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  • 2020/03/18 掲載

【現地取材】欧州で“受賞”したフィンテックスタートアップまとめ、その傾向とは

FINOLAB コラム:

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フィンテック関連のスタートアップピッチイベントとしては老舗であるFINOVATEの欧州開催分に2月11日から13日に参加した筆者。欧州ではずっとロンドンが会場となってきたが、今年は、英国のEU離脱(Brexit)を意識したせいか、初めてベルリンで開催されたという。筆者が現地を取材してわかった最新の有力フィンテックスタートアップの傾向とは。

執筆:FINOLAB Head of FINOLAB 柴田 誠

執筆:FINOLAB Head of FINOLAB 柴田 誠

FINOLAB設立とともに所長に就任。東大経済学部卒、東京銀行入行、池袋支店、オックスフォード大学留学(開発経済学修士取得)、経理部、名古屋支店、企画部を経て1998年より一貫して金融IT関連調査に従事。2018年三菱UFJ銀行からMUFGのイノベーション推進を担うJDDに移り、オックスフォード大学の客員研究員として渡英。日本のフィンテックコミュニティ育成に黎明期より関与、FINOVATORS創設にも参加。

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決済関連パネルで発言する筆者
(写真:川崎貴彦氏)

フィンテックスタートアップの登竜門

 FINOVATEは、フィンテックイベントという言葉で形容される以前の2007年から米国で開催されており、多くのユニコーンを輩出している。欧州では2011年、アジアでは2012年、ドバイや南アフリカでは2018年からというように、世界各地に開催場所を拡大中だ。

 近年ではフィンテック関連イベントが増加しており、「Money 20/20」などの大型イベントなどが盛り上がってもいるが、FINOVATEはスタートアップの登竜門としての地位を確立している。ピッチ参加を希望するベンチャー企業は増加する一方という。

 今回の欧州開催においては、初日を講演やパネルによる最新トレンドの解説に、2~3日目をピッチコンテストに充てるという構成となっていた。

 日本からは、Financial Grade APIを世界で初めて取得したオースリート(Authlete)がピッチ登壇したほか、筆者も世界の決済トレンドと将来像に関するパネルに登壇した。こうした海外イベントにおいて日本が存在感を示す機会は少なく、金融市場の規模やフィンテックエコシステムの拡大を考えると、もう少し情報発信する余地があるものと思われる。

 本稿では、講演やパネルから特に目についたトレンドにふれるとともに、参加者の投票で選ばれた「Best of Show」を紹介するものとしたい。

台頭するプラットフォーム

 ベンチャー企業と大手企業の協業を長年サポートしてきたマッチメーカーベンチャーズ(Match-Maker Ventures) CEO ニコライ シャッテン(Nicolai Schattgen)氏は、GAFA(グーグル, アップル, フェイスブック, アマゾン)やBAT(バイドゥ, アリババ, テンセント)といった巨大プラットフォームが市場シェアを拡大、決済を中心とした金融領域にも進出していると指摘。

 今や既存金融機関にとってはフィンテックベンチャーよりも大きな脅威となりつつあるとした。

 アマゾン CEO ジェフ・ベゾスの「他人のマージンはビジネスチャンスの源泉」という言葉を引用し、従来法規制に守られてきた金融業が今やターゲットとなりつつある点を強調している。

 また、金融分野で起業するスタートアップの大多数が「プラットフォームとなることを目指す」という目標を掲げていると説明。商品やサービスをより多くの顧客に提供することだけではなく、顧客データの集積による新たなビジネスチャンスを起業当初から意識していることにも触れている。

 こうした変化を考えると、既存金融機関が単独で巨大プラットフォームに対抗するのは難しくなってきており、適切なパートナーシップを活用するとともに、オープンイノベーションに活路を見出すことが必要と結論づけている。

デジタル中心の時代に見直される顧客利便性

 “Customers The Day After Tomorrow”の著者として知られるスティーブン・バン・ベレゲム(Steven Van Belleghem )氏は基調講演のなかで、デジタルチャネルが顧客接点の中心となっている状況において、「利便性」が顧客の意思決定においてもっとも重要となりつつあると指摘している。

 あらゆるサービスがネットワーク上で利用できるようになってくると、顧客にとっては時間を無駄にしたくないという思いが強まっていく。このため、「操作がわかりやすい」というだけではなく、個々人のニーズにあわせたサービスをタイミングよく提供してくれる事業者が選ばれるようになる点が強調された。

 金融領域においても、顧客からの期待を上回るコンテンツ、提供サービス、操作性、サポートを総合的に設計、実践、継続的に改善できるプレーヤーが競争に勝ち残るものと考えられる。

高まるチャレンジャーバンクの存在感

 フィンテック関連メディアで執筆しているシャロン キマジ(Sharon Kimathi)氏は、欧州では多くのチャレンジャーバンクが生まれている現状が、既存金融機関へどのような脅威になるかについてその本質を指摘した。

 “脅威の本質”とは、既存金融機関が英国のモンゾ(Monzo)やリボルト(Revolut)、ドイツのN26、ソラリスバンク(solarisBank)などのチャレンジャーバンクから単に顧客を奪われることだけではなく、API接続によるサービス開発やエコシステム形成において出遅れ、顧客の体験価値が劣後していくことにあるという。

 特に、レガシーシステムとの接続にともなうスピードの欠如は、既存大手金融機関に技術基盤刷新の必要性を迫るとともに、すべてのインフラを自前で抱える方式の限界を感じさせるようになっている。

 そのため、API接続の基盤を整備してオープンイノベーションを推進するとともに、新しいサービスやビジネスモデルを展開するフィンテックスタートアップとの連携を進めることが必要という認識が拡がっているとのことであった。

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