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  • 2020/05/11

IBMやMS、AWSが門戸を開く量子コンピュータ、なぜ金融機関に有効なのか?

「2020年は量子コンピュータ利用元年」

現在、日本を含め全世界的に量子コンピュータが流行っており、世界中のベンチャー企業が同じ土俵で戦っている。注目すべきはここにきて、IBMやMS、AWSが一般ユーザーに対し、広く門戸を開き始めたことだという。本稿では数々のプロジェクトを手掛けてきたMDRの代表取締役である湊 雄一郎 氏が量子コンピュータの現在と課題、未来、そして金融機関での活用法について解説する。

執筆:フリーランスライター吉澤亨史、構成:編集部 山田竜司

執筆:フリーランスライター吉澤亨史、構成:編集部 山田竜司

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MDRの代表取締役である 湊 雄一郎氏
(提供: FINOLAB)
※本記事は、FINOLABが3月に開催したイベント「『4F(Future Frontier Fes by FINOLAB)』2020~REBOOT」 の中の『REBOOT~Money, Payment systems & Financial service』」の講演内容をもとに再構成したものです。


なぜ量子コンピュータが盛り上がっているのか

 湊氏は、量子コンピュータやソフトウェアを開発するベンチャー企業(MDR)を経営しており、同社は三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が開催した「第3期 MUFG Digital アクセラレータ」で準グランプリを受賞している。

 量子コンピュータ業界のビジネスモデルは非常にシンプルで、基本的にはライブラリ、オープンソース、SDKといった量子コンピュータを作るためのソフトウェアを使って、各社向けにアプリケーションを開発している。

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量子コンピュータに関わるビジネスモデル
(出典: FINOLAB CHANNEL)

 現在、日本を含め全世界的に量子コンピュータが流行っており、世界中のベンチャー企業が同じ土俵で戦っている。日本のコミュニティも大きく育っていて、ダウンロード数も参加している開発者数も非常に多い。開発者の情報交換も活発で、盛り上がっている状況であるとした。

 また、量子コンピュータの分野はアカデミズム色が非常に強く、業務をしながら論文を書くこともある。一方で、ビジネスにどう応用できるかについては、大学と企業面がタッグを組んで日々進めているとした。

2020年、さまざまな量子コンピュータが登場

 そもそも、量子コンピュータとは何か? 湊氏は、量子コンピュータとは「粒子としてのビットと波を任意に切り替えて計算する、新しい計算機」であると表現している。

 従来のコンピュータは0と1を1個ずつ順番に計算するが、量子コンピュータでは0と1を重ね合わせて三次元の「波」に変換し、その波を一か所に重ねることで複雑な計算をまとめて計算する。その波を元に戻せば計算が終わっているという仕組みだ。

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量子コンピュータの計算イメージ
(出典: FINOLAB CHANNEL)

 量子コンピュータには現在、従来のコンピュータと比較的互換性がある「量子ゲート方式」と呼ばれる「汎用型」と、一部の計算に特化してより高速で大きな問題(組合せ最適化問題)が解ける「量子アニーリング型」がある。

 2019年には、グーグルが「量子超越(現形式のコンピュータの性能の限界を、量子コンピュータが超越すること)」を達成したという大きなニュースが流れた。

 これは、世界最大のスーパーコンピュータと、1~2センチ角の小さなチップの量子コンピュータを対決させた結果、スーパーコンピュータで1万年かかる計算を、量子コンピュータは200秒で終わらせ、その性能と可能性を示したというもの。しかし、量子コンピュータは低温で運用する必要があるなど、“実験施設”のような設備が求められる上、計算も狂いやすく通常の企業が所有することは難しい(写真)。

 そこで通常、たとえば一般に向けて発売されているD-Waveの「量子アニーリング型」量子コンピュータを実務で利用する際などは、米国の北米やカナダに置いてあるマシンをインターネット経由で使う方法を採用するという。

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実験施設のような現在の量子コンピュータ
(出典: FINOLAB CHANNEL)

 これまでD-Waveに代表される「量子アニーリング型」が企業向け選択肢の中心だったが、最近では、原子を空中に浮かせてレーザーで撃つ「イオントラップ方式」、光ファイバーなどを使った「フォトニクスマシン」など、新しく多様な方式が市場に投入されている。

2020年、IBMやAWS、MSが量子コンピュータの門戸を開放

 また、2020年からは、大手IT企業が量子コンピュータを低価格で契約しやすくし、広くユーザーに門戸を開放する動きもあるという。

 たとえばIBMは53量子ビットを使えるマシン、マイクロソフト(MS)はHoneywellとIonQの「イオントラップ型」、QCIの超電導マシン(超電導回路で制御する量子ゲートマシン)の3種類の量子コンピュータ、アマゾンウェブサービス(AWS)はカナダのD-WaveとIonQ、Rigettiの3種類の量子コンピュータを提供している。

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2020年から大手IT企業各社で量子コンピュータのユーザーを増やそうとする動きがある
(出典: FINOLAB CHANNEL)

 いきなり本物の量子コンピュータを使うのはハードルが高いので、まずは手元のPCにシミュレータのツールを入れて開発する手法もある。うまくいったら本物の量子コンピュータにインターネット経由で問題を送信すればいいわけだ。

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現在の量子コンピュータの利用方法
(出典: FINOLAB CHANNEL)

 量子コンピュータは、まだ初期段階で、あまり“大規模な問題”は解けない。問題を“細切れ”にして、それぞれをシミュレータにかけ、うまくいったら同じく問題を“小さく”して量子コンピュータの実機にクラウド経由で計算を投げ込むという手順を踏む。つまり現在でも、ある意味においてはソフトウェアをダウンロードすれば“量子コンピュータ”を使って開発を始めることができるのだ。

 現在、主に使われている量子コンピュータのアプリケーションは、およそ4つに大別できるという。

 (1)データを学習させて使う「機械学習」、(2)大量の選択肢の中から最もいいものを1つ選ぶ「組合せ最適化問題」、(3)材料メーカーが新材料を開発する際に材料計算に用いる「量子化学計算」、(4)「暗号関連」である。

課題も多い量子コンピュータ

 現在の量子コンピュータの課題として、現段階ではまだ「完成しているとはいえないほど誤り(エラー)が多い点」を湊氏は挙げた。現在の量子コンピュータはアルゴリズムの作成後、デジタル化せずにアナログのまま計算を行う。その際の「誤り訂正」が実現できていないため、計算を間違えてしまう。

 理想的な量子コンピュータはデジタルで計算し誤り訂正も実装されるが、現在の量子ゲート方式ではエラーを回避できない。そのため、それぞれ計算できるものが変わってくる。このような現在のエラーが多いマシンを「NISQ:Noisy Intermediate-Scale Quantum」と呼ぶ。

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NISQのイメージ
(出典: FINOLAB CHANNEL)

 ただし現在、NISQが使えないわけではない。エラー回避のために「ハイブリッド計算(量子古典ハイブリッド計算)」を使用することが主流になっている。

 これは、量子コンピュータで短い計算を行い、従来のコンピュータで補正をかける作業を何回も繰り返すことで、エラーを直しながら計算すること。これにより、ある程度の実用的な問題を解くことができる。

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2020年はハイブリッド計算が主流
(出典: FINOLAB CHANNEL)

【次ページ】なぜ金融機関に量子コンピューターが有用なのか

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