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  • 2020/04/28 掲載

日銀の「プロジェクト・ステラ」とは? 欧州中央銀とのDLT共同調査の最新報告まとめ

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日本銀行では、「金融市場のインフラにブロックチェーンなどの分散型台帳技術(DLT)が適用できるか」について、技術面から調査する「プロジェクト・ステラ(Project Stella)」を2016年から欧州中央銀行と推進している。最新フェーズではどのような調査が実施されたのか。決済機構局でプロジェクト・ステラを担当する北條 真史 氏の講演を紹介する。

執筆:フリーランスライター吉澤亨史、構成:編集部 山田竜司

執筆:フリーランスライター吉澤亨史、構成:編集部 山田竜司

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日本銀行 決済機構局
Stellaプロジェクト
北條 真史氏
(提供: FINOLAB)
※本記事は、FINOLABが3月に開催したイベント「『4F(Future Frontier Fes by FINOLAB)』2020~REBOOT~」での講演内容「決済システム、マネーシステムの未来:日本銀行」をもとに再構成したものです。


日銀と欧州中央銀が実施する「プロジェクト・ステラ」とは?

 プロジェクト・ステラ(Project Stella)は、2016年から日本銀行と欧州中央銀行で立ち上げたプロジェクトであり、「金融市場のインフラにブロックチェーンなどの分散型台帳技術(DLT)が適用できるか」について、技術面から探っている。これまでに4つのフェーズを経ており、それぞれに報告書を公表している。

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プロジェクト・Stellaについて

 第1フェーズでは、ブロックチェーンに代表されるDLTを用いて、たとえば日銀ネット(日銀と取引先金融機関との間を間を結び資金や国債の決済をオンライン処理するシステム)の「流動性節約機能(日銀の当座預金の決済時に各金融機関が決済のため準備しておくべき資金や担保の量を節約できる機能)」が実現できるのかなどを検討してきた。

 第2フェーズではユースケースに注目し、資金と証券の授受を同時に行う「DVP(Delivery Versus Payment:資金と証券の条件付き受渡)」をDLTで効率化できるかを検討した。

 第3フェーズでは、国と国とをまたいだ資金の移動である「クロスボーダー決済」をDLTで実現できるかを検討した。

 そして2020年2月、フェーズ4として、金融市場のインフラに分散型台帳を用いた際の「プライバシーの秘匿」「秘匿した取引情報をいかに管理するか」といった課題に注目して技術的な検討をしてきたという。

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プロジェクト・Stellaのフェーズ

プロジェクト・ステラ「フェーズ4」で検討した課題を解説

 あらためて、フェーズ4の問題意識は、大きく2つの柱から成り立っている。

 1つ目は、「分散型台帳上の取引情報の秘匿」についてである。ブロックチェーンなどDLTでは、参加者同士で台帳情報を共有して管理するため、台帳に載せた情報が当事者以外の第三者にも共有されてしまう可能性がある。

 2つ目は、「責任ある第三者によってガバナンスが確保されるか(秘匿した取引情報をいかに管理するか)」についてである。DLTでは、中央を介さず参加者間でネットワークを構成するため、クライアント同士が相互に情報交換をする「P2P的な取引」ができるようになる。

 その状況でも、透明性や責任が求められる資金決済領域などの金融インフラでは、適切な第三者がきちんと取引が行われているかを確認することが必要になる。

 
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フェーズ4の問題意識

 今回この報告書では、基礎となるモデルとして、「DLTに基づいて構築した金融市場インフラ(FMI)」を示している。DLTの参加主体を金融機関と仮定し、この金融機関でデジタル資産を用いて支払う場合を想定している。

 このネットワークはパーミッションド型(あらかじめ許可された人だけがネットワークに参加可能)であり、「確認者」という、取引情報の確認を担う役割が参加している点が特徴である。

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DLTに基づくFMIモデル

 報告書では「秘匿性」や「確認」という表現がなされているが、具体的には取引情報として、「送金する人が台帳上で持っているID」「受領者のID」「送金する取引額」という3つを想定している。この3つそれぞれに対し、どのようにプライバシーが確保されるのか、あるいは確認者が確認できるのかといったことも議論している。

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DLTに基づいて構築した金融市場インフラ(FMI)モデルで扱う取引情報

 北條氏は、DLTを用いた決済インフラの形と、これまで運用されてきた中央集権型の決済インフラの形を示した。日銀ネットなどに代表される中央集権型の決済インフラでは、中央の運営者がいて、台帳を管理している。各金融機関などの人たちが流す取引情報のプライバシー管理なども、中央運営者が行っている。

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DLTと中央集権型の比較

 これに対し、今回のDLTに基づくFMIでは、それぞれの参加者が主体的に取引情報をやり取りできるようにする一方で、取引情報をどう秘匿すればいいか、あるいは取引情報をどう確認すればいいかなどが課題であるという。

【次ページ】フェーズ4における検証内容

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