフォーメーション)へ推進を加速しています。 そのような変化に対応・直面する中、 IT担当者が担うミッションはIT(ハードウェア、ソフトウェア)資産管理、サイバーセキュリティ(脆弱性、デバイス、ネットワーク)の強化、社員からのITサポートの対応、既存システムの保守、新システムの導入、OSの移行など多岐にわたり複雑化しているだけでなく、ITの人材不足や熟練者の退職によるナレッジのブラックボックス化が発生し、情報システム部門がすべての対応を行うことが難しい時代を迎えております。また、最近では従業員の定着率にも影響する「従業員のデジタル体験(Digital Employee Experience)」という重要性が高まっており、企業には、これまで以上にデジタル化で社員に負担をかけないよう、仕事環境の早急な改善が求められています。 本イベントでは、企業の「次」の戦略的なITの取り組みへリソースを使えるよう支援を目指すIvanti製品やソリューション、国内の事例をご紹介します。

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

おすすめユーザー

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます