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  • 2020/03/27

コロナショック、日銀・政府の対応をエコノミストが解説、五輪・パラ延期の影響は?

新型コロナウイルスがもたらす経済的な影響を緩和するための施策が一通り見えてきた。日本銀行の施策は流動性供給、決算期を控えた対応としては及第点と評価できる一方、政府の対応は稚拙さが目立つ。また、オリンピック・パラリンピックの1年延期により、さらに事態は混沌となった。エコノミストの筆者が、日本銀行・政府それぞれの政策をどう見ているか述べるとともに、オリンピック延期で今後露呈するであろう問題点を指摘する。

たくみ総合研究所 代表 鈴木卓実

たくみ総合研究所 代表 鈴木卓実

2003年、慶應義塾大学総合政策学部卒業。日本銀行にて、産業調査、金融機関モニタリング、統計作成等に従事。2018年、たくみ総合研究所を設立。エコノミスト、睡眠健康指導士として、経済や健康に関する個人指導やセミナー等を通じて情報を発信。ITmediaビジネスオンライン「ガンダム経済学」、楽天証券トウシル「数字でわかる。経済ことはじめ」、東洋経済オンライン「あの統計の裏側」を連載。TBSテレビ「ジョブチューン」、ビデオニュース・ドットコム「マル激トーク・オン・ディマンド」などに出演。既存組織に属さないフットワークを活かし、各種媒体の取材協力を行う。

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3月16日の会見で、日銀の黒田総裁は「影響は今後も当面続くと予想」と語った
(Photo/Getty Images)


日本銀行が前倒しした金融政策決定会合の意味

 3月16日(月)に急きょ、前倒しで招集された金融政策決定会合は、カナダ銀行、イングランド銀行、欧州中央銀行、米国連邦準備制度、スイス国民銀行との間で結んだ、米ドル・スワップ取極を通じた流動性供給を拡充するための協調行動を受けてのものだった。

 コロナショックにより、米ドル需要が急増したため、主要中央銀行が強調して対応することを確認したものであるが、日本銀行にとっては、金融政策決定会合を前倒しで開催する渡りに船となったようだ。

 当初の予定では、金融政策決定会合は、3月18日(水)、19日(木)。結果の公表、総裁記者会見が行われる頃には、日本のマーケットは取引時間を終えている可能性もあり、翌20日(金)は祝日のため、三連休。日本市場は23日(月)まで待つことになる。16日(月)に金融政策決定会合を開催したことで、期末が迫る中、時間的余裕を作ることができた。

 実は、米ドル資金供給オペの拡充は、金融政策決定会合の採決(正副総裁、審議委員の計9名による多数決)を経ずとも行うことができた施策である(その後、ドル資金供給オペはオファー日が追加されている)。

 日本銀行「新型感染症拡大の影響を踏まえた金融緩和の強化について」(2020年3月16日)で確認すると、新型コロナウイルス感染症にかかる企業金融支援特別オペの導入、CP・社債等買入れの増額、ETF・J-REITの積極的な買入れには、全員一致と記されているが、米ドル資金供給オペについては、こうした記載はない。

 採決が必要か否かに関わらず、パッケージとして打ち出すことで、資金供給を拡充するというメッセージを強化したと見ることができる。

 惜しむらくは、金融政策決定会合の結果を受けての報道がETF購入ペースを年間約6兆円から約12兆円に引き上げたことに重きが置かれていた点だ。中央銀行にとっては、満期のないリスク資産を保有することは伝統的に禁じ手であり、さらに、足元の相場では日本銀行が保有するETFに巨額の含み損が出ている状況である。批判や懸念の声が上がるのも理解できる。

 だが、筆者もETFやJ-REITの購入には反対の立場であるが、年度末を控えた時期にマーケットの動揺を抑えるにはやむを得ない措置だったと考えている。原理原則にのっとり、金融政策を正常化させるにはあまりにもタイミングが悪いし、購入額を増やさないという決定であってもネガティブサプライズになりえた。

 日本銀行「金融政策決定会合における主な意見(3月16日開催分)」(2020年3月25日)にあるように、金融機関が仲介機能を十分発揮できるよう潤沢な資金供給を行う、企業の資金繰りに万全を期す、ETF等の買入れ増額によりリスク・プレミアムの拡大を抑制し金融市場の安定を確保する、という視点では今回の決定は意味があると言えよう。

一方政府の対応は?現金給付で効果は見込めない

 問題はむしろ、政府の対応だ。経済対策の柱として、国民への給付が今月末までの成立が見込まれているが、薄く広くばらまいたところで、ほとんど効果は見込めない。平時ならともかく、そもそも、不要不急の外出をしないよう求められている状況である。

 生活困窮者にとっては1円でも必要という考え方もあるが、給付に時間がかかるため、早くとも5月末と見られている。それなら、社会保険料や公共料金の徴収を一時停止して、政府が立て替えた方がよほど迅速に生活資金の改善につながる。

 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた生活福祉資金貸付制度における緊急小口資金等の特例貸付の拡大について」(2020年3月19日)の周知や予備費を拡大して、貸付期間を長期化するという手段もある。

 政府の対応が不安なのは、早々と景気対策として飲食店や旅館業利用者への補助を打ち出すと取り沙汰されている点である。

 すでに自治体単位では、こうした動きが出ており、茨城県つくば市では利用客が減ったホテルや飲食店の支援のため、宿泊者に最大7,000円を補助(うち2,000円分は飲食券)、石和温泉がある山梨県笛吹市では市内の旅館・ホテルに泊まる人に宿泊料金を最大2万円補助すると報じられている。

 両市とも、今後の感染状況や国の方針によっては開始時期や事業内容の変更があり得るとしているが、現役世代の勤務時間という制約を考えると、価格に反応して旅行に出掛けるのはリタイアした高齢者が多くなる可能性が高い。旅館・ホテル、飲食店利用者への補助は、重篤化しやすい高齢者が感染リスクにさらされやすくなるだろう。

 経済と感染封じ込めのバランスは重要であるが、まずは資金繰りを支えることで、今は営業に走らず、感染が落ち着いてから景気対策として補助をするという手もある。

 資金繰り対策としては、国税庁が「新型コロナウイルス感染症の影響により納税が困難な方へ」として納税猶予制度(延納)を紹介しているものの、なかなか周知されていない。延納する条件を緩和する必要もあるだろう。

【次ページ】五輪・パラ1年延期で新たに生じる問題とは

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