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  • 2020/04/07 掲載

なぜ「IoT×フィンテック」で金融機関の役割が“激変”するのか

IoTスペシャリスト鼎談(前編)

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フィンテックをはじめとする「変革」の要諦を握るのが「データ」だ。金融における「データ」といえば、いわゆる財務データがイメージされるが、IoTによって企業活動そのものがデータ化され、新しい価値が生まれる。金融機関のデータ活用の現状や「IoT×フィンテック」の可能性について、“ミスターIoT”こと八子 知礼氏、i Smart Technologies 代表取締役 兼 旭鉄工 代表取締役社長の木村 哲也氏、クレジット・プライシング・コーポレーションの松浦 元取締役の3人に聞いた。

聞き手:編集部 山田竜司、執筆:阿部 欽一

聞き手:編集部 山田竜司、執筆:阿部 欽一

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なぜIoTデータの有効活用がフィンテックを加速させるのか

金融と相性がいいIoTが金融を変える

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クレジット・プライシング・コーポレーション
取締役
松浦 元氏
 まずは、3人のプロフィールを簡単に紹介しよう。松浦 元氏は、1991年に新卒で日本長期信用銀行に入行。1998年の同行の経営破綻を経て、2001年、クレジット・プライシング・コーポレーションを設立、取締役に就任した。

 同社の主要なビジネスは、「財務データを中心とした金融データを使い、倒産や債務不履行を予測するモデルを作り、金融機関に提供すること」だ。この背景には、「1980年~1990年代のあまりにも俗人的で、担保に依存した銀行の意思決定を変えたい」という思いがあったと松浦氏は語る。そして現在、デジタルによる金融の変革期が到来し、さらなるデータ活用の方向を模索しているところだ。

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i Smart Technologies
代表取締役 兼 旭鉄工代表取締役社長
木村 哲也氏
 木村 哲也氏は、1992年にトヨタ自動車に入社した。生産調査部で3年間、トヨタ生産方式を徹底的に学び、その後、トヨタの1次仕入れ先である部品メーカーの旭鉄工に入社し、2016年に同社代表取締役に就任した。

 木村氏の入社当時、旭鉄工では、トヨタと同じような「カイゼン」が思うように進まなかった。「リソースが豊富ではなく、また、改善に必要なデータがないという問題もあった」と木村氏は振り返る。

 改善の基礎データとなる生産個数やラインの停止時間などを測定するため、木村氏は、自動で製造ラインからデータを取得する仕組みを自前で開発した。リソース不足という課題に対しては、取得・分析するデータを絞った。そして、データによる改善を積み重ねることで、経営を劇的に改善させたのである。

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生産ラインからデータをする仕組み
(出典:木村哲也氏 提供資料)

 このときのプラットフォームである「製造ライン遠隔モニタリングサービス」を他社でも活用し生産性向上を実現してもらうために設立したのが、i Smart Technologiesだ。旭鉄工の経営改善の経験を通じ、「私たちが取得している製造の基本的なデータは、実は経営と直結しているデータだ」と気づいた。

「我々が主に取っている主なデータは、生産個数、稼働時間、停止時間の3つです。製造ラインが1つしかない工場をイメージしてもらえば分かります。生産個数は売り上げに比例、稼働時間は労務費に直結し、また停止時間は改善余地を示します。つまりこれら3つをリアルタイムでモニタリングすることは『経営をリアルタイムモニタリングをすること』にほかならないのです」(木村氏)

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「生産個数、稼働時間、停止時間の3つは経営に直結」
(出典:木村哲也氏資料)

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INDUSTRIAL-X
代表
八子 知礼氏
 そうした木村氏の思いに呼応したのが「ミスターIoT」こと八子 知礼氏だ。1997年に松下電工に入社し、2001年からはコンサルタントとして通信やテクノロジーの領域で、先端テクノロジーの社会浸透を支援してきた。八子氏は、日本初の「モバイルクラウド」の提唱者としても知られる。

 シスコシステムズを経て、2016年4月からウフル 上級執行役員/IoTイノベーションセンター所長兼エグゼクティブコンサルタントとして活動する同氏のもとには「損保会社などから、製造業の現場の稼働状況を見たい」という相談が寄せられるという。

 製造設備の稼働データを元に現場の状況をリアルタイムに把握することができれば、「事故や故障を予測し、未然に防げるのではないか。そして、それを保険商品に反映したい」という相談だ。

 IoTで収集したデータを提供することで新たな価値を提供できると考えた八子氏は、2019年、ウフルに所属しながら「INDUSTRIAL-X(インダストリアル・エックス)」という新会社を立ち上げた。「データによって、予測する、未然に防ぐIoTのモデルは金融と相性がよい」ということで、現在、松浦氏や木村氏と連携してさまざまな取り組みを進めているところだ。

IoTのセンシングデータに無関心な金融機関

 金融機関のデータ活用の現状について、松浦氏は2つの流れがあると指摘する。

 1つ目は「データ」の流れだ。金融機関は、2000年代半ばに国際的な金融機関のリスク管理の枠組み(バーゼル規制)によって融資先の格付けが必要になった。これにより、実務の審査で統計モデルを使う取り組みが広がった。具体的には、財務データや預金の取引データ、外部の信用調査機関のデータなどが活用されている。

 その後、freeeやマネーフォワードなどの会計、財務ソフト(サービス)を提供するフィンテック企業が登場し、複数の金融機関のデータをAPI連携で収集することが可能になった。

 こうした動きに対し、松浦氏は「複数の金融機関の口座情報を統合してモニタリングできる仕組みは、自行単独でも一定の情報優位性が確保でき、その下で与信判断をするこれまでの金融機関のビジネスモデルを根本から揺るがしている」と述べる。

 もう1つの流れは、木村氏が手がけるIoTプラットフォームによって「製造をはじめとする企業活動そのものが、センサーを通じてデータとして観測可能になった」ことだ。IoTによって、財務諸表として形成される前の「生のデータ」が観測可能になったのだ。これに対し、現状のフィンテックの取り組みは、依然として決済と口座データの連携にとどまっている。

 そこで松浦氏は、銀行の最大の融資先である企業の活動を可視化するまったく新しいアプローチを考えているという。ただし、その取り組みは、まだ緒に就いたばかりだ。

【次ページ】IoTが可能にする融資先企業のリアルタイムな経営状況の把握

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