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  • 2020/04/09 掲載

地銀の活路は証券に? “地方の雄”はどのように事業創造すべきか

東海東京FH 石田社長 インタビュー

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人口減かつ、超高齢社会の日本において、地方銀行は既存の融資事業からの転換を図らざるを得ない。さまざまな道を模索する上で、選択肢となるのが証券領域であるという。どのような証券サービスなら地方銀行は独自性や強みを発揮できるのか。地銀と提携し証券ビジネスの合弁会社を立ち上げてきた東海東京フィナンシャル・ホールディングス(東海東京FH) 代表取締役社長で最高経営責任者の石田 建昭氏のインタビューを紹介する。
※本記事はセミナーインフォ発行「The Finance」vol.20の「専門性の高い証券サービスで地銀を変える』を再構成したものです。
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苦境にある地銀の活路の1つが「証券」である理由
(Photo/Getty Images)

10年以上前から地銀に対してノウハウ提供やアドバイス

 2007年に山口フィナンシャルグループとともにワイエム証券を設立したのを皮切りに、地銀と提携し証券ビジネスの合弁会社を立ち上げてきた東海東京フィナンシャル・ホールディングス(東海東京FH)。自社グループのサービス・商品、情報、人的資本など証券ビジネスのノウハウを提携銀行に提供するほか、提携関係にない地銀ともコンタクトを持ち、事業刷新や経営改善のアドバイスを続けている。

 東海東京FHでは国内金融機関共通の課題として、デジタライゼーション、働き方改革、フィデューシャリー・デューティ、競争の激化、市場の変動、顧客ニーズの多様化、高コストの7つを挙げている。難局に対し地方銀行は貸出収益の改善やサービス・商品の高度化、レベルの高い資金運用手法の確立で課題解決を図ろうとするもそう簡単にはいかない。
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東海東京FH
代表取締役社長
最高経営責任者
石田建昭氏

 東海東京FH代表取締役社長で最高経営責任者の石田 建昭氏は、「最大の課題はレベルの高い資金運用手法の確立だ。世界的な低金利で期待リターンを超えるポートフォリオ構築が難しい中、リターンを求めようとするならリスク管理の高度化は避けられない。事業会社として勇気あるスリム化を進められないと、現状から脱しえない」と話す。

 地銀はこれまで地域経済を支えてきた「地方の雄」であり、地域からの尊敬・信頼も厚い。店舗や人員の削減はレピュテーションリスクとなり得る。

 その一方で石田氏は、「本当は地銀も環境変化に適応し、事業創造につながる打開策を打ちたい。しかし、東京に比べて人材や情報・ノウハウなどの経営資源をそろえられないのが実状で、具体的なイメージを実行できないもどかしさを抱えている」とも明かす。

顧客セグメンテーション細分化と高付加価値のサービス提供を支援

 東海東京FHは、大手証券やネット証券とも異なった「第3極」を形成する総合金融グループを目指している。そのうえで、注力しているのが既存のリテールやマーケット機能に新たな機能やサービスを加えた「グレート・プラットフォーム」の構築だ(図1)。

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図1:東海東京FHの目指す「グレート・プラットフォーム」
(出典:東海東京FHの資料より抜粋)

 同プラットフォームの下、自社のビジネスモデルを高度化し新しいマーケット開拓に活用するとともに、さまざまな機能やサービスを地銀との提携においても活用するという。特に力を入れるのが、顧客セグメンテーションの細分化と付加価値の高いサービスの提供だ。そのために専門性の高い人材の育成もサポートする。

「これまでも銀行は顧客ニーズに合う提案を実践してきたかもしれないが、今はもう専門性がなければ顧客満足につながる証券サービスの提案は難しい。ある程度金融サービスが行き届いた中、今、求められているのは資産形成層を取り込めるようなデジタルツールであり、シニア層・富裕層特有のニーズへの対応だ。従前の人員、商品だけで対処しきれていないなら、外部の知見を活用すべきだ」(石田氏)

 石田氏によれば、たとえばシニア層には財産診断に基づいた提案ニーズがあるという。銀行員には相続を意識した財産管理、保有資産の有効活用や税金対策に向けた不動産証券化商品への投資、家族全体への財産分与からその次のステージ(子や孫への提案)につなげる証券営業が求められる。

 一方、富裕層にはより高度な資産管理の提案が必要だ。資産管理会社の設立や家族に応じた資産ポートフォリオ提案、海外資産や投資商品の活用アドバイスなども喜ばれるだろう。

 東海東京FHはホームマーケットである名古屋と東京にプライベートバンキングの「Orque d'or(オルクドール)」を置き、富裕層サービス専門の関連会社も有している。今後は地銀でシニアや富裕層向け案件が出た際には専門人材を派遣したり、アドバイスしたりと地銀の高付加価値なサービス提供をサポートしていく。

 また、法人営業においてもまだ開拓の余地があると石田氏はにらんでいる。「大手証券を中心に開拓されてきた事業法人や市町村の公共体や学校、宗教、財団など各種法人のマーケットは、地銀にとってもやりようがある領域だ」と石田氏。

 しかし、財務、法務、IT、経営などの専門家と足並みをそろえ、時期に合った提案をするためには専門知識やマーケットの理解力が欠かせない。東海東京FHでは、これまでも法人、市場、リサーチ、アセットマネジメントなどの各部門が提携地銀とともに法人営業の改善を行ってきており、今後も地銀の支援に活かしていくという。

【次ページ】デジタル証券の活用で新規ビジネスの創出を狙う

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